司法修習期間中に給与又は修習給付金を受けることができなかったいわゆる「谷間世代」に対する一律給付の実現を求める会長声明
2023年(令和5年)3月24日
第二東京弁護士会会長 菅沼友子
22(声)第13号
1 司法制度は社会に法の支配を行き渡らせ、市民の権利を実現するために必要不可欠な社会的インフラであり、それを担う法曹は公費をもって養成されるべきです。2011年(平成23年)、司法修習生に給与が支給されていた従前の制度が改変されて無給となり、生活費等の援助が必要な修習生に対して国が金員を貸与することになりましたが、それによる過重な経済的負担がその後の法曹志望者の激減という事態の一因となったとの指摘等を受けて再び制度が改正され、2017年(平成29年)以降に採用される修習生に対しては修習給付金が支給されることとなりました。しかし、その間に司法修習生として採用された者(制度の谷間におかれてしまったいわゆる「谷間世代」。司法修習新第65期から第70期。)は、給与も修習給付金も受けることができず、今も経済的負担に苦しみ、不公平感を抱かざるをえない状況におかれ続けています。
当会は、2017年(平成29年)6月1日及び2019年(平成31年)2月1日に会長声明を発出する等、「谷間世代」の不公平を是正するための経済的措置の必要性等を訴えてきましたが、未だ問題は解決していません。
2 昨年11月29日に衆議院第一議員会館において開催された院内意見交換会では、「谷間世代」の当事者である弁護士らから、刑事弁護、被災者支援、ヘイトスピーチ被害者支援など、それぞれが弁護士としての社会的使命を果たしていることが報告されました。「谷間世代」に属する弁護士も、他の世代の弁護士と同様に修習専念義務を負いながら司法修習を行い、弁護士となった後は、市民の権利擁護と社会正義の実現のために働いています。
冒頭にも述べたように、三権の一翼たる司法を担う法曹は社会の人的インフラであり、その養成は公費によって行われるべきものです。特に、国内における司法ニーズの多様化を踏まえれば、公費による充実した法曹人材の育成は、現在の政府が掲げる「人への投資」という方針にも整合するものであり、最終的な受益者は国民といえます。「法曹資格は自らの利益のためのものであるからその取得費用は自ら負担すべきである」という「受益者負担」の考えは法曹養成には妥当しません。ましてや「谷間世代」のみが司法修習中に無給状態を強いられ、経済的負担を負わなければならないことに合理的な理由は見出し難いといわざるを得ません。
3 「谷間世代」の当時者が提起した給費制廃止違憲確認訴訟の名古屋高等裁判所判決(2019年(令和元年)5月30日)において、「従前の司法修習制度の下で給費制が果たした役割の重要性及び司法修習生に対する経済的支援の必要性については、決して軽視されてはならない」、「谷間世代」の多くが、「貸与制の下で経済的に厳しい立場で司法修習を行い、貸与金の返済を余儀なくされている・・・などの実情にあり、他の世代の司法修習生に対し、不公平感を抱くのは当然のこと」、「谷間世代の者に対しても一律に何らかの給付をするなどの事後的救済措置を行うことは、立法政策として十分考慮に値する」等と付言されているとおり、「谷間世代」が抱えている不公平感の是正及び経済的措置は国会において実現される必要があります。
この間、国会議員からも多くの応援メッセージが寄せられ、その数は、2023年(令和5年)3月3日に360通となり、衆参両院の合計議員数の過半数に達しました(同月22日時点の応援メッセージの数は371通)。このことからも、「谷間世代」の問題解決に関する国民の理解が得られつつあることは明らかであり、「谷間世代」に対する経済的措置実現の機は熟しています。
4 当会は、「谷間世代」の不公平な状態を少しでも是正するべく、当会の「谷間世代」に属する会員に対する支援金給付等の施策を講じてきました。しかしながら、この問題の抜本的な解決のためには、やはり国による「谷間世代」に対する一律給付の措置が不可欠です。
よって、当会は、「谷間世代」に対する不公平を一刻も早く是正するため、改めて、国に対し、早急に、「谷間世代」に対する一律給付の実現のための措置を求めます。
司法修習期間中に給与又は修習給付金を受けることができなかったいわゆる「谷間世代」に対する一律給付の実現を求める会長声明(PDF)