死刑執行に抗議する会長声明
2025年(令和7年)6月27日
第二東京弁護士会会長 福島 正義
25(声)第4号
本日、東京拘置所で確定死刑囚1名に対し、死刑が執行された。我が国における死刑執行は、2022年7月26日以来であり、石破内閣において、2024年11月に就任した鈴木馨祐法務大臣の下で初めての執行となる。
当会は、2021年3月22日の臨時総会で、死刑制度の問題点として、誤判の可能性を排除できないこと、死刑による犯罪の抑止効果が証明されていないこと、我が国の刑事司法制度の実体・手続両面に問題があること等を指摘し、「死刑制度を廃止すること」及び「死刑制度の廃止までの間、死刑の執行を停止するための所要の措置を講ずること」を求める旨を決議した。
2024年9月には静岡地裁において、確定死刑囚であった袴田巌さんに対し、再審無罪判決が言い渡されている。人間が裁く手続である以上、刑事手続において誤判の可能性をゼロにすることは困難であり、誤判により死刑が執行された場合の被害は回復できず、生命の尊厳そのものが侵害されることとなる。
また、死刑に他の刑罰を上回る犯罪抑止効果があるかについては、いまだ決着がついておらず、死刑の犯罪抑止効果に否定的な結論を示すデータや研究結果も多く存在している。死刑に特別な犯罪抑止効果があると科学的に証明されていない以上、抑止効果を死刑制度維持の理由とすることはできない。
上記2021年の決議で指摘した問題点は、現在においてもいまだ変わっていないのである。
さらに、日本は、国連の自由権規約委員会・拷問禁止委員会による勧告のほか、人権理事会の普遍的定期的審査においても、死刑執行を停止し、死刑廃止を前向きに検討するべきである等との勧告を繰り返し受けている。2024年12月の国連総会では、死刑廃止を視野に入れた死刑執行停止を求める決議案が、加盟国の3分の2を超える賛成130か国で可決されている。このような死刑廃止に向けた国際的潮流も無視し続けるべきではない。
前述した2021年の当会の決議は、「私たちが目指すべきは、たとえ極めて重大な罪を犯した人であっても、将来の更生の道を完全に閉ざしてしまうのではなく、たとえ僅かであっても更生の可能性を信じ、本人の回復に向けた援助を提供し、ともに人間としての尊厳をもって生きることのできる社会である。」とした上で、「極めて重大な罪を犯した人には、厳正なる刑罰が必要であるが、そのような罪を犯した人に死刑をもって臨むことは、私たちが目指す社会の在り方と相いれない」としている。極めて重大な罪を犯した加害者に対して、報復などを目的とする死刑執行という究極的な手段を採ることなく、厳正なる刑罰に処し、同時に、被害者及び被害者遺族を十分に支援することが、本来の社会の在り方である。
以上の理由から、改めて当会は、今回の死刑執行に対して強く抗議をするとともに、速やかに死刑制度の廃止に向けた立法措置を講じ、死刑制度が廃止されるまでの間、死刑執行を停止するよう、重ねて政府及び国会に対して求める。
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