イベントレポート

「出張授業(小金井北高校)」イベントレポート

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更新日:2021年10月07日

法教育委員会の委員が、9月22日、都立小金井北高校で1年生に対して出張授業を実施しました。地域教育推進ネットワーク東京都協議会の行っている「都立高校生の社会的・職業的自立支援教育プログラム事業」の一環としての出張授業で、今回で3回目となります。
今回のテーマは「少年事件と報道規制」で、少年の成長発達権と知る権利とのバランスについて考えていただくというものでした。少年法の理念は、保護主義等の文脈では少年を保護すべき弱い立場の者と位置付け、少年は守られる客体として扱われますが、この授業では少年を権利の主体として捉え直し、少年には健全に成長発達する権利があるとし、その権利と国民の知る権利(報道規制)とのバランスを考えていただくということをしています。

グループワークでは、①少年事件についてどのような情報の公表を規制すべきか、一切規制すべきではないか、②規制すべき主体(新聞その他の出版物/テレビ報道/ネット記事/一般人によるネット発信)、③ペナルティは必要か、④例外を認める必要はあるか、について検討をしていただきました。緊急事態宣言下でもあり、新型コロナウイルス感染症の拡大予防措置をとった上での授業でしたが、活発なディスカッションがなされました。
規制対象情報については、現行法(少年法61条「氏名、年齢、職業、住居、容ぼう等によりその者が当該事件の本人であることを推知することができるような記事又は写真」)を変える必要がないという意見も多かったのですが、同姓同名ということもあるし顔写真では個人を同定できないという理由で氏名、顔写真については規制をしなくとも良いという意見もありました。規制の対象(主体)については、列挙された4つ全てという意見もありましたが、「忘れられる権利」を念頭に、インターネット上にアップされると半永久的に残ってしまうということを考え、インターネット関連についての規制を重要視する意見もありました。ペナルティについても、発信媒体(規制の対象)に応じていろいろな意見が出ましたが、概して知る権利の保障を重視する意見が多く、そもそもペナルティの実効性や実行性があるのかという考察もなされていました。さらに、法人が規制対象となった場合にどのようにペナルティを科すのか(記事を書いた人なのか、決裁をした人なのか、或いは代表取締役なのか)という突っ込んだ検討もなされていました。例外については、重大事件で被疑者の身柄が確保されていないような場合などが挙げられていました。

例年、いろいろな意見が出て活発な議論がなされていますが、今年もいつも以上に生徒の皆さんのしっかりとした意見を聴くことができ、弁護士にとっても刺激的な時間となりました。少年法の改正や成年年齢の引き下げなど、関連することで伝えたいことはたくさんあり、時間的な制約の中で断片的にならないような授業とすることが弁護士らの宿題として残りました。

【参考】こどもの権利条約全文(日本語訳)ユニセフ

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