会長声明・意見書

現在審議中の憲法改正手続法案に反対し、同法の抜本的改正を求める会長声明

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更新日:2021年06月04日

2021年(令和3年)6月4日
第二東京弁護士会会長 神田 安積
21(声)第4号

 国会が発議した憲法改正案に賛成するか反対するか、その最終的な判断は主権者である私たち国民の投票で決まります(憲法96条)。
 その国民投票のルールを定めようとするのが、日本国憲法の改正手続に関する法律(以下「憲法改正手続法」といいます。)です。
 憲法改正手続法は2007年に成立した法律ですが、当時から多数の問題点が含まれていることが指摘され、その内容は18項目にわたる参議院の附帯決議において明らかにされており、2014年の改正の際にも、参議院において20項目の附帯決議がされました。
 その中でも特に、①最低投票率の問題と②テレビ・ラジオの有料広告規制の問題の2点は重要な問題点です。①は、国民投票で「過半数の賛成」が得られたとしても、有効投票数が少ない場合には国民の多数の意思が示されたとはいえないのではないか、そこで、一定の投票率(最低投票率)に達しないと投票を不成立とすべきではないかという問題です。②は、国民投票の日の14日前からは賛成・反対を勧誘するCMは禁止されるものの、それまでの間は自由であり、また、勧誘しないCM(たとえば、著名人が「私は憲法改正に賛成(反対)です」と発言するCM)であれば、国民投票当日まで自由に流すことが可能とされていますが、資金力の多寡によって意見の影響力に格差が生じ、国民の判断がゆがめられるおそれがあり、一定の法規制をすべきではないかという問題です。これらの問題が特に重要であることは、2007年の附帯決議が当該2点に限って「本法施行までに必要な検討を加えること」として検討の期限を明記していたことからも明らかです。
 しかし、今回の改正案の内容は、2016年に公職選挙法の改正に伴い導入された投票環境向上のための7項目の規定を整備するにとどまり、上記2点に関する改正は含まれていません。衆議院において、上記②のテレビ・ラジオの有料広告規制及びインターネットを含む有料意見広告の制限について、法施行後3年を目途に必要な法制上の措置を講じる旨の附則が追加されましたが、上記の2点の問題点の解消に向けた検討がなされたとはいえません。
 むしろ、上記の2点の問題点については、国会が自ら決議したとおり、本来は施行後3年以内に必要な検討を加えるべきであったものであり、既に上記の附帯決議から約14年が経過していることを踏まえると、今後、問題点の解消がなされないまま国民投票がなされるのではないかとの懸念を抱かざるを得ません。
 憲法審査会は、近代憲法の基本となる考え方である立憲主義に基づいて、徹底的に審議を尽くすとしています。当会は、重要な問題点について審議を尽くしたとはいえない現在審議中の法案に反対し、改めて憲法改正手続法の抜本的改正を求めます。

現在審議中の憲法改正手続法案に反対し、同法の抜本的改正を求める会長声明(PDF)

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