イベントレポート

法教育イベントレポート(さいたま上大久保)

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更新日:2021年08月06日
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法教育委員会の委員が、7月8日にさいたま市立上大久保中学校で出張授業を実施いたしました。今回は埼玉弁護士会法教育委員会の委員にも参加していただき、総勢19名で、2年生の5つのクラスそれぞれで異なる授業(模擬調停、ルール作り、模擬立法(少年犯罪と報道規制/成年年齢引き下げ)、模擬裁判)を実施しました。

模擬調停では、ルールを破って学校にもってきた高価なバイオリンが、生徒同士の衝突で壊れてしまったという事故を題材に、調停委員役、当事者役(①壊れたバイオリンの所有者である生徒、②バイオリンを運んでいた生徒、③廊下を走ってきた生徒)に分かれて民事調停を体験してもらいました。調停委員役はどのように調停を進めればよいのか、当事者役はどのように自分たちの主張を伝え、他の人の意見をきいてどこまで歩み寄るのか等頭を悩ませながら、役になりきって活発に別席・同席の調停を進めていました。結果は、6班中2班で調停成立ということになりましたが、成立には至らなかった班も、事実や争点を的確におさえて、調停成立の可能性を探りながら、それぞれの負担金額を少しずつ変えたいくつもの調停案を出しながら進めていました。授業の最後には、弁護士についての質問も活発になされ、弁護士の仕事にも興味をもってもらえたようでした。

ルール作りでは、身近なトラブルの事例から適切な解決策の探り方を学ぶことを目的として、法教育委員会で作成した事例(学校内におけるうさぎ小屋の掃除当番のルールを巡るトラブル)の解決策について考えてもらいました。最初に、このルールを守っている生徒と守らない生徒の役柄を各生徒に割り振り、各役柄の言い分を聞いた上で、周りの生徒はその言い分に賛成できるかどうか、その理由と共に考えるというグループワークをしました。その後、各役柄の言い分を踏まえて、解決策について各グループで議論しました。生徒たちは、まずは、ルールを守らせる方が良い場合、ルールを守れなくても仕方ないと思える場合(アレルギーがあるなど)に、悩みながらも、線引きを行い、さらに、ルールを守れない場合にどのような対応をすべきか(担当人数を増やす、できる作業を割り当てるなど)、各グループで活発に議論を行い、結論を導いていました。様々な立場から物事を見て、公平で実現可能性のあるルールを作ることや、作ったルールを守ることの大切さ、社会におけるルールの重要性を実感してもらえたようです。

模擬立法(少年犯罪と報道規制)では、検討の前提として、表現の自由の重要性や知る権利について説明するとともに、少年事件の原因等についても解説を加えたうえで、少年法の理念である少年の成長発達と、知る権利に奉仕する報道の自由(犯罪報道)とが対立していることを念頭に置きながら、少年犯罪に関する報道規制のあり方を考えてもらいました。5~6名のグループに分かれて、報道を規制する理由、どのような報道を規制すべきか、規制を守らない場合のペナルティーは必要か、必要だとしたらどのようなペナルティーか、報道規制の例外は必要かなどを検討してもらいました。各班とも活発に議論がなされ、各々の班で検討した報道規制のあり方を発表してもらいました。たとえば、例外事由については、殺人などの重大犯罪の場合を例外とする班がある一方で、重大犯罪だからといって、少年の氏名を知らせる必要はないとの意見の班もあり、それぞれ違った考え方が示されました。

模擬立法(成年年齢引き下げ)では、三権分立や立法についての基本的な説明をした後、法教育channel 二弁を視聴していただき、「大人って?」というアイスブレイクを挟んで年齢によって制限等がなされていることは何があるかを考えていただいた上で、1人で契約できる年齢(民法上の成年年齢)は何歳とするのが良いかというグループワークをしました。18歳という意見、20歳のままで良いとする意見、22歳やそれ以上という意見もあり、それぞれ根拠として成熟度や必要性の有無などが挙げられていました。中学2年生ですので、自らが成年となることを具体的にイメージすることはまだ難しいかもしれないと思われましたが、自己決定権や自己責任にも考えを巡らした意見も出るなどしました。

模擬裁判(評議)では、強盗致傷被告事件のDVDを視聴した上で、クラスを6班に分け、班ごとに、有罪・無罪、そしてその理由を検討・発表してもらいました。どの班も、証人たちの証言の信用性や動機についてしっかり検討し、元気に発表してくれました。結果は、無罪が5班、有罪が1班でしたが、無罪班もそれぞれ着目点が異なり、他の班の発表を聞くことも勉強になったと思います。最後に、「本当は有罪と無罪、どっちだったんですか。」という質問が出て、弁護士全員からそれぞれ実務家としての意見を伝え、授業が終わりました。生徒さんの「楽しかった。」という声、嬉しかったです。

学校からは、事前に、弁護士を身近に感じることがないというお話しもありましたが、今回の授業を通じて、その点も払拭できたものと思います。

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