会長声明・意見書

全ての人が司法にアクセスできるように民事法律扶助の改善を求める会長声明

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更新日:2023年03月31日

2023年(令和5年)3月31日
第二東京弁護士会 会長 菅沼友子
22(声)第15号

 トラブルに直面して弁護士のサポートを受けたいと考えたとき、訴訟費用や弁護士費用のことが気になってしまう、という方は少なくないと思います。現在は、自動車保険の特約等による弁護士費用保険の普及が進みつつありますが、保険料を支払う余裕がない方にとっては弁護士費用等の問題は司法アクセスを阻む大きなハードルになってしまいます。
 「民事法律扶助」は、このように弁護士費用等が出せなくて困っている人に対してそれらの費用等を援助することによって、裁判を受ける権利(憲法第32条)を保障し、その正当な権利の実現等を図ることを実質的に保障する制度です。1952年に設立された財団法人法律扶助協会によって開始されましたが、総合法律支援法(2004年制定)に基づきその実施は国の責務とされ、現在は日本司法支援センター(法テラス)がその事業を行っており、年間10万件から11万件程度の事件について、弁護士費用等を援助しています。

 しかし、我が国の民事法律扶助制度は、利用者が財産的利益を得たか否かに関係なく、原則として援助を受けた費用の全額を償還する「立替・償還制」となっており、利用しづらいものとなっています。特に現在、民事法律扶助が利用される事件類型は、離婚や養育費請求等の家事事件、生活困窮に伴う債務整理や自己破産等、利用者の生活を維持するために不可欠なものが約8割を占めています。利用者が民事法律扶助を利用して法的問題を解決できたとしても、償還の負担が利用者の家計を圧迫し、生活の立て直しを遅らせ、新たな困難を招くような事態が生じており、さらにはその負担を慮って民事法律扶助の利用を差し控えたり、諦めたりすることも少なくないと指摘されています。諸外国では、法律扶助の予算規模が我が国よりはるかに大きく、かつ、原則として公的資金による「給付制」となっています。我が国の民事法律扶助についても、利用者負担のあり方を見直し、立替・償還制ではなく原則給付制とし、資力が一定程度を超えている利用者のみ負担能力に応じて負担する(応能負担)など、利用者負担の軽減を図ることが必要です。

 また、現在の民事法律扶助は裁判になりうるような民事紛争案件のみが対象となっていますが、それ以外にも、子どもや高齢者・障がい者、在留資格を有しない外国人、犯罪被害者など、いわゆる社会的弱者とよばれる人たちの権利擁護のために弁護士の早期支援が必要な事案が少なくありません。これらの事案については現在、日本弁護士連合会が費用を負担して法的支援を行っていますが、これらの事案に対する法的支援は本来、国費・公費で賄われるべきであって、民事法律扶助の対象事件の範囲拡大が求められます。

 そして、司法におけるセーフティネットである民事法律扶助制度が持続的に発展していくためには、その担い手としての契約弁護士(日本司法支援センターと民事法律扶助契約をしている弁護士)の確保が必要となります。ところが、財政基盤が脆弱であったために弁護士報酬が低廉に抑えられてきた扶助協会時代の扶助制度が継承されてきたという経緯もあって、民事法律扶助における弁護士報酬は一般的な弁護士報酬の額より相当程度低廉なものとなっています。また、法的紛争が複雑になっている中で、さらに業務量や労力に見合わなくなっているという実情もあります。多くの弁護士が、民事法律扶助の社会的意義に鑑みてそれを支えようと努力していますが、このままでは弁護士が民事法律扶助の担い手としての活動を続けることが困難となりかねない、という懸念があることも率直に指摘せざるをえません。

 以上のことから、当会は、国に対し、全ての人が司法にアクセスできるように、民事法律扶助における利用者負担の見直し、民事法律扶助の対象事件の拡大及び持続可能な制度のためにその担い手たる弁護士の報酬の適正化を求めます。

全ての人が司法にアクセスできるように民事法律扶助の改善を求める会長声明(PDF)

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