イベントレポート

「小学生対象ジュニアロースクール・イベントレポート(2024年度)」

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更新日:2024年10月04日

1 はじめに

 2024年8月8日、小学校5~6年生を対象としたジュニアロースクールを開催しました。 ジュニアロースクールは、法教育の普及・推進に関する委員会が例年実施しているイベントであり、参加した生徒の皆さんに、授業を通じて法的な考え方を理解し、実践いただき、身に付けてもらうことを目的としています。 多数の応募の中から当選した28名の小学生が、当日、弁護士会館に集まってくれました。今年は「虎に翼」を見ているという子どもたちも多かったようです。 また、保護者の方にも授業の様子を観覧していただき、子どもたちの授業後に保護者向けの解説を行う機会も設けました。

2 教材

今年度は、「犯人はあの子?」という教材を使用して、「事実」に基づいて、「理由付け」をして「結論」を出すことが大切であると学ぶ授業を行いました。

3 授業の様子

⑴ 当日は、ある小学校で、鉢植えを割ったのはマコトさんだと疑われているという事件で、マコトさんが犯人なのか、そうではないのかを、検察チーム(マコトさんは犯人であるという立場)、弁護チーム(マコトさんは犯人ではないという立場)に分かれ、各チーム3つの班(合計6班)ごとに考え、発表をしてもらいました。

⑵ まずは、事実認定の考え方として、ある事実から結論を導く際には、「理由付け」が存在しているのだという説明をしました。牛乳、肉、カレー粉、にんじん、玉ねぎなどが入った買い物かごを見て、子どもたちはカレーを連想したようですが、どうしてそう思ったのか、ここに理由付けがあるのだということ、なぜ事実と理由付けが重要であるのかを伝え、理由付けのイメージを持ってもらいました。

⑶ そのうえで、実際に子どもたちに、「マコトさん」の事件を通して、事実と理由付けに基づいて結論を出すというプロセスを体験してもらいます。ここで弁護士が扮した"探偵毛利の弟子(探偵見習い)"が「マコトさんが犯人かどうかの調査を手伝って欲しい」と現れ、子どもたちの緊張もほぐれたようです。
まずは、マコトさんやクラスメイト、用務員さん役に扮した弁護士の話を子どもたちに聞いてもらい、マコトさんが犯人だと思うか、そう思う理由について考えてもらいました。子どもたちの多くは、マコトさんが犯人ではないと考えているようでした。

⑷ 次に、検察チーム、弁護チームに分かれ、班ごとに、マコトさんやクラスメイト、用務員さんに追加で聴き取りをする準備をしてもらいました。各班に配られた検察チーム・弁護チームと書かれているカードをめくり、ここで初めて子どもたちは自分たちがどちらの立場のチームになるのかを知りました。中には自分の考えとは反対の立場のチームになった子どももいましたが、それぞれの立場から、自分たちにはどんな事実があるといいか、それを聞き出すにはどんな質問をすればいいかを班ごとに考えてもらい、今度は子どもたちからマコトさんらの登場人物に質問をしてもらいました。 子どもたちからは「マコトさんは、足が速いから休み時間内に花壇に行けると言っているけど、50メートル走は何秒なのか」「その日は風が強かったので、風で土が飛ばされたのではないか」など、弁護士が思いついていなかった疑問も飛び出し、聴き取りの時間は大盛り上がりでした。
子どもたちがたくさんの質問をしてくれたので、花壇に行くのに秘密の通路が存在したことや、マコトさんの口ぐせなどたくさんの新たな事実が引き出されました。

⑸ これまでに分かったすべての事実を基に、それぞれの班で自分たちの立場からすればどんな事実を取り上げたらいいのかや、結論を導く理由をどう説明すればいいかを考えてもらいました。また、自分とは反対の立場からどんな反論がなされるかを予想してもらい、再反論も考えてもらいました。
 限られた時間でしたが、子どもたちは様々な視点から事実を拾い上げ、なぜ自分たちの結論に結びつくのかという理由を発表してくれました。発表してもらった内容は弁護士がホワイトボードにも書き出し、みんなでお互いの意見を確認し合いました。

⑹ 最後に、事実と理由付けが大事なのは刑事裁判でも同じであること、刑事裁判の原則(疑わしきは被告人の利益に、証拠裁判主義)について説明しました。また物事を考えるとき、誰かを説得したいとき、普段から事実と理由付けを意識して欲しいと伝えました。

4 弁護士とのランチタイム

授業後には、参加弁護士とお弁当を食べながら話をする機会を設けました。どのテーブルでも、弁護士の仕事のこと、将来の夢のこと、好きな教科、夏休みの予定など、様々な話題で、とても盛り上がっていました。法律や弁護士という職業に興味をもってもらう良い機会になったと感じています。

5 最後に

事実や理由付けは弁護士の仕事においてもとても重要で、頭を悩ませる部分でもあります。小学生のみなさんには、この授業を通して、事実と理由付けの大切さを学んでくれたのではと思います。また、自分の考えに固執することなく考えてみる、他の意見にも耳を傾けて意見を交わすことの楽しさを実感してもらえたと思っています。
講義後のアンケートでは、小学生のみなさんからは、班のみんなで話し合えて楽しかった、弁護士と話せて面白かった、保護者の方からは、事実に基づく評価や、共通理解を得るための説明などは普段の生活でも役立つと思う、各班子どもたちと弁護士さんのチームワークが素晴らしいと思う、などの意見を頂きました。
今後も同様の企画を行う予定ですので、多くの小学生のみなさんにご参加いただけたら幸いです。

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