会長声明・意見書

「世界死刑廃止デー」によせて

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更新日:2021年10月10日

2021年(令和3年)10月10日
第二東京弁護士会 神田 安積
21(声)第9号

 本日10月10日は「世界死刑廃止デー」であり、死刑制度廃止に向けた世界規模の取り組みを訴える日です。
 死刑廃止は国際的な潮流であり、10年以上死刑の執行をしていない事実上の廃止国を含め144カ国が死刑を廃止しており、存置国は我が国を含め55カ国ですが、このうち、2020年中に死刑を執行したのは18カ国でした。
 いわゆる先進国の集まりであるOECDの加盟国38カ国のうち、死刑制度を残しているのは米国、韓国と日本の3カ国だけですが、米国は23州で死刑を廃止し、3州が執行停止を宣言しており(2021年6月10日現在)、連邦レベルでも2021年7月以降、死刑の執行が停止されています。また、韓国は1997年を最後に20年以上死刑を執行しておらず、事実上の死刑廃止国です。

 日本は、死刑を廃止している世界の多くの国々と、基本的人権の尊重、民主主義、法の支配という価値観を共通にしています。昨年、日本は9年ぶりに死刑を執行しませんでしたが、死刑制度を存置し続けたままであることは、いまや国際的に重大な関心事となっています。にもかかわらず、国会や政府において、死刑廃止について十分に議論がなされていないのが現状です。
 政府は、世論調査の結果、国民の8割以上が死刑もやむを得ないとしていることを死刑制度の存置の主たる理由としています。しかし、そもそも死刑制度の廃止は、世論調査の結果によって決せられるべきではなく、諸外国における死刑廃止も政治家のリーダーシップによって実現されてきたのであり、我が国においても、政治家のリーダーシップが強く求められます。
 また、死刑執行の態様をはじめ、死刑制度の具体的な運用の在り方を示す事実は国民にほとんど開示されていません。生命を絶つ死刑は基本的人権の尊重と相容れないのではないか、あるいは、絞首刑による死刑は残虐な刑罰にあたるのではないか、こうしたことを議論し判断するための情報が国民に開示されるべきです。

 当会は、本年3月22日に開催された臨時総会において、政府及び国会に対し、死刑制度を廃止すること、及び、死刑制度の廃止までの間、死刑の執行を停止するための所要の措置を講ずることを求める決議を採択しました。
 「世界死刑廃止デー」の本日、ここに改めて、死刑制度の廃止とそれまでの間の死刑執行停止を政府及び国会に対して求めるものです。

「世界死刑廃止デー」によせて(PDF)

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