イベントレポート

ジュニアローイベントレポート(高校部会)

LINEで送る
更新日:2023年06月09日

法教育委員会の高校部会では、令和5年3月30日に高校生を対象としたジュニアロースクールをオンラインで実施いたしました。オンライン実施は今回で3回目となります。
今回は「幸せなSNSの世界、作ってみませんか?」と題し、表現の自由の重要性を前提とした上で、名誉毀損や侮辱などの問題表現の扱いをどうすれば「幸せなSNSの世界」を作れるだろうかということを検討していただきました。具体的には、SNSの運営会社の従業員の立場から投稿ルールをどのように定めれば良いかを考えていただきました。

前々回、前回のオンラインでのジュニアロースクールと同様、今回も、3月30日のジュニアロースクールの当日(Day2)に先立ってDay1を設け、表現の自由の重要性とその制限についての基本的な事項についてのレクチャーをしました。ソーシャルメディアの特性により、世論を作り、国や社会を変える行動を取りやすくなっていることについて実例をいくつか挙げて説明するとともに、その一方で、誹謗中傷やヘイトスピーチなど、人命にも影響を及ぼすような表現行為が存在することについても実例を挙げて説明をしました。また、議論の場における批判や反対意見を述べることと誹謗中傷とは異なるということを説明した上で、今回のワークとなる、SNSの投稿ルールについて考えていただくステップに入りました。
参加された生徒の皆さんには、Day1終了後、Day2までの間に、弁護士の作成した投稿ルール案を検討していただきました。ルール案では、大きな項目として、①ルールの目的、②登録の際の手続き、③具体的な投稿ルール、④検閲制度、⑤通報の仕組み、⑥処分についてそれぞれ定めていましたが、あちこちにツッコミどころを盛り込んでルール案を作っていましたので、生徒の皆さんがどのあたりに食い付いてくるのかという点も楽しみでした。

Day2では、まずDay1のおさらいをした後、生徒さんを7つの班に分け、各班で、どのルール(項目)について検討をするか、検討の結果としてどのように変更、修正をするか、或いはしないかということについて議論をしていただきました。弁護士が、かなり凝ったルール案を作成したため、生徒の皆さんは、焦点を当てて検討する項目をどうするかについていろいろと悩まれたようですが、多くの生徒さんは、投稿ルールの内容と検閲制度のあり方について問題意識を持たれていました。具体的な検討の内容をご紹介することは難しいですが、表現の自由と許されない表現行為の抑止との間でのバランスを取る意識で検討がなされ、変更、修正の意見が上がりました。
続いて、仮想の事例について、自分たちで考えたルール案に当てはめるとどうなるかということをしていただきました。事例自体についての一般的な評価において、生徒さんの間で温度差があったこともあり、ルール案についての検討の際には想定していなかった当てはめにおける不都合が表面化することもありました。ルール案の検討のあり方についての検証となることを実感していただけたと思います。

生徒の皆さんにとっては身近な存在であるSNSについて、普段はあまり意識をしない切り口で考えていただくということをしましたが、弁護士の想定を上回る、ありきたりではないアイデアが出てきました。
表現の自由とその規制という難しいテーマであり、また個々人の価値観によっても違憲が大きく異なるものについて、協議をし、意見を取りまとめるという過程は、生徒の皆さんにとって貴重な経験となったものと思います。参加された生徒の皆さんからは、「とても楽しかったです。自分の中にはない意見をたくさん得ることが出来ました。多くの弁護士の方々、インターン生の方々によって充実した議論ができたので、とても感謝しています。」、「1つの本物のような事例に対して色々な人と議論をしたり、様々な角度からの意見を聞くことができて、なかなか無い良い機会になりました。」、「弁護士になりたいから参加しました。ジュニアロースクールありがとうございました!また参加してみたいです!これを通して私の将来の夢をきめました!」等の感想も寄せられ、主催者側としてもこのイベントで生徒の皆さんに残るものがあってよかったと思っています。

今年度は8月7日(月)にリアルで開催いたします。オンラインであれば参加可能であった遠隔地や海外の生徒の皆さんの参加が難しいというところは残念ですが、4年ぶりのリアル開催ということで、高校部会のメンバーも張り切っています。

もどる