イベントレポート

ジュニアロースクール・イベントレポート(2018)

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更新日:2018年09月07日

1 はじめに

法教育の普及・推進に関する委員会(法教育委員会)は、平成30年8月8日、弁護士会館において「夏季ジュニアロースクール2018」を開催いたしました。
ジュニアロースクールは、法教育委員会が普段行っている出前授業と同様、子ども達に法的なものの見方・考え方を身につけてもらうことを目的として、毎年実施しているアクティブ・ラーニング型の授業です。
夏季ジュニアロースクールは中学生と小学生を対象としております。中学生対象のジュニアロースクールは、今年で8回目の開催となり、小学生を対象としたジュニアロースクールは、今年で2回目となります。
今年は、小学生、中学生ともに事実認定を題材に論理的な思考方法を学ぶことを大きな目的として開催をしました。

2 小学生の部について

小学生の部は、「うさぎを逃がしちゃったのはリョウ?」という教材を通じて、論理的なものの考え方を学んでもらうということをテーマにしました。教材の設定は、小学校でうさぎを飼っていたところ、ある日の夕方うさぎがいなくなってしまい、うさぎがいなくなった時間帯にリョウ君がうさぎ小屋の近くにいたことからリョウ君がうさぎを逃がしたのではないかと思われている、というものです。
小学生には、事案の概要を漫画を用いて説明したうえで、まず、どのような事実が分かればリョウ君がうさぎを逃がしたかどうかを判断できるか考えてもらい、実際にリョウ君役の弁護士に質問をしてもらいました。そのうえで、質問を通じて分かった事実をもとに、リョウ君がうさぎを逃がしたと言えるかについて考えて、各生徒に結論を出してもらいました。
この授業の目的は、事実認定をするためには、前提となる事実を把握することが重要であることを学び、また、事実に基づいて結論を出す際に理由付けをしっかりするということを意識することで、論理的なものの考え方を学んでもらう点にあります。参加してくれた子ども達は、同じ班になった子供たちと和気あいあいと意見交換をしながら、事実から結論を出す際にしっかりした理由付けをしてくれており、論理的なものの考え方の大事さを実感してくれたようでした。
授業終了後は、一緒に授業を受けた子供たちとともに、弁護士も加わり一緒に昼食を取りました。子ども同士や私たち弁護士との会話も弾み、とても楽しい時間となりました。
授業を通じて、論理的なものの考え方を学んでもらうと同時に、色々な人と交流する楽しさも感じてもらえた授業になったと思います。

3 中学生の部について

(1) 模擬裁判に臨むにあたっての準備

中学生の部では、刑事模擬裁判をテーマに論理的なものの考え方を学びました。
はじめに、刑事裁判の原則である「無罪推定の原則」、「証拠裁判主義」を勉強しました。もしこれらの原則がなかった場合には裁判手続はどうなってしまうのかを実感してもらうため、悪い見本の模擬裁判を、弁護士が実演し、刑事裁判における諸原則の重要性を理解してもらいました。
次に、簡易な刑事事件の事案を用いて、論理的なものの考え方の練習を行いました。事案説明と証拠、またこれから導かれる事実を並べ、直感的に犯人だと思う人物を尋ねました。そして、なぜそのような結論に至ったのか、その思考過程を一つ一つ紐解き、論理的なものの考え方の具体的な流れをビジュアル化した上で説明しました。

(2) 尋問事項の検討

判決が確定するまで無罪が推定されること(無罪推定の原則)、判決を出すに当たっては証拠を用いなければならないこと(証拠裁判主義)を頭に入れ、証拠を用いた判断方法の練習も行った上で、いよいよ模擬裁判に臨んでもらいました。
今回の事案は、とある女性が夫の母を階段から突き落としたとして起訴されたというものでした。被告人は犯行を否認しているところ、「被告人が突き落としたのを見た」という検察側証人と、「被告人は階段で足を滑らせた被害者を助けようとしていた」という弁護人側証人が存在したため、それぞれの証言の信用性が主要な争点となっていました。
生徒たちには、検察官チーム、弁護人チームに分かれ、それぞれの立場で裁判に臨んでもらいました。
まず、弁護士らが実演して、冒頭手続、主尋問、被告人質問を行いました。生徒たちには、証言内容等について各自でメモを取ってもらいました。
続いて聞き取ったメモをもとに、反対尋問でどういったことを質問していくか、チームで検討しました。主尋問の中で気になった事柄について、付箋に書き出してホワイトボードに張り付けて、どうしてそのことを聞く必要があるのか、聞くことでわかる事実は証人の信用性にどのような影響があるのかといったことを議論していきました(写真参照)。
生徒たちの気づきに弁護士も思わずうなる場面もありました。

(3) いざ反対尋問

尋問事項が決まった後は、弁護士と一緒に昼食を取りました。生徒の中には、将来弁護士になることを目指している子もいたようで、日頃話す機会の少ない弁護士に対し、いろんなことを質問していました。
昼食を済ませ、いよいよ反対尋問を行いました。
お互いの検討結果をもとに、実際の弁護人、検察官になりきって質問してもらいました。裁判の雰囲気に緊張をしている様子も見られましたが、両チームともに、鋭い質問を証人に投げかけていました。

(4) 最後の意見陳述

尋問の結果わかった事実を踏まえ、双方の立場から最終的な意見陳述として論告・弁論を検討してもらいました。自分の側の証人がなぜ信用できるのか、他方で相手側の証人がなぜ信用できないのか、客観証拠から、また証言から、一つ一つ積み上げて結論を考えてもらいました。
生徒たちも、判明した事実を積み重ねて論理的に考えるということに、難しさと同時に楽しさを感じていたようです。
この模擬裁判を通して、日本の裁判制度を学ぶとともに、論理的なものの考え方、またその重要性についても体感してもらえたかと思います。

4 最後に

今回、参加した子ども達が、ジュニアロースクールで体験した法的なものの見方や考え方を今後の生活に役立て、将来、自由で公正な民主主義の担い手をとなってくれることを法教育委員会は願っています。

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