会長声明・意見書

選択的夫婦別姓制度の実現を求める会長声明

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更新日:2021年06月29日

2021年(令和3年)6月29日
第二東京弁護士会 会長 神田 安積
21(声)第8号

 2021年6月23日、最高裁判所大法廷は、夫婦同姓を定める民法750条と戸籍法74条1号について、夫婦同姓に合理性があるとした2015年12月16日最高裁大法廷判決の判断を変更すべきものとは認められないとして、いずれも憲法24条に違反しないと判示しました。

 この裁判では、夫婦同姓のために、結婚をやむなく断念する人や結婚をするためにやむなく改姓しなければならない人の意思決定の自由に対する制限や生活上の不利益をどう受け止めるかが問われました。つまり、結婚を希望する人たちがどちらかの姓を自由に選択しうるとしても、夫婦同姓を受け入れない限り法的な結婚ができないという点において、夫婦同姓が強制されており、しかも、現実には結婚した夫婦の約96%において女性が改姓し、アイデンティティの喪失や社会的不便・不利益を受けている点において、上記の法律は憲法24条や憲法14条に反するのではないかということが問題になったのです。

 2020年11月の参議院予算委員会における法務大臣の答弁によれば、法律で夫婦同姓を強制している国は世界中で日本だけです。日本は1985年に女性差別撤廃条約を批准していますが、国連女性差別撤廃委員会から、2003年、2009年、2016年の3回にわたって、夫婦別姓を認めない民法の規定は「差別的規定」であるとして是正勧告を受けています。
 これに対し、日本の国会や政府はこれまで何をしてきたのでしょうか。かつて1996年及び2010年に、選択的夫婦別姓を導入するための法案が準備されたことがありました。しかし、この法案は国会に提出されず、その後も国会は議論を先送りしたままです。また、政府は、昨年末に閣議決定した第5次男女共同参画基本計画において、選択的夫婦別姓について「必要な対応を進める」としていた原案の文言を「更なる検討を進める」とトーンダウンする修正をした上に、「選択的夫婦別姓」という文言自体を削除するに至りました。
 このように、日本の国会や政府は、国連からイエローカードを3回も出されるという重大なコンプライアンス違反をしながら、何もせず、むしろ議論を後退させてきたのです。

 このような状況の中、最高裁判所には、世代を超えた多くの人たちの願い、特に、結婚がこれから切実な問題になる10代や20代など若い世代の選択的夫婦別姓の願いが司法審査によって実現に至るように、憲法の番人にふさわしい画期的な判断が期待されていました。しかし、その答えは、「夫婦の姓についてどのような制度を採るのが立法政策として相当かという問題と夫婦同姓を定める現行法の規定が憲法24条に違反して無効であるか否かという憲法適合性の審査の問題とは次元を異に」しており、「制度の在り方は国会で論ぜられ判断すべき事柄にほかならない」というものであり、大きな失望を禁じ得ません。
 当会がこれまでの会長声明で明らかにしてきたとおり、最高裁判所は夫婦同姓を強制する法律を憲法違反であるとして無効とすべきであったのであり、その点で、憲法違反であることを明らかにした4名の裁判官(そのうち弁護士出身は2名)の見解に賛同するものです。

 「選択的夫婦別姓、ちっとも進んでませんね」「どうして女の人だけが自分の名字を捨てなきゃいけないのか」「同じ姓にするのは伝統と言っても、明治時代からの制度でまだ歴史は浅いんです」「国際的に見ても別姓を選べないのは日本くらいなんです」「私たちは制度が認められるのを待って入籍しようとしていたんです」
 これらは、今年のお正月に放映されたテレビドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」新春スペシャルの中で、妊娠を機に婚姻届を出すかどうか悩む事実婚のカップルの二人が口にしたセリフです。
 選択的夫婦別姓を希求する声を止めることはできません。今回の大法廷判決において合憲の立場を採った3名の裁判官の補足意見にも、「このまま社会状況の変化が進めば夫婦同姓規定を違憲と判断する余地がある」と書かれています。政府は、社会状況の変化の速さを踏まえ、既に準備されている改正法案を直ちに国会に提出し、国会は、法務委員会等の場で議論を徹底的に行い、民法等の改正を行うべきです。当会は、これからも選択的夫婦別姓制度の実現に向けて、国会や政府に対する働きかけを含む様々な取り組みに尽力していきます。

選択的夫婦別姓制度の実現を求める会長声明(PDF)

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