中学生・高校生対象夏季ジュニアロースクール・イベントレポート(2024年度)
法教育委員会では、2024年8月6日に、中学生以上を対象としてジュニアロースクールを開催いたしました。ジュニアロースクールは、法教育委員会が毎年実施しているイベントで、参加した生徒の皆さんに、論理的なものの見方、考え方を理解し、自らの考えを相手方や第三者に上手に伝えることを実践し、体験していただくことを目的としています。
今回も弁護士会館でのリアル開催でしたが、120名もの応募があり、抽選で当選した67名の方にご参加いただきました。
1. 使用教材について
使用した教材は、『華麗なる一族の悲劇』という今回のジュニアロースクールのために、法教育委員会オリジナル脚本で書き下ろされた新作です。
ある朝、財閥の総帥が神社の階段から転落死!背景には後継者争いが・・・転落現場に総帥と一緒にいた被告人の長男は事故だと主張するが、食い違う目撃証言、果たして事件か事故か!
生徒の皆さんには、裁判官の立場に立っていただき、被告人が有罪か無罪かを検討してもらいました。
2. 当日の流れ
① 事実認定の仕方を学ぶ
最初に、『プリンを食べたのは誰?』という動画を見てもらい、裁判官としてどのように事実を認定するにあたっては、客観的事実の整理の仕方や、目撃証言の信用性の判断の仕方が重要になることなどを学んでもらいました。
② 刑事裁判について学ぶ
次に、刑事裁判の原則(無罪推定の原則、証拠裁判主義)および刑事裁判の手続きの流れについて学んでもらい、さらに配布した起訴状、証拠書類などの書証について説明を行いました。
③ 事件開始
いよいよ事件が始まりました。人定質問などの刑事裁判の冒頭手続き終了後、まず、検察官から検察官が提出した証拠の説明がされました。
次に、
運転手の供述調書の読み上げ
1人目の目撃者への証人尋問
2人目の目撃者の証人尋問
最後に被告人への被告人質問が行われました。
途中途中に各班についた弁護士らからの説明を受けながら、生徒の皆さんは証言の内容のメモを取りました。

④ 事件の検討
午後は班ごとに有罪にするか無罪にするのかの検討を行いました。途中のおやつ休憩を含め約1時間半。生徒の皆さんは、客観的証拠と証人・被告人の供述内容などについて、①で学んだ事実認定の仕方を思い出しながら一つ一つ丁寧に検討しました。
検討開始時には「被告人は何となく犯人のような気がする」という意見や「決定的な証拠とは言えないから無罪だと思う」という意見が多かったですが、出てきた事実を一つ一つずつ検討していくと、それまで気付かなかった細かい矛盾や事実を発見したりしました。また、他の生徒の発言を聞いて、途中から有罪無罪の結論を変える生徒も相当数出てきました。また、教材を作成した私たちも気付かなかった鋭い指摘も複数あり、弁護士らもなるほど!と思うこともありました。その日初めて会った生徒同士が、活発に議論をする様子は、準備をしてきた私たちも大変うれしく感じました。
⑤ 結果発表
最後に、各班の結論(有罪か無罪か)とその理由の発表を行いました。今回は、有罪6班、無罪6班とちょうど半々に結論が分かれました。認定した事実を有罪側の証拠として使う班もあれば無罪の証拠として使う班もあり、1つの事実が多面的な意義を有することや、複数の認定事実の評価も容易ではないことを実感してもらえたのではないかと思います。


3. ご参加いただいた生徒さんの感想と今後の活動について
参加した生徒の皆さんからは、「他の人と議論することが面白かった」「いろんな面から考える大切さを理解することができた」「判決をする大変さを知って裁判に対するイメージが変わった」「論理的に話を組み立てることや法を学ぶことの面白さを知った」「弁護士、裁判官、検察官の役割を理解することができた」などなど、たくさんの意見がありました。今回の機会が少しでも、法律や法律家に興味を持つきっかけになれば幸いです。
当会では、中学生以上を対象としたジュニアロースクール(模擬裁判)を来年の春にも予定しています。こちらのサイトでご案内しますので、ご興味のある方はぜひご参加ください。
https://niben.jp/service/event/law/
なお、法教育委員会では、小中高の各学校への出張授業も行っていますので、以下のサイトからのお申込みをお待ちしています。
https://niben.jp/service/jichitai-kyoiku/education/jyugyo/

