イベントレポート

イベントレポート(2022年度ジュニアロースクール(中学生以上部門))

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更新日:2023年04月21日

法教育委員会では、2023年3月29日に、中学生以上を対象としてジュニアロースクールを開催いたしました。ジュニアロースクールは、法教育委員会が毎年実施しているイベントで、参加した生徒の皆さんに、論理的なものの見方、考え方を理解し、自らの考えを相手方や第三者に上手に伝えることを実践し、体験していただくことを目的としています。

今回のジュニアロースクールも、昨年と同様にオンラインでの実施となりました。そのため、東京都内のみならず、遠隔地からもご参加いただき、合計68名もの生徒さんにご参加いただくことができました。

1. 使用教材について

使用した教材は、「『豪華客船の夜』〜道化師の推理夜会〜」という今回のジュニアロースクールのために、法教育委員会オリジナル脚本で書き下ろされた新作です。

舞台は、豪華客船で開催された謎解きイベントです。イベントで見事優勝した貴婦人は、その夜、何者かに殺されてしまいます。貴婦人の部屋からは謎解きイベントの優勝賞金である500万円がなくなっていました。そして、貴婦人の部屋には、「ピエロ」と書かれた何やら意味深なダイイングメッセージが残されており、事件直前に貴婦人の部屋の付近では、ピエロの格好をした不審な人物の目撃情報がありました。その後、イベント参加者の女性が被告人として起訴されますが、被告人は「お金は取ったが、私は殺していません。」と法廷で主張します。

生徒の皆さんには、裁判官の立場に立っていただき、被告人である女性が有罪か無罪かを検討してもらいます。

2. 当日の様子について(前半編)

最初に全体で開会式を行い、今回の教材の動画を視聴しました。動画では刑事裁判の原則(無罪推定の原則、証拠裁判主義)について学び、続いて、今回の事件の証拠関係、ピエロの格好をした人物を目撃した証人の尋問を確認しました。

目撃者の証人尋問まで見たところで、一度、事案の整理をしました。それぞれ4〜5人×13個のチームとなり、各チームに弁護士や修習生、法科大学院生、学生インターンも参加し、一緒に事案の整理や証拠等の検討を行いました。今回は登場人物の名前が全員文豪にちなんでいたことから、チーム名もドストエフスキー、ヘミングウェイなど文豪にちなんだものになっており、雰囲気もたっぷりでした。

最初のうちは、生徒の皆さんも緊張している様子でしたが、お互いに意見を交わして議論するうちに次第に緊張がほぐれ、きちんと自分の意見をもって発言する様子が増えてきました。また、登場人物が多く、時系列の複雑な事案でしたが、生徒さん同士や弁護士、学生との議論を通じて、徐々に事実関係を整理していくことができました。

3. 当日の様子について(後半編)

各チームである程度事案を整理できたところで、後半の証人尋問と被告人質問を視聴しました。

動画が終わった直後には、生徒の皆さんから、「被告人が嘘をついている気がする」「被告人の言うことを否定できるだけの材料がない気がする」など抽象的な意見が多く聞かれましたが、議論を交わしていくうちに、「被告人の言っていることは○○という証拠と矛盾する」「いや、○○と考えれば、矛盾するとは限らないんじゃないか」など、客観的な証拠をもとに、意見を組み立てて、議論を試みる場面が多くみられるようになりました。生徒の皆さんが固定観念にとらわれない柔軟な発想で、様々な観点から検討している様子は、議論を見守る弁護士や学生たちにとっても、大変良い刺激になりました。
また、他の生徒さんの意見を聞いて、「そういう考え方もあるのか」「なるほど、それはありうるかもしれない。でも、○○と考えると...」と、柔軟に相手の意見を受け入れながら、きちんと自分の意見をぶつけて議論をする様子は、さながら本物の裁判官のようでした。

議論が煮詰まってきたところで、4~5個のチームが集まって、各チームの結論(有罪か無罪か)とその理由の発表を行いました。有罪と判断したチームもあれば無罪と判断したチームもあり、また、同じ結論でも理由が異なっていることもありました。中には議論が白熱して、時間内に結論を出すことのできなかったチームもありましたが、有罪・無罪両方の視点から説得的な意見が発表されていました。

当日の様子は、東京新聞でも取り上げられました。
https://www.tokyo-np.co.jp/article/241708

4. ご参加いただいた生徒さんの感想と今後の活動について

ジュニアロースクールに参加した生徒の皆さんからは、「被告人の人生に関わる判断は難しいと思った」、「他の生徒が、自分が見ていなかった証拠について、自分では思いつかない考え方をしていることを聞いてとても面白かった」、「有罪無罪を決めることは大変だと思った」、などなど、たくさんの意見をいただきました。今回の機会が少しでも、法律や法律家に興味を持つきっかけになりましたら大変嬉しく存じます。

今年の夏にもジュニアロースクールを開催し、今年はリアルでの開催を予定しており、こちらのサイトでご案内しますので、ご興味のある方はぜひご参加ください。
https://niben.jp/service/event/law/

なお、法教育委員会では、小中高の各学校への出張授業も行っていますので、以下のサイトからのお申込みをお待ちしています。
https://niben.jp/service/jichitai-kyoiku/education/jyugyo/

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