会長声明・意見書

死刑執行に抗議する会長声明

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更新日:2022年07月26日

2022年(令和4年)7月26日
第二東京弁護士会会長  菅沼友子
22(声)第5号

 本日、2008年(平成20年)に東京・秋葉原で無差別に7人を殺害し、10人に重軽傷を負わせたとして殺人罪などで死刑判決を受けた30代の死刑確定者に対し、死刑が執行されました。この事件で突然命を奪われた方々のご冥福を改めてお祈りするとともに、その後も心身の後遺障害に苦しんでおられる被害者の方々にお見舞い申し上げます。同時に、当会は、国連機関から繰り返し死刑執行の停止や死刑廃止に向けた検討を始めるべきと勧告されているにもかかわらず、我が国の政府がそれに従うことなく、今回も死刑を執行したことに対し、強く抗議します。
 当会は、2021年(令和3年)3月22日の臨時総会で「死刑制度の廃止を求める決議」を採択しました。その決議では、死刑制度の問題点、すなわち誤判の可能性を排除できないこと、死刑による犯罪の抑止効果が証明されていないこと、我が国の刑事司法制度の実体・手続両面に問題があること等を指摘し、さらにOECD加盟国のうち死刑制度を残している国は米国、韓国と日本の3か国にとどまり、さらに米国では連邦レベルで死刑の執行が停止され、韓国は20年以上死刑の執行が行われていない、という状況も踏まえたうえで、次のように述べました。
 「私たちが目指すべきは、たとえ極めて重大な罪を犯した人であっても、将来の更生の道を完全に閉ざしてしまうのではなく、たとえ僅かであっても更生の可能性を信じ、本人の回復に向けた援助を提供し、ともに人間としての尊厳をもって生きることのできる社会である。極めて重大な罪を犯した人には、厳正なる刑罰が必要であるが、そのような罪を犯した人に死刑をもって臨むことは、私たちが目指す社会の在り方と相いれない。」
 この事件のような無差別殺傷事件は社会の安心・安全に対する重大な脅威であって決して許されるものではありませんが、その背景には人々の孤独・孤立に対する支援のなさや排他的な社会のありよう等の問題があることが指摘されています。これらの点に真摯に向き合うことなく、漫然と死刑執行を繰り返すことが、このような事件を防止する効果があるのか、改めて考える必要があると思います。
 当会は、今回の死刑執行に対して強く抗議をするとともに、速やかに死刑廃止に向けた立法措置を講じ、死刑制度が廃止されるまでの間死刑執行を停止するよう重ねて政府及び国会に対して求めます。

死刑執行に抗議する会長声明(PDF)

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