会長声明・意見書

「誰一人取り残さない」SDGsから10年を迎えての会長談話

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更新日:2025年09月25日

2025年(令和7年)9月25日
第二東京弁護士会 会長 福島 正義

 2015年9月25日に、国際連合において「持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)」(以下「SDGs」といいます。)が採択されてから本年で10年の節目を迎えました。SDGsは、 2015年9月の国連サミットで加盟国の全会一致で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標です。17のゴール及び169のターゲットから構成されており、地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことを宣言しています。

 しかしながら、国外においては、ウクライナ情勢やイスラエルの侵攻など世界各地で武力紛争が勃発し、核兵器使用の危険性が依然として高い状況にあり、レイシズム(差別主義)や排他主義が高まりをみせ、対立と分断が深まっております。難民問題、経済格差や地球沸騰化ともいわれる気候危機等も深刻化しています。
 国内に目を向けると、子どもや若者の貧困や孤立、ジェンダー不平等、廃棄物の処理を始めとする環境問題、そして地震や大雨等の大規模災害など、解決を迫られる課題が山積しています。日本は本年6月12日に発表された「ジェンダーギャップ指数」において148か国中118位と依然として極めて低位にあり、政治・経済分野を中心として男女間の格差が顕著に残されており、憂慮すべき状況が続いています。

 弁護士、そして弁護士会の活動もSDGsと無縁ではありません。当会は、「誰一人取り残さない」との考えの下、これらの課題に取り組み続けています。他団体と連携しながら社会的課題の現場に直接足を運び、支援を必要とする人々の声を的確に把握する「アウトリーチ型」の活動を重視し、学校、地域、被災地、刑事施設等において、法的支援の提供に努めています。とりわけ、女性が安心してアドバイスを得られる環境を確保するため、「女性による女性のための法律相談」を民間団体と共催するなど、女性が直面する深刻な問題に親身に寄り添う支援を継続しています。また、2022年10月より、罪に問われた人をサポートし、社会復帰・再犯防止のため、裁判後、受刑中又は出所後を問わず、様々な支援を行う「よりそい弁護士制度」を開始したり、法教育の分野においては、若手弁護士を中心に小中高等学校等の教育機関に出張して、いじめの対策なども含めた様々な授業を提供したりするなどの活動をしています。
 SDGs は、様々な課題が1つ1つ独立しているのではなく、相互に連関していることを本質としており、自国だけでの解決では足りず、多国間での協働が必要であることを訴えています。分断、対立、排斥する様相を濃くする現代社会の中で、様々な関係当事者の多様な意見に対して粘り強く対話を続けていくことこそが大事であり、そこでの対話は自己主張のぶつけ合いや、単なる手続として形式的に行われるものではなく、障害者差別解消法の理念でもある相手の立場、意見を尊重し、根気強く解決策を模索する建設的対話が重要であると思います。
 戦後80年を迎え、そしてSDGsの目標達成期限が5年後に迫る今、私たちは、改めて、SDGsの理念に立ち返り、平和、基本的人権の尊重、ジェンダー平等、環境保全及び災害対策などを基盤とした持続可能で公正な社会の実現に向け不断の努力を重ね続けます。

「誰一人取り残さない」SDGsから10年を迎えての会長談話(PDF)