会長声明・意見書

防災の日を迎えての会長談話

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更新日:2025年09月01日

2025年(令和7年)9月1日
第二東京弁護士会 会長 福島 正義

 防災の日は、関東大震災が1923年9月1日に発生したことを受けて、毎年9月1日とされ、この日を含む1週間が防災週間とされています。防災の日及び防災週間は、広く国民が、台風、豪雨、豪雪、洪水、高潮、高波、竜巻、暴風、崖崩れ、土石流、地すべり、地震、津波、火山噴火等による災害についての認識を深めるとともに、これに対する備えを充実強化することにより、災害の未然防止と被害の軽減に資するために設けられているものです。
 災害が発生した場合、弁護士会及び弁護士は被災者支援に取り組みます。被災者支援の本質は被災者の人権を擁護することにあり、被災者支援は当然に弁護士会及び弁護士の使命であるからです。また、災害発生時には、福祉的支援を必要とする方などの立場の弱い方に特に大きな負担や困難が生じます。発災直後において、避難所での生活にあたってプライバシーを守ること、避難生活における性被害を防止すること、ご高齢者や身体に不自由を抱える方へ適切な避難環境を確保すること、帰宅難民や旅行者など定住地以外で被災した場合の情報を提供することなどはもとより、その後の長期にわたる生活再建や事業再建、復旧及び復興の過程においても、すべての方の人権を守ることを念頭におく必要があります。
 このような災害発生時に備えて、当会には、業務継続計画(BCP)に基づき当会の業務を継続することのできる体制を整えることだけでなく、行政及び各種民間支援団体と連携して被災した方々を支援するために平時からその連携関係を強化することが特に求められています。当会は、東京弁護士会、第一東京弁護士会とともに、2004年の災害復興まちづくり支援機構の設立時から正会員として、20年以上にわたり、専門家団体及び研究者の皆さまとともに、専門家団体間の連携を深めてきました。そして、災害復興まちづくり支援機構は、東京都との間で2007年に復興まちづくりの支援に関する協定を締結し、平時から継続的に、大規模災害発生時の当支援機構における活動や専門家組織間の連携のイメージについて、行政を交えて具体的に共有し、さらには、令和6年能登半島地震及び令和6年奥能登豪雨による各災害の被災地域現地においても相談支援活動を継続的に展開するなどしており、当会としても引き続きその運営に参画していきます。
 また、近年では、行政及び弁護士をはじめとする専門的な能力をもつ関係者が連携して、被災者一人一人に寄り添い、その個別の被災状況・生活状況等を把握し、それに合わせて様々な支援策を組み合わせた計画を立てて継続的な再建支援を行う手法として、災害ケースマネジメントが広まっています。さらに、本年5月には、被災者に対する福祉的支援の充実等を内容とする改正災害対策基本法・改正災害救助法が成立し、本年7月1日から施行されています。当会は、アウトリーチにより被災者の生活状況や被災状況と支援ニーズを十分に把握すること、そして、様々な支援施策を組み合わせきめ細やかに対応して被災者の生活再建を支援することを内容として、誰一人取り残さない被災者支援活動を実現するため、災害ケースマネジメントに適時かつ的確に参画することのできる体制の整備や、行政並びに他の専門家団体及び民間支援団体との連携とその強化に引き続き全力を尽くしていきます。
 近時は、南海トラフ地震臨時情報が出されるなど、大規模災害発生のリスクが顕在化しており、とりわけ、東京都下・首都圏においては、首都直下地震も想定した対策が必要です。弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命としています。日本弁護士連合会においても、災害復興とは「人間の復興」であると位置付け、被災した一人一人の人権の回復と個人の尊厳保持の重要性を復興施策に反映させる方針をとっています。
 当会は、東京に立地する弁護士会として、東京都内はもとより都外において災害が発生した場合にも備え、平常時から総合的かつ継続的な災害対策を協議し、また、東京都外において災害が発生した場合における被災地に所在する弁護士会を支援し、もって、被災地域の市民の人権を擁護することを目的として、第二東京弁護士会災害対策委員会を中心に、相談支援のほか、災害時ADRの運営による紛争解決支援や、被災ローン減免制度(自然災害による被災者の債務整理に関するガイドラインによる債務整理)への関与を通じた支援、その他の支援活動を行うべく、また同時に、東京都下の自治体との災害協定の締結も着実に進めながら、体制の整備と充実に継続的に取り組んでいます。
 防災の日を迎えて、私たちは、被災者支援が重要な本来的業務であることを改めて確認し、「誰一人取り残さない」という理念のもと、被災者支援・復興支援のための活動に全力を尽くします。

防災の日を迎えての会長談話(PDF)