会長声明・意見書

「商業登記規則等の一部を改正する省令」による代表取締役等の住所非表示措置 に関し、弁護士による職務上請求制度の創設を求める会長声明

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更新日:2024年08月14日

2024年(令和6年)8月14日
第二東京弁護士会会長 日下部 真治
24(声)第5号

 2024年(令和6年)4月16日に商業登記規則等の一部を改正する省令(令和6年法務省令第28号、以下、「本件省令」という。)が公布され、同年10月1日から施行されることが予定されている。本件省令は、一定の要件を満たした場合には、株式会社の代表取締役、代表執行役又は代表清算人(以下「代表取締役等」という。)の住所の一部について、申出により、登記事項証明書や登記事項要約書、登記情報提供サービスに表示しないこととする措置(以下「住所非表示措置」という。)を定めている。
 当会は、住所非表示措置の趣旨に反対するものではないが、それに加えて、弁護士が職務上必要な場合、代表取締役等の住所を迅速に特定できるための措置がなされることが不可欠であると考える。
 すなわち、詐欺的商法の被害者救済の実務において、訴訟をはじめとする法的措置を執るためには、加害業者の代表取締役等を迅速に特定する必要がある。かかる代表取締役等の特定については、現在、加害業者の全部事項証明書又は登記情報の取得により迅速性が担保されているところ、住所非表示措置の下では、代表取締役等の住所を速やかに特定することは困難となり、訴訟提起等の法的措置が著しく制限される。このように、住所非表示措置の下においては、代表取締役等の住所の特定を可能とする措置が別途執られない限り、消費者被害の救済活動に顕著な悪影響が生じ、国民の利益に反する事態となる。
 この点、戸籍謄本等又は住民票の写し等については、職務上請求の制度(戸籍法10条の2及び住民台帳基本法第12条の3)が存在しており、弁護士は、戸籍の記載事項等を利用する正当な理由を明らかにすることで、戸籍謄本等を取得できるが、他方、同制度を用いて取得した戸籍謄本等を悪用した場合は、懲戒処分の対象となる。このように、職務上請求の制度は、悪用に対する制裁によって情報取得の必要性とのバランスが図られており、実務上も確立したものとなっている。そして、このような職務上請求の制度は、住所非表示措置の下で弁護士が職務上代表取締役等の住所を特定する必要が生じる場合においても合理的である。
 そこで、当会は、弁護士が職務上必要な場合に代表取締役等の住所を迅速に特定できるようにするため、本件省令による住所非表示措置に加えて、戸籍謄本等又は住民票の写し等についての職務上請求の制度に倣って、代表取締役等の住所についての弁護士による職務上請求の制度を創設することを求める。

以上

「商業登記規則等の一部を改正する省令」による代表取締役等の住所非表示措置に関し、弁護士による職務上請求制度の創設を求める会長声明(PDF)

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