会長声明・意見書

「国際女性デー」によせて

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更新日:2022年03月08日

2022年(令和4年)3月8日
第二東京弁護士会 会長 神田安積
21(声)第13号

 本日3月8日は「国際女性デー」。世界中で女性の権利の獲得へ向けたこれまでの歩みを祝うとともに、さらなるジェンダー平等をめざす日です。
 国連がこの日を制定したのは1975年。その由来は1908年3月8日に、アメリカ・ニューヨークで女性労働者が参政権を求めてデモを行ったこととされています。イタリアでは、ちょうどこの季節にミモザの花が咲き誇ることにちなみ、ミモザの日と呼ばれています。

 新型コロナ感染症拡大に見舞われたこの2年間、その深刻な影響は特に非正規で働く女性に及びました。失職者や自殺した人の人数の性による相違を示すデータは、貧困と格差の背景にジェンダーギャップ(性による格差)があることを示しています。本年3月1日に公表された世界銀行による190ヶ国・地域の経済的な権利を巡る男女格差調査において、日本は昨年の80位から更に103位にまで急降下しましたが、そこでも職場での待遇や給与に大きなジェンダーギャップがあることが指摘されています。
 当会は、昨年7月、対象者を女性に限定した「女性のための生活、仕事、子育て、なんでも相談会」を実施し、相談データの分析結果に基づく政策提言をしました。そこで私たちが改めて学んだことは、困っている女性が必ず声を上げるわけではないということでした。我慢することに慣れてしまっていたり、意思疎通が困難であったり、様々な事情からそもそも日々の苦しさに気づいていない女性がいます。ましてや弁護士に相談しようと考える人はまだまだ少数にとどまります。私たちに「見えない人」や「声が届かない人」にも弁護士の力を届けることができるように、さらに工夫や周知に努めていかなければなりません。

 当会は、本年1月12日に開催した臨時総会において、「第4次第二東京弁護士会男女共同参画基本計画」を決議しました。同基本計画は、「パリテ」(フランス語で同等、同一。意思決定の場での男女同数の意)を最終的な目標として掲げ、ワーク・ライフ・バランスの実現に向けた施策等をさらに推進するとともに、その前提として、女性会員の割合の増加に取り組むことを謳っています。また、女性会員の割合(2022年2月末日時点において21.79%)を踏まえ、2014年に導入した副会長選任に関するクオータ制をはじめとする先駆的な取組を継続し、少なくとも5年に一度の割合で女性会長を実現することが望まれるとしています。コロナ禍やIT化、超高齢化社会など大きな変化が弁護士の業務の在り方を変えつつある今、性別を男女の二分法で考えず、ダイバーシティの観点からもジェンダーは多様であることを前提として、すべての会員が弁護士会の活動に参画することは極めて重要です。男女共同参画のために向けられる努力は、女性会員のみの負担によるものではなく、男性会員の責務でもあり、また、その達成の利益は女性会員はもとよりあらゆる会員に享受されなければなりません。
 これに対し、政府は、2020年12月に閣議決定した「第5次男女共同参画基本計画」において、それまでの「指導的地位に占める女性の比率を2020年までに30%にする」という目標を「2020年代の可能な限り早期に」に後退させ、国連の女性差別撤廃委員会が日本に対して勧告してきた選択的夫婦別姓制度もその文言が削除されるに至りました。女性差別撤廃条約における女性の権利を担保するための仕組みを盛り込んだ選択議定書の批准は20年以上放置されており、先進国のほぼすべてに存在する包括的な差別禁止法や差別からの救済を担う国内人権機関もいまだに実現していません。
 当会は、政府に対してグローバルスタンダードに沿った法改正や運用を求めるとともに、国会議員、地方議員、最高裁判事をはじめとする裁判官、検察官など、様々な分野での女性参画の促進に関心を持って取り組む所存です。
 「女性は意思決定が行われる、すべての場所にいなくてはなりません。」(ルース・ベイダー・ギンズバーグ)

(*)「ジェンダー」とは、生物学的な性別に対して、社会的・文化的につくられる性別のことです。たとえば、男性でも家事をすることができるのに、「家事は女性がやるもの」という考え方のように、世の中の男性と女性の役割の違いによって生まれる性別のことをいいます。
(*)「クオータ制」とは、性別を基準に女性又は両性の比率を割り当てる制度のことをいいます。

「国際女性デー」によせて(PDF)

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