イベントレポート

「成年年齢の引き下げ」をテーマにした出張授業を行いました

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更新日:2023年03月24日

法教育委員会では、2月8日と22日の2日間にわたって、攻玉社高等学校の2年生に「成年年齢の引き下げ」をテーマにした出張授業を行いました。

1日目は2年生全員(約250名)に講堂に集まっていただき、まず黙想をしてから授業スタートです。
授業の導入として、法律が日常生活に身近なものであること、年齢によって規制や制限がなされていることなどについて概説した上で、「大人」とは何か、という質問をしてみました。生徒の皆さんからは、自立していること、自律できることなどというオーソドックスなものだけでなく、「大人の対応」を念頭においたと思われる回答もありました。教員の皆さんにも同じ質問を投げかけたところ、「大人の対応」でお茶を濁すようなことはされず、それぞれのお考えを率直にお話しいただけました。生徒の皆さんには真摯に受け止めてもらいたい回答でした。

その後、昨年4月から成年年齢が引き下げられたこと、成年と未成年とで法的な扱いがどのように違うのかを説明し、高校3年生に進級する4月以降、生徒の皆さんも18歳を迎えると成年になるということを紹介した上で、成年年齢を18歳のまま維持すべきか、20歳に戻すべきかという質問を投げかけました。
生徒の皆さんにはインプレッションでの回答を求めたのですが、18歳成年で構わないという自立志向の強さを感じる回答、まだまだ未熟だからという慎重な姿勢から20歳に戻すべきとの回答など、その場で即時にいろいろと考えて積極的に発言をしていただけました。また、先に出された意見とは異なる意見を述べる際に、先の意見やその根拠を具体的に引用指摘した上で自らの考えを述べる生徒もおり、2日目に予定しているグループワーク、さらにはグループ間でのディスカッションを楽しみに感じました。

1日目の授業終了時に、2日目の授業でのグループワーク等のために宿題を2つ出しました。1つは「契約を一人でできる年齢を18歳とすることに賛成ですか。反対ですか。」というもので、もう1つは「選挙権年齢について、変更すべきと考えますか。」というものです。それぞれ結論だけではなく、その理由についても考えてワークシートに書き出していただくというものでした。また、2つ目の宿題については、社会保障関係費の一般歳出に占める割合に関する資料、教育への公費支出の割合に関する国際比較の資料、国政選挙での年代別投票率の推移に関する資料、世界各国・地域の選挙権年齢・被選挙権年齢分布に関する資料などを配付し、それらも参考にしつつ、さらにインターネットなどで調べて検討をしていただくようにしました。

2日目は、各クラスで、宿題としてあった2つの問題についてグループで討論をしていただき、意見をまとめ、発表をするということをしていただきました。

宿題の1つ目、成年年齢を18歳に引き下げることに賛成か反対かという問題については、18歳では未熟であり、消費者被害に遭う危険があるから反対という意見、判断能力は十分であって、早く親から独立したいから賛成という意見の他に、18歳でも20歳でも大差はなく、早い段階から準備をしておけば18歳でも良いのであって、むしろ、海外の高校などで行われているように、学校で契約について教育をすべきという建設的な意見も出ました。

契約の取り消しができるという点については、成年として契約等を一人でできる年齢は18歳としつつ、20歳になるまでは、本人と親とが一緒に取消権を行使する場合には取り消しができるようにするという、成年としての自立性を認めつつ保護もできるようにするという折衷的な意見も出されました。

宿題の2つ目、選挙権年齢について変更すべきかという問題については、グループでの討議の結果として賛成・反対とするのではなく、ディベートのように賛成派と反対派とに分かれて、それぞれの結論を導くための根拠についてを検討していただきました。
実際に選挙権年齢の引下げが国会で検討された際の視点もヒントとして出してありましたが、民意をどのようにして国会での議論に反映させるかという観点からの検討など、弁護士が想定していた上をいく意見も出ました。

必ずしも正解のない問題について、具体的な根拠をもって、どのように説得的に結論を導き出すか、またそれをどうやって他者に伝えるかということについて考えていただくということを実践できた出張授業でした。

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