イベントレポート

法教育イベントレポート(立教女学院)

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更新日:2021年08月06日

法教育委員会では、6月24日と29日の2日間にわたって、立教女学院高等学校の2年生に「子どもの貧困」というテーマについて具体的な事例をもとに対策を考えるという出張授業を実施しました。

1日目は、特定非営利活動法人Learning for All作成の『二人の高校生』という動画を観た上で、絶対的貧困・相対的貧困という概念や(日本の子どもの7人に1人が相対的貧困状態にあるといわれています)、他国と比較して日本の子どもの相対的貧困率は決して低くなく、特にひとり親家庭の貧困率は極めて高い状況にあること、子どもの貧困は連鎖する(貧困の再生産)という問題があること、貧困は意外に身近なものであるということなどについて講義をしました。

この講義を踏まえ、2日目は、生活保護も受けられず、治療費や子どもの部活動費用が出せないひとり親のケース、両親の病気により子どもがヤングケアラーとなりアルバイトで学業に支障を来しているケース、養育費も受け取れず、大変な努力をして勉学に励んでも奨学金など多額の借金を背負い、望まない仕事に従事せざるを得ないケースのほか、養育力のない親の下で自己肯定感を育まれることなく成長した子どものケースを通じて、経済的な貧困だけでなく、関係性の貧困についても、グループに分かれて検討、議論し、対策を考えました。1年生のときに一般社団法人フードバンク八王子やNPO法人八王子つばめ塾の活動について学んでいたということもあり、単に金銭の給付をすれば良いなどという対策ではなく、身近なところから導き出された現実的なものから斬新なものまで、いろいろな対策が発表されました。例えば、既存の政策・制度に関する情報や知識すらないことが問題であるとして学校の授業で取り上げたり保護者への連絡事項に盛り込む、中学校、高等学校でも家庭訪問を行う、学童保育だけでなく中学生、高校生の居場所となるような夜まで利用できる施設を作る、家事代行のボランティアを組織的に行う、制服や学校で使用するものなどをバザー等で提供してリユースできるようにする、スーパーマーケットや飲食店での売れ残りや廃棄予定食材の情報をアプリで共有する(フードロスも減らせる)、労働条件が適正なアルバイトだけを紹介する高校生等向けのハローワークを作る、大学生版生活保護制度を作る、などです。

「子どもの貧困」の問題は複合的な要因も多く、多面的な対策が必要であるため、今回は敢えて特定の対策について検討するのではなく、立法の第一歩として、さまざまな観点から対策を検討してもらいましたが、生徒の皆さんはその趣旨をよく理解し、事例の登場人物の生活を具体的に考え、事例では明らかにされていない状況についても想像をし、その原因を考え、自分たちの身近な問題として、経済的支援だけではなく精神的・対人関係面での支援も含めて幅広く検討をしていました。発表も、問題解決への切り口を整理した上で、原因、対策ととてもクリアにまとめられており、携わった弁護士にとっても大変有意義な出張授業でした。

なお、冒頭に紹介した動画は、二人の高校生のある放課後を同時並行的に追っていくという短編ですが、「相対的貧困」が周囲から極めて見えづらいものであることや、貧困を言えない、隠さざるを得ない状況におかれている子どもたちの我慢やあきらめ、つらさが、淡々と描かれる日常から浮かび上がり,胸が締め付けられる秀作です。YouTubeで公開されていますのでぜひご覧ください。

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