イベントレポート

模擬裁判の実演指導(海城中学高等学校文化祭)

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更新日:2021年12月02日

 法教育委員会では、令和3年10月21日と30日の2日間にわたって、海城中学高等学校を訪問し、第130回海城祭の高校生企画「模擬裁判」の実演等の指導をしました。教材として、強盗殺人事件「家政夫は見たか」を提供しました。

令和3年10月21日(事前指導)

 模擬裁判への出演希望の生徒(高校2年生)8名と顔合わせをし、手続台本を元に、刑事裁判手続について説明をしました。会場を下見して簡単なリハーサル等を行った後、検察官チーム、弁護人チーム、裁判官チームに分かれて、文化祭当日までに行うべき準備の内容、当日の尋問での異議の出し方や対応方法などをアドバイスしました。この日の午前中に中間テストを終えたばかりとのことでしたが、どの生徒も疲れを見せず、真剣に説明を聞き、活発に質問がよせられました。
緊急事態宣言が明けて海城祭の日程や開催方法が急遽変更となった中での企画であり、本番までの時間は1週間しかありません。それでも、台本どおりに劇をするのではなく、チームで工夫して尋問事項を追加したいとの申し出がなされるなど、生徒たちの熱意や意欲を嬉しく思いました。

令和3年10月30日(文化祭当日)

 本番の前、控室で、チームごとに簡単な打ち合わせをしました。裁判官役の3名は法服を身につけ、検察官役、弁護人役の生徒たちもバッジを付け、被告人役はそれらしい扮装で会場に移動しました。会場は、竣工間もない理科館の階段教室で、「こけら落とし」となりました。
 生徒と家族以外の方は入場できない状況での海城祭でしたが、開始時刻の時点で既に階段教室の座席は満席で、多くの方が立ち見をされ、観客向けに用意した配布資料も大幅に不足するなど、この企画の人気ぶりがうかがえました。
 模擬裁判は被告人役の生徒が入廷するところから始まり、その後、実際の刑事手続きの流れを忠実に再現する形で、法曹三者を担当する生徒たちが実演しました。観客の方々も、それぞれの発言に真剣に耳を傾け、実演はスムーズに進行していきました。
 証人役は海城中学高等学校の先生方2名にご担当いただいたのですが、迫真の演技に会場から笑いが出る場面もあり、また、生徒たちの異議の応酬やアドリブの効いた反対尋問等もよく考えられていて、全体を通して見所が満載でした。被告人役の生徒は、尋問内容を全て暗記した上で実演しており、その点にも驚かされました。
 証人尋問、被告人質問が終わった後、検察官チーム、弁護人チームが、それぞれ自分たちで考えた論告、弁論を発表し、裁判官チームが評議をした上で判決(有罪)及びその理由を述べました。教材を作成した私たちも想定しなかった鋭い視点が見られ、感服させられました。
なお、裁判官が別室で評議をしている間、会場で傍聴していた方々に弁護士が簡単にポイントの解説をし、有罪・無罪のどちらの心証に至ったか挙手を求めたところ、有罪:無罪=1:3という結果になりましたので、一方に偏り過ぎないという意味で結果的にもいい内容であったと思います。
 1時間以上に及ぶ法廷劇でしたが、生徒たちは、観客を飽きさせることなく最後まで見事に演じきりました。実演後、検察官チームは有罪判決に大喜びし、弁護人チームは非常に悔しがっていました。観客の方々も、実演の生徒たちと、あるいは観客同士で、「あれは有罪だ」、「いや、無罪だ」などと感想を言い合っていました。
 参加生徒たちのアンケートでは、「もう少し準備期間が欲しかった」という意見はありましたが、この企画自体は「評判がよかった」、「すごく勉強になったので他の人にもやってみて欲しい」、「刑事裁判の手続きの流れを知れるいい機会になった」など多数の肯定的な意見が寄せられました。この企画は実演した生徒にとって有意義だっただけでなく、海城祭での出し物としてもなかなか高評価だったようです。
 法教育委員会としては、海城祭での模擬裁判の実演指導は初めての試みでしたが、生徒たちの自主性・積極性が強く求められる点で、法教育をより深く身につけるよい機会であると実感しました。
 法教育委員会では、現在も新しい教材を作成しているところです。また機会があれば、今回のような企画のお手伝いができればと思います。

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