イベントレポート

立川支部本庁化シンポジウム「多摩にも独立した裁判所を!」開催される!~本庁化って、何?

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更新日:2023年05月22日

令和5年3月24日、二弁本会で、立川支部本庁化検討PTと二弁の主催で、シンポジウム「多摩にも独立した裁判所を!」が行われました。このシンポジウムは、東京地方・家庭裁判所立川支部を立川地方・家裁裁判所にしようという試みの一環として行われたものです。
本庁化とは、独立の地方・家庭裁判所を多摩地域に新設しようという運動です。
立川支部本庁化検討PTは令和4年度の菅沼友子会長のご理解のもと、制定されました。
今年度(令和5年度)は、小川恵司会長のご了解のもと、引き続きPTとして継続させて頂いています。
さて、令和4年度のシンポジウムの内容について、ご報告させて頂きます。
これは、立川支部(弁護士会は多摩支部)の現状をご理解頂き、支部の本庁化を行う必要性を、シンポジウム形式で行ったものです。
パネラーは、支部設立に多大な貢献をされてきている杉井静子弁護士、家裁立川支部の調停委員で令和4年度の東京家事調停協会会長の真野文惠弁護士、多摩地域の金融機関の代表である多摩信用金庫の大久保尊則秘書室長、参加者は、多摩支部会員は東弁一弁二弁を問わず参加自由というオープンな催しとして行われました。

進行は、次の通りです。

最初に菅沼会長からご挨拶を頂き、一藤剛志多摩支部支部長の多摩支部紹介、杉井弁護士の基調報告(多摩支部の現況についての説明)の後、パネラーによるシンポジウムを行いました。
進め方は、最初に真野弁護士からは家裁立川支部の状況についての簡単な報告、大久保室長からは多摩地域の経済界からの多摩の経済状況の報告をお願いし、その後司会役(井上寛)が質問を交え、それぞれの方々の意見を聞くという形を取りました。

一つずつ説明します。

まず杉井弁護士の基調報告では、多摩地域には420万人おり、四国全県370万人より多い地域であること、四国には4つの本庁があるが多摩では支部が一つしかないこと、多摩地域は、2020年の統計で、家事事件が全国で4位、民事事件が8位、刑事事件が7位と、極めて事件数も多い地域なのに、支部には予算権も人事権もないため多摩市民に対する司法サービスが十分ではないこと、具体的には簡裁の控訴事件は支部ではできず、行政事件も支部ではできず、地家裁委員会も支部にはないので、裁判所の運営について市民の意見を反映させる場がないこと等の問題点の指摘や、今までの運動の中で、最高裁や法務省への陳情を、福岡県弁護士会北九州部会(小倉支部管轄地域)と一緒に行ってきたこと等が報告されました。
真野弁護士からは、家裁事件を調停委員や裁判官と進めていくことには特に支障はないものの、新型コロナの時期に、支部独自で新型コロナ対策を決めることはなく、本庁からの指示によったため、その指示にタイムラグが生じたことが問題となったこと、裁判所支部の支部長は調停事件も担当しているので、支部長異動期には事件処理に支障も生じて大変なこと等の報告がなされました。
大久保室長には、地域経済機関の代表として参加して頂いただけではなく、一般市民の目線からのご意見も頂きました。地域経済の観点から、直近のデータで、多摩地域は、人口は全国10位、平均寿命は3位と長寿を誇るが、高齢者も多いこと、大学等も全国2位、課税対象所得金額も3位の高位にいる地域であり、経済規模は、多摩県ともいえる規模があり、民営事業者数は全国11位、研究開発型の企業が多くあることから製造品出荷額は25位にとどまるとの報告がなされました。
司会役からの個別的質問に対する回答としては、未だ本会(東弁、一弁、二弁)による支部本庁化を支える決議がなされていないこと(東京都と多摩30市町村からは、本庁化を求める意見書の決議を、平成22年前後に全て取得している)、関弁連では本庁化賛成決議がなされているが、日弁連では未だ充分な議題として取り上げられていないこと等の指摘がありました。また、家裁の調停委員も、簡裁の調停委員も、霞ヶ関で採用され、必ずしも多摩地域の調停委員だけで構成されていないことなども指摘されました。地元を知る人による地域に密着した調停の進め方も大切だと思います。
今後は国会議員への働きかけや、弁政連の議員への働きかけ、都知事や30市町村の首長への働きかけなど、課題が多くあります。今までに行ってきた各種の要請活動の際に、弁護士会としての対応を聞かれたことから、今後の各種の働きかけを強めるためには是非とも本庁化推進の本会での決議が必要である旨が強く意識されました。
さらに大久保室長から、多摩地域の振り込め詐欺被害への取組として、地元警察とタイアップした取り組みの紹介や、高齢者に対する特段の配慮をしているという取組(窓口での声かけの徹底)等の活動内容の指摘から、検察庁の独立の必要性や、高齢者に対する司法のさらなる充実の必要性などの回答も頂きました。
このような内容から見えてくることは、裁判所が支部のままでは、420万もの人口を抱える地域の司法を十分には担えないこと、多摩市民の目線からも、検察庁の独立を含めた多摩地域の司法基盤のより一層の充実が必要であると感じられていること、また裁判所の本庁ができると法律上は検察庁も弁護士会も独立の組織となること等から、裁判所の本庁化の取組の必要性が検討されなければならないということでした。

最後に、会場からの質問を、回答は小林克信弁護士にお願いし、行いました。

現実的な問題として、本庁化が実現した際に本会化となる場合に、刑事事件や後見事件など今の会員数で対応できるのか等の質問が出されました。回答は、独立する際には、直ぐにではなく、当然に移行期間が設けられること、会員数も800人程度にはなると想定されること、多摩地域で弁護士を行いたいという人が会員になることで他の地方会と同様の立場となり、他の地方会が出来ていることが多摩で出来ない理由はないこと、さらに本庁化は市民のためのものであるため、それがもし後退することは本末転倒になってしまうことから、そのような事態を回避することについては、弁護士の社会的責任として東京にある弁護士会同士での協力関係が検討されるであろうことなどの、指摘がなされました。
このシンポジウムは、参加者が37名以上、ズーム参加を含めると、50名近くの参加を頂き、大変熱心なシンポジウムとなりました。

二弁の会員の弁護士には、より一層多摩支部に興味を持って頂き、司法の充実と弁護士自治の拡充に向けたご協力を頂ければと、強く念じております。

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