会長声明・意見書

少年事件の実名・顔写真報道に対して抗議する会長声明

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更新日:2021年06月18日

2021年(令和3年)6月18日
第二東京弁護士会会長 神田 安積
21(声)第7号

 「週刊新潮」2021年6月17日号は、東京都立川市において同月1日に発生した死傷事件(以下「本事件」といいます。)に関し、公訴提起前の被疑者である少年の実名及び顔写真を掲載しました。
 この報道は、少年時の犯行について、氏名、年齢、職業、容ぼう等によりその者が当該事件の本人と推知することができるような記事又は写真の掲載(以下「推知報道」といいます。)を禁止した少年法61条に反します。
 本年5月21日に改正少年法が成立したことに伴い、少年法61条の推知報道の禁止は、18歳及び19歳の「特定少年」について一部解除されるに至りました。しかし、その対象は家庭裁判所が検察官送致決定を行い、検察官が公判請求をした後に限られており、本事件のような捜査段階又は家庭裁判所の審判段階における推知報道は、改正少年法の下であっても違法になるものです。
 また、改正少年法の衆議院・参議院の各法務委員会の附帯決議は、「インターネットでの掲載により当該情報が半永久的に閲覧可能となることをも踏まえ、いわゆる推知報道の禁止が一部解除されたことが、特定少年の健全育成及び更生の妨げとならないよう十分配慮されなければならない」としています。改正少年法施行後も、報道機関を含むあらゆる情報の送り手は、「特定少年」の推知報道が無制限に認められるものではないことを改めて認識する必要があります。
 「週刊新潮」は、実名及び顔写真を掲載した理由について、「事件の重大性に鑑みて、かつ、被害者の個人情報ばかりが報じられることへの違和感や疑念を禁じ得ないためである。」としています。しかし、その「違和感」や「疑念」は被害者に対する配慮に欠ける報道等の在り方に向けられるべきであり、少年の実名及び顔写真を掲載することを自ら正当化する根拠とならないことは明らかです。
 当会は、これまでも少年の実名や写真を掲載した報道に対して抗議する会長声明を公表してきましたが、同種の報道が繰り返されたことは極めて遺憾であり、少年法61条を遵守しない「週刊新潮」に対して厳重に抗議するものです。そして、報道機関を含むあらゆる情報の送り手に対して、少年法を尊重し、また、特定少年の健全育成及び更生の妨げとならないよう十分に配慮した報道等を行うよう重ねて要望します。

少年事件の実名・顔写真報道に対して抗議する会長声明(PDF)

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