イベントレポート

サマージュニアロースクール

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更新日:2022年09月27日

法教育委員会では、8月24日に、中学生、高校生およびその学齢にある方を対象としてサマージュニアロースクールを開催いたしました。ジュニアロースクールは、法教育委員会が毎年実施しているイベントで、参加した生徒の皆さんに、論理的なものの見方、考え方を理解し、自らの考えを相手方や第三者に上手に伝えることを実践し、体験していただくことを目的としています。
今回のサマージュニアロースクールも今年の3月に実施したジュニアロースクールと同様にオンラインでの実施となりました。そのため、東京都内だけでなく、遠隔地から参加いただいた生徒さんもいました。

使用した教材は、「『学校仮面』〜怪盗来りて旗を盗る〜」という、今年の3月にできたばかりの新作です。
舞台は東京のとある村。そこでは、学校仮面による校旗の窃盗事件が世間を騒がせていました。遂に学校仮面が捕まることになるのですが、捕まった人物はなんと学校仮面を追いかけていた探偵でした。果たしてこの探偵は本当に学校仮面なのでしょうか。生徒の皆さんには、裁判官の立場に立っていただき、(被告人である)探偵が犯人か否か、業界用語的には「犯人性」を検討してもらう教材です。

当日は、午前中に、希望する生徒さんに対して事実認定についての考え方の講義を行い、午後から『学校仮面』の事例を検討しました。

事実認定の講義は、弁護士や裁判官、検察官が、証拠等からどのようにものごとを考え、事実を認定していくのか、そのプロセスを学ぶものです。当初は高校生を対象とすることを考えておりましたが、中学生の参加も多く、最終的には43名も参加していただき、講義内容についても大変好評でした。

午後、最初に全体で開会式を行い、今回の教材の動画を視聴しました。動画では刑事裁判の原則(無罪推定の原則、証拠裁判主義)について学び、続いて、今回の事件の証拠関係、学校仮面を目撃した証人の尋問を確認しました。
目撃者の証人尋問まで見たところで、一度、事案の整理をしました。中学生と高校生とに分かれ、それぞれ4〜5人×18個のチームとなり、各チームに弁護士や法科大学院生、学生インターンも参加し、一緒に事案の整理や証拠等の検討を行いました。

最初のうちは、生徒の皆さんも緊張している様子でしたが、意見を交わすうちに次第に活発になり、それぞれ自分の考えを持ってしっかりと発言していました。各チームである程度事案を整理できたところで、後半の証人尋問と被告人質問を視聴しました。

証人尋問や被告人質問の直後には、生徒の皆さんから、「証人が怪しい」、「被告人が怪しい」という声も聞こえてきました。しかし、印象だけで議論をしてはいけないということを確認したところ、刑事裁判の原則に立ち戻り、証拠関係にも目を配りながら議論が繰り広げられるようになりました。一見するとアリバイが成立しそうな場面でも、「〇〇という可能性はないか」、「〇〇と考えることもできる」など、柔軟な発想で多角的な視点で検討していて、感心させられることも多くありました。
短い時間の中でもしっかりと論理的な考え方(これは法律家の行う法的思考とも繋がります)を理解しようとし、それを実践する姿勢が見え、とても嬉しく思いました。

議論が煮詰まってきたところで、4~5個のチームが集まって、各チームの結論(有罪か無罪か)とその理由の発表を行いました。有罪と判断したチームもあれば無罪と判断したチームもあり、また、同じ結論でも理由が異なっていることもありました。このよう結果になったのも、各チーム様々な観点からしっかりと議論がなされた成果だと思います。

サマージュニアロースクールに参加した生徒の皆さんからは、「裁判の仕組みを勉強することができたので面白かった」、「意見の違う人の意見を聞いて、確かにそうだなと感じたりして自分の中で意見が変わっていくのが面白かった」、「有罪無罪を決めることは大変だと思った」、「感情論に走りがちな裁判かと思っていたがいかに冷静に証拠を拾ったりで意外だった」などなど、たくさんの意見をいただきました。

来年3月にもジュニアロースクールを開催する予定ですので、ご興味のある方はぜひご参加ください。

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