会長声明・意見書

いわゆる重要土地利用規制法の成立に抗議するとともに、その適用に反対し、廃止を求める意見書

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更新日:2021年07月27日

2021年(令和3年)7月27日
第二東京弁護士会
会長 神田 安積

第1 意見の趣旨

 本年6月16日に成立した「重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用状況の調査及び規制等に関する法律」(以下「本法」という。)は、国民の基本的人権を侵害し、不当に制約するものであり、その成立に抗議するとともに、本法を適用することなく、直ちに廃止することを求める。

第2 意見の理由

1 本法の概要

 本法は、第204回通常国会において、本年6月16日に参議院本会議で可決・成立した。その概要は以下のとおりである。

(1)本法の目的
 本法は、①「防衛関係施設」(米軍基地や自衛隊基地など)、②海上保安庁の施設、③「生活関連施設」(政令で定める)を「重要施設」としたうえで、その敷地の周囲おおむね千メートルの区域内や領海基線を有する国境離島及び日本国民が居住している有人国境離島地域(以下「国境離島等」という。)の区域内の区域で、これらの「施設機能」1 や「離島機能」2 を阻害する行為に土地等が用いられることを特に防止する必要があるものについて、内閣総理大臣が「注視区域」に指定でき(第5条)、注視区域のうち、特に重要な施設や特に重要な国境離島に関する区域を「特別注視区域」と指定できるものとする(第12条)。
 そして同法は、「注視区域」内や「特別注視区域」内の土地及び建物が、施設機能や離島機能を阻害する行為(以下「機能阻害行為」と略することがある。)に使われることを防止し、もって、「国民生活の基盤の維持」並びに「我が国の領海等の保全及び安全保障」に寄与することを目的としている(第1条)。

(2)「注視区域」の指定とこれに伴う罰則を含む効果
 内閣総理大臣は、機能阻害行為の防止に関する「基本方針」を策定して閣議で決定し、「注視区域」を指定する(第5条)。
 そのうえで、内閣総理大臣は、①注視区域内における土地等の利用状況を調査し(第6条)、②調査のため必要がある場合は関係行政機関の長及び関係地方公共団体の長その他の執行機関に、注視区域内にある土地等の利用者その他の関係者に関する氏名又は名称、住所その他政令で定めるものの提供を求めることができ(第7条)、③必要があるときは、土地等の利用者その他の関係者に対し、土地等利用に関する報告又は資料提出を求めることができ(第8条)、④報告又は資料提出を拒否したり、虚偽報告又は虚偽資料提出をした者に対して、30万円以下の罰金に処すことができる(第27条)。
そして、⑤当該土地等が機能阻害行為に利用され又は利用される明らかなおそれがあるときは、利用者に対し、利用の禁止その他必要な措置を勧告でき(第9条第1項)、勧告に従わないときは命令でき(同第2項)、⑥命令に違反したときは2年以下の懲役若しくは200万円以下の罰金又は併科に処せられる。

(3)特別注視区域の指定とこれに伴う罰則を含む効果
 内閣総理大臣は、注視区域のうち、特に重要な施設や特に重要な国境離島に関する区域を「特別注視区域」に指定することができる(第12条)。
 そのうえで、①特別注視区域内の一定規模以上の土地等の所有権の移転等を行う場合は、あらかじめ内閣総理大臣に対し、当事者の氏名及び住所、利用目的その他政令で定める事項の届け出が義務づけられる(第13条)。②届け出をしなかったり、虚偽の届け出をした場合は、6月以下の懲役又は100万円以下の罰金となる。
 そして、内閣総理大臣は、③届け出られた事項の調査を行い、その際に、関係行政機関の長及び関係地方公共団体の長その他の執行機関に、特別注視区域内にある土地等の利用者その他の関係者に関する氏名又は名称、住所その他政令で定めるものの提供を求めることができ(第13条第5項、第7条)、④必要があるときは、土地等の利用者その他の関係者に対し、土地等利用に関する報告又は資料提出を求めることができ(第13条第5項、第8条)、⑤報告又は資料提出を拒否したり、虚偽の報告又は虚偽資料を提出したときは、30万円以下の罰金に処せられる。

1.我が国を防衛するための基盤としての機能、領海、排他的経済水域及び大陸棚の保全に関する活動の基盤としての機能並びに生活関連施設の国民生活の基盤としての機能をいう。
2.領海、排他的経済水域及び大陸棚の限界を画する基礎としての機能、有人国境離島地域離島の領海等の保全に関する活動の拠点としての機能をいう。

2 本法の問題点

(1)罰則を伴う規制立法であるにもかかわらず、要件が不明確かつ無限定であること
 以上のとおり、本法では、内閣総理大臣は、土地等の利用者が土地等を機能阻害行為に利用したり、又は利用する明らかなおそれがあるときは、利用者に対し利用しないことその他必要な措置を勧告し、勧告に応じないときは命令を出せるとし(第9条第1項及び第2項)、命令に応じないときは、2年以下の懲役若しくは200万円以下の罰金又はその両方に処せられる。
およそ、どのような行為が罪になり刑罰を科せられるかということは、法律で明確に定められる必要があることはいうまでもない(罪刑法定主義)。
 しかしながら、本法は、以下のとおり、不明確かつ無限定な要件により刑罰を科すことになる点で、上記罪刑法定主義に反しており、また、基本的人権やプライバシーを侵害するおそれがあるといわざるを得ない。

ア 機能阻害行為が不明確であること
 まず、注視区域については、土地等の利用状況の調査が行われるが(第6条)、調査に関する基本的事項は、政府の定める「重要施設の施設機能及び国境離島等の離島機能を阻害する土地等の利用の防止に関する基本方針」において定められる。しかし、「重要施設の施設機能及び国境離島等の離島機能を阻害する」行為が何を差すのかは、条文からは全く不明確である。
 国会審議では、重要施設の機能に支障を来す構造物の設置、トンネルを掘削して侵入を図る行為、電波障害準備行為、施設侵入準備行為、国境離島等に関しては、領海基線の根拠となる低潮線に影響を及ぼすおそれがある近傍の土地の形質変更などが例として挙げられた。しかし、それ以外に具体的に想定している行為については、「安全保障をめぐる内外情勢や施設の特性等に応じて様々な態様が想定されると思います。このため、特定の行為を普遍的、代表的な機能阻害行為として法案に例示することは必ずしも適当ではないと考えています。いずれにいたしましても、閣議決定される基本方針において、可能な限り具体的に機能阻害行為の例示をお示ししたいと考えております。」(領土問題担当大臣)などとして、法案審議の段階では明らかにされなかった。

イ 「生活関連施設」が政令に委ねられ不明確かつ無限定であること
 「生活関連施設」とは、「その機能を阻害する行為が行われた場合に国民 の生命、身体又は財産に重大な被害が生ずるおそれがあると認められるもので政令で定めるもの」とされている(第2条第2項第3号)。
 国会審議では、例として原子力発電所、核燃料サイクル関係施設などの原子力関連施設、自衛隊と民間との軍民両用空港などがあげられたが、何がこれに当たるかは法律ではなく、内閣が制定する「政令」で定めるとしている。
 この点に関し、政府参考人は「本法案の対象区域は現時点においては決定していない」とし、「政令制定に当たりましては、その機能を阻害する行為が行われた場合に国民の生命、身体又は財産に重大な被害が生ずるおそれがあると認められるものにつきまして、土地等利用状況審議会の意見を伺った上で判断をさせていただく。」と答弁しており、この点からしても、本来法律で定めるべき内容をいわば政令に白紙委任しているに等しい。

ウ 思想・良心の自由、表現の自由、個人情報及びプライバシーに関する情報にわたるおそれがあること
 本法は、調査のため必要があるときは、関係行政機関や関係地方公共団体の長などに対し、注視区域内の土地等の利用者その他の関係者に関する情報提供を求めることができるとしている(第7条)。どのような情報の提供を求めるのかについては、例として氏名又は名称、住所を挙げるほかは、これも政令で定めるとされている。
 国会審議においては、「氏名、住所、国籍を把握して個人が特定できたとして、どうやって重要施設等の機能阻害行為を行うかどうか判断するのでしょうか。判断のためには、内閣府自ら思想信条を調査しなくても、国内情報機関に情報を照会する必要があるのではないでしょうか。調査や事前届出によって収集された個人情報について、内閣府内だけでなく他の省庁、内閣情報調査室や防衛省情報本部、公安調査庁、警察庁外事情報部など、国内情報機関に照会したり情報提供することがありますか。」との質問に対し、内閣府大臣政務官は、一般論としてではあるものの、「内閣総理大臣は、本法律の目的を達成するために必要があると判断した場合には、本法案に基づき収集した土地等の利用者等に関する情報について、関係行政機関等の協力を得つつ所要の分析を行うこともあり得ます。もっとも、情報の分析に際しては、いかなる機関にいかなる協力を求めるかは個別具体の事情により異なると考えられることから、お尋ねの各機関に対して協力を求めることがあるかどうかを一概にお答えすることは困難でございます。」と答弁している。このように、思想・良心の自由、表現の自由、個人情報やプライバシーに関する情報が、「関係行政機関等の協力」により収集され、「所要の分析」が行われる可能性が否定できない。
 また、「その他の関係者」という文言も無限定であり、対象者がどこまで含まれるのかも不明確である。
 これに特定秘密保護法が関わると、調査対象者、調査対象項目などの一切が秘密のままにされ、個人のプライバシーの保障が図れないこととなりかねない。

エ 利用者その他の関係者に対する報告又は資料提出も無限定であること
 以上の情報提供では不十分なときは、土地等の利用者その他の関係者に対し、利用に関する報告又は資料の提出を求めることができるとされているが、求められる報告や資料の範囲に制限はない。そして、これに応じないときや、虚偽があった場合は、刑事罰である30万円以下の罰金に処せられる(第8条、第27条)。
 国会審議では、「本法案に基づく報告徴収等においていかなる者を対象とするかについては、個別具体のケースに応じて、その土地等の利用状況を知り得る立場にいる者に対して行う必要があり、法律上、特定の者に限定することとすれば調査の目的を達成し得なくなることから、適当ではないものと考えております。」との答弁がなされており、「その他の関係者」に限定はない。

オ また、情報提供や報告を求められる対象となる「利用者その他の関係者」(第8条)という概念も曖昧で幅広く、自己がその対象になるかどうか不明確であり、現に、国会審議では、特定の者に限定することは適当でないとされている。
 利用に関する報告や資料の提出も、機能を阻害する利用行為の防止のために行われるものであるが、「機能阻害行為」自体が、前述のとおり不明確である。報告や資料の範囲も限定されていない。

カ 機能阻害行為に利用される「明らかなおそれ」(第9条第1項)の有無も、誰がどのような基準で判断するのかも不明確である。
 勧告や命令がなされる「その他必要な措置」(同)も無限定である。これでは、誰がどんな行為でなぜ罪に問われるかということが、法律で明らかにされているとはいえない。

キ およそ罰則を伴う規制立法をする場合、刑罰法規の謙抑性の観点から、規制の趣旨及び目的は明確でなければならない。ところが、本法は、大部分が民間企業によるものと考えられる生活関連施設を、防衛関連施設とともに重要施設としていながら、これらの施設の機能阻害行為を防止する必要性及び正当性について、何ら統一的な理念を示していない。第1条は、「もって国民生活の基盤の維持並びに我が国の領海等の保全及び安全保障に寄与することを目的とする」としているが、ほとんど全ての法制度に当てはまるような内容でしかなく、前述の「生活関連施設」の外延も、「機能阻害行為」の内容も、政令や閣議決定(による例示)に全面的に白紙委任するに等しいこととあいまって、規制立法として余りにも広範に過ぎるものといわざるを得ない。

(2)特別注視区域の届出義務、調査、報告又は資料提出要求と罰則
 さらに同法では、注視区域内のうち、特に重要な施設や重要な離島に関する区域を「特別注視区域」と指定し、一定の規模以上の土地や建物の売買契約等について、住所、氏名、契約に関する事項その他政令で定める事項を届け出る義務を課している。届出をしないとき、虚偽の届出があったときは、6か月以下の懲役又は100万円以下の罰金に処せられる(第13条第1項及び第3項、第26条)。
 届け出られた事項については調査を行い、注視区域における利用状況調査と同様に、調査のために必要があるときは、氏名等の情報提供、報告又は資料の提出要求ができる。これに従わないときや虚偽があったときは、30万円以下の罰金に処せられる(第13条5項、第8条、第27条)。
 前述のとおり、「注視区域」の範囲については、「機能阻害行為」に利用されることを特に防止する必要がある地域であるとされているところ、「機能阻害行為」の概念が曖昧であること及び「生活関連施設」の指定が政令に委ねられていることから、「注視区域」の一部である「特別注視区域」も広範かつ無限定になりうるため、本来自由であるべき土地等の取引について過度の制約を課すことになって、財産権や移転の自由などを侵害するおそれがある。

(3)立法事実の存在についても重大な疑問があること
 本法を制定する必要性や正当性を根拠づける立法事実の存在についても強い懸念が指摘されている。

ア この点について、「国土利用の実態把握等に関する有識者会議」が2020年(令和2年)12月24日に公表した「国土利用の実態把握等のための新たな法制度の在り方について提言」では、「国境離島や防衛施設周辺等における土地の所有・利用を巡っては、かねてから、安全保障上の懸念が示されてきた。経済合理性を見出し難い、外国資本による広大な土地の取得が発生する中、地域住民を始め、国民の間に不安や懸念が広がっている。例えば、長崎県対馬市では海上自衛隊対馬防備隊の周辺土地が、また、北海道千歳市では航空自衛隊千歳基地の周辺土地が、それぞれ外国資本に取得され、地域住民の不安や懸念を背景に、市議会において、様々な議論が行われている。」と指摘されており、これらの事実が立法事実として説明されていた。
 内閣府副大臣も、国会答弁において、「北海道の千歳基地に近接する地域や、長崎県の対馬市の海上自衛隊対馬防衛隊の隣接地を外国資本が取得したというふうなことが現に起きていて、地域住民の間で不安が広がり、地方議会で議論が行われた事例も出てきていると承知をしておりますし、北海道東北地方知事会など複数の地方公共団体から、安全保障の観点から必要な法整備を求める意見書が提出されているところでもありますので、ここはやはり、立法府として一定の、国民の不安に応える措置が必要ではないかなというふうに考えております。」などと説明した。

イ ところが、全国の1800近くある自治体の中で、「意見書」が提出されているのは16件にすぎず、しかも、政府が法案提出の根拠に挙げる、千歳基地がある千歳市、同基地から三キロほど離れたところで外国資本による土地の購入があったとされる苫小牧市、対馬防備隊に隣接する土地の購入があったとされる対馬市のいずれも含まれていないことが、審議において判明した。
 実際に防衛省が行った調査においても、約650の自衛隊施設及び米軍施設に隣接する土地について、法務局で土地登記簿謄本等の交付を受けて、登記名義人の氏名、住所等を確認するなどの調査を2017年(平成29年)度までに1巡目、2020年(令和2年)度までに2巡目まで行った結果、約六万筆のうち、住所が外国に所在し、氏名から外国人と類推された土地は七筆のみであり、これまで防衛施設周辺における土地の所有等により自衛隊や米軍の運用等に具体的に支障が生じるような事態は確認されていないとの答弁がなされた。さらに、北海道千歳市の森林買収は、投資目的で買い取られた森林から三キロ離れた場所に空港があったという事例、長崎県対馬市の事案も、韓国資本が観光開発目的でホテルを購入したというものに過ぎないことが判明した。

ウ 立法事実に関連して、領土問題担当大臣は、安全保障上のリスクを把握しているのかという質問に対し、「我が国の安全保障をめぐる内外情勢が近年厳しさを増しているということは申し上げてまいりました。機能阻害行為が明らかになってから初めて対策を講ずるという事後的な対応では安全保障上取り返しがつかない事態となるおそれがあるということでございます。」と答弁し、それが安全保障上のリスクになるのかという問いに対しても、「それをしっかりと調査をするということでございます。」との答えを繰り返すのみであった。

エ 結局、本法は、内閣審議官が「これまで防衛関係施設等の重要施設に対しまして、その周辺の土地等を利用する形で施設の機能を阻害する、阻害した行為が行われたという実例につきましては、内閣官房としては把握しておらないところでございます。その一方で、我が国の安全保障をめぐる内外情勢は近年厳しさを増しておりますので、安全保障上のリスクが現実となってからでは取り返しが付かない事態になるおそれがあると、このようにも考えているところでございます。」と述べるとおり、重要施設等の周辺の土地を外国資本が取得してその機能を阻害した行為の実例はないが、安全保障上のリスクがあるかないか自体を調査するためのものであるということになり、立法事実の存在自体に重大な疑問があるといわざるを得ない。

3 審議不十分の多数の問題点が附帯決議で指摘されたこと

(1)本法については、別紙一覧記載のとおり、衆議院で16項目の附帯決議がなされ、参議院では更に1項目が追加されて17項目の附帯決議がなされている。

(2)これらの各決議事項は、いずれも、同法案の不明確な点についての懸念や問題性を指摘したものである。
 衆議院内閣委員会では、専門家の参考人質疑なども行われず、わずか12時間の審議しかなされず、参議院でも、参考人3名の質疑を含めても14時間の審議しかなされなかった。上記のような多数の項目の附帯決議が付いたのも、国会審議で解明できていない事項や懸念されるべき問題点が積み残されたままであったことの裏付けであり、本来、これらの問題点が曖昧なまま同法を成立させるべきではなかったというべきである。

4 法案の欠陥は修正不可能であり適用せず廃止されるべきであること

(1)以上のとおり、本法は、不明確な要件で人権を制限し、刑罰を科すなど、国民の基本的人権を侵害し、不当に制約することになりかねない点で重大な欠陥がある。
 特に、同法は、米軍及び自衛隊関連施設を重要施設と位置づけ、その機能を阻害する行為を禁止するという点で、安全保障目的、すなわち軍事的な目的での人権制限を定めるものである。このような目的の法律が、刑罰の制裁のもとで人権を制限する要件を不明確かつ無限定にしたまま、閣議決定や政令に委ねることは、日本国憲法の平和主義や平和的生存権の観点からも許されないというべきである。
 したがって、以上のような問題点が解消されないままの本法の成立に抗議するとともに、本法を適用せず、直ちに廃止することを求める。

(2)本法の附則第2条は、「政府は、この法律の施行後五年を経過した場合において、この法律の施行の状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。」としているが、さらに上記附帯決議では、「本法に係る規制対象等の予見可能性や運用の透明性を求める意見が多くあることから、附則第二条の規定における施行後五年の経過を待たずに施行状況を把握し、必要に応じ制度の見直しを検討すること。」としている。
 当会は、これまで述べてきたとおり、本法が、『機能阻害行為』を明確かつ具体的に定めておらず、『生活関連施設』も限定がなく、罪刑法定主義に反する立法として直ちに廃止するべきであると考えるものであるが、少なくとも上記の施行後5年の見直しのときまでに、本法の規定による措置が、各附帯決議にも明記されているとおり、思想、信教、集会、結社、表現及び学問の自由並びに団結権及び団体行動権その他の基本的人権を不当に制限していないか、目的外の情報収集が行われていないか、報告又は資料の提出や、求められる対象者が無限定になっていないか、などの諸点を厳しく監視し、本法が廃止されるべき立法事実となる運用事例を収集していくことを併せて表明する。

以上

(衆議院)

重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用状況の調査及び利用の規制等に関する法律案に対する附帯決議

政府は、本法の施行に当たっては、次の事項に留意し、その運用等について遺漏なきを期すべきである。

 注視区域及び特別注視区域の指定に当たっては、あらかじめ当該区域に属する地方公共団体の意見を聴取する旨を基本方針において定めること。

 基本方針の決定並びに注視区域及び特別注視区域の指定に当たっては、当該決定及びそれらの指定の後、速やかに国会に報告すること。

 本法における「機能を阻害する行為」については、基本方針においてその類型を例示しつつ、明確かつ具体的に定めること。その際、本法の目的と無関係な行為を対象としないこと。

 本法第二条に基づき「生活関連施設」を政令で定めるに当たっては、本法の目的を逸脱しないようにするとともにその対象を限定的に列挙すること。

 本法の規定による措置を実施するに当たっては、思想、信教、集会、結社、表現及び学問の自由並びに勤労者の団結し、及び団体行動をする権利その他日本国憲法の保障する国民の自由と権利を不当に制限することのないよう留意すること。

 本法第四条第二項第二号の「経済的社会的観点から留意すべき事項」を具体的に明示すること。その際、本条における市街地の位置付けを明確にすること。

 本法第四条第二項第三号の「注視区域内にある土地等の利用の状況等についての調査に関する基本的な事項」を定めるに当たっては、調査対象となる者、調査方法、調査項目等を具体的に明示すること。

 本法第六条に基づく土地等利用状況調査を行うに当たっては、本法の目的外の情報収集は行わないこと。また、収集した個人情報について、目的外利用となる他の行政機関への提供は慎むとともに、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律に則った情報管理を徹底し、情報漏洩防止等のセキュリティ対策に万全を期すこと。

 本法第八条に基づく報告又は資料の提出の求めについては、基本方針において運用の考え方を具体的に明示すること。また、同条の対象となる「利用者その他の関係者」についても、基本方針において具体的に例示すること。

 本法第九条に基づく勧告及び命令については、基本方針において、その対象となり得る行為を例示するとともに、運用基準を具体的に明示すること。また、勧告及び命令の実施状況を毎年度、国会を含め国民に公表すること。

十一 土地等利用状況審議会の委員及び専門委員の任命に当たっては、重要施設及び国境離島等が全国各地に所在していることに鑑み、多様な主体の参画を図ること。

十二 本法第二十一条第一項に基づく情報の提供については、その要件を基本方針において具体的に明示すること。その際、本法の目的の範囲を逸脱しないよう留意すること。

十三 本法第二十六条に基づく罰則の適用については、限定的なものとすること。また、本法第二十七条に基づく罰則の適用に当たっては、思想信条の自由、表現の自由、プライバシーの権利等を侵害することのないよう、十分配慮すること。

十四 本法第九条の勧告及び命令に従わない場合には、重要施設等の機能を阻害する行為を中止させることが困難であることに鑑み、本法の実効性を担保する観点から、収用を含め、更なる措置の在り方について、附則第二条の規定に基づき検討すること。

十五 我が国の安全保障の観点から、水源地や農地等資源や国土の保全にとって重要な区域に関する調査及び規制の在り方について、本法や関係法令の執行状況、安全保障を巡る内外の情勢などを見極めた上で、附則第二条の規定に基づき検討すること。

十六 注視区域及び特別注視区域の対象に、重要施設の敷地内の民有地を加えることについて、附則第二条の規定に基づき検討すること。

 

(参議院)

重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用状況の調査及び利用の規制等に関する法律案に対する附帯決議

政府は、本法の施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずるべきである。

 注視区域及び特別注視区域の指定に当たっては、あらかじめ当該区域に属する住民の実情に知悉する地方公共団体の意見を聴取する旨を基本方針において定めること。

 基本方針の決定並びに注視区域及び特別注視区域の指定に当たっては、当該決定及びそれらの指定の後、速やかに国会に報告すること。

 本法における「機能を阻害する行為」については、基本方針においてその類型を例示しつつ、明確かつ具体的に定めること。その際、本法の目的と無関係な行為を対象としないこと。

 本法第二条に基づき「生活関連施設」を政令で定めるに当たっては、本法の目的を逸脱しないようにするとともに、その対象を限定的に列挙すること。

 本法の規定による措置を実施するに当たっては、思想、信教、集会、結社、表現及び学問の自由並びに勤労者の団結し、及び団体行動をする権利その他日本国憲法の保障する国民の自由と権利を不当に制限することのないよう留意すること。

 本法第四条第二項第二号の「経済的社会的観点から留意すべき事項」を具体的に明示すること。その際、本条における市街地の位置付けを明確にすること。

 本法第四条第二項第三号の「注視区域内にある土地等の利用の状況等についての調査に関する基本的な事項」を定めるに当たっては、調査対象となる者、調査方法、調査項目等を具体的に明示すること。

 本法第六条に基づく土地等利用状況調査を行うに当たっては、本法の目的外の情報収集は行わないこと。また、収集した個人情報について、目的外利用となる他の行政機関への提供は制限するとともに、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律に則った情報管理を徹底し、情報漏洩防止等のセキュリティ対策に万全を期すこと。

 本法第八条に基づく報告又は資料の提出の求めについては、基本方針において運用の考え方を具体的に明示すること。また、同条の対象となる「利用者その他の関係者」についても、基本方針において具体的に例示すること。

 本法第九条に基づく勧告及び命令については、基本方針において、その対象となり得る行為を例示するとともに、運用基準を具体的に明示すること。また、勧告及び命令の実施状況を毎年度、国会を含め、国民に公表すること。

十一 土地等利用状況審議会の委員及び専門委員の任命に当たっては、重要施設及び国境離島等が全国各地に所在していることに鑑み、多様な主体の参画を図ること。

十二 本法第二十一条第一項に基づく情報の提供については、その要件を基本方針において具体的に明示すること。その際、本法の目的の範囲を逸脱しないよう留意すること。

十三 本法第二十六条に基づく罰則の適用については、限定的なものとすること。また、本法第二十七条に基づく罰則の適用に当たっては、思想信条の自由、表現の自由、プライバシーの権利等を侵害することのないよう、十分配慮すること。

十四 本法第九条の勧告及び命令に従わない場合には、重要施設等の機能を阻害する行為を中止させることが困難であることに鑑み、本法の実効性を担保する観点から、収用を含め、更なる措置の在り方について、附則第二条の規定に基づき検討すること。

十五 我が国の安全保障の観点から、有人国境離島の過疎化を食い止めるための振興策を拡充するとともに、水源地や農地等、資源や国土の保全にとって重要な区域に関する調査及び規制の在り方について、本法や関係法令の執行状況、安全保障を巡る内外の情勢などを見極めた上で、附則第二条の規定に基づき検討すること。

十六 注視区域及び特別注視区域の対象に、重要施設の敷地内の民有地を加えることについて、附則第二条の規定に基づき検討すること。

十七 本法に係る規制対象等の予見可能性や運用の透明性を求める意見が多くあることから、附則第二条の規定における施行後五年の経過を待たずに施行状況を把握し、必要に応じ制度の見直しを検討すること。

いわゆる重要土地利用規制法の成立に抗議するとともに、その適用に反対し、廃止を求める意見書(PDF)

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