2025年春季ジュニアロースクールイベントレポート
![]() |
![]() |
法教育委員会では、2025年3月28日、霞ヶ関にある弁護士会館にて、中学生・高校生を対象として春季ジュニアロースクールを開催しました。ジュニアロースクールは、法教育委員会が毎年実施しているイベントで、参加していただく皆さんに、論理的なものの見方、考え方を理解し、自らの考えを相手方や第三者に伝えることを実践し、体験していただくことを目的としています。
今回のジュニアロースクールのテーマは刑事模擬裁判でした。81名の応募の中から抽選に当選した68名の方にご参加いただきました。
1. 模擬裁判の内容
今回は、「『愛犬強奪・身代金要求事件』〜犯人はあいつワン!〜」という法教育委員会オリジナル脚本の模擬裁判を実施しました。
被害者はインターネットで愛犬(しょうがちゃん)の動画を配信する動画配信者。ある日、被害者のマンションの一室からしょうがちゃんが強奪され、犯人から身代金を要求されました。逮捕されたのは愛犬家の男性。解放された愛犬が「彼が犯人だ」と告げます。その男性は、マンションの住人にエレベーター内から目撃されていました。しかし、愛犬家の男性はアリバイを主張します。
さて、愛犬家の男性がしょうがちゃんを誘拐したのか。参加者には、裁判官になって、有罪か無罪かについて判断をしてもらいました。
2. 刑事裁判に関する基本的な説明
まず、刑事裁判における2つの重要なルールである、無罪推定の原則と証拠裁判主義について学びました。
次に、「ある事実があったのか,なかったのか」を判断する事実認定について、「プリンを食べたのは誰?」という法教育委員会オリジナルの動画教材を使用して、検討すべき点や評価の仕方について学びましました。
ここまでに裁判官として判断するために必要な基礎的なことを学んだ参加者たちは、いよいよ具体的な事件の検討に入っていきます。
3. 事件を知る
まず、検察官役と弁護人役が、双方が提出した書証(書面になっている証拠)について説明します。検察官によると、しょうがちゃんは、犯人の匂いを辿って被告人の自宅まで警察官を案内したとのことです!
次に、マンションの廊下を歩いている被告人をエレベーター内から目撃したと供述する検察側の証人、身代金受渡し時刻に被告人と一緒にいたと供述する弁護側証人に対する証人尋問と被告人に対する被告人質問を弁護士が実演しました。参加者たちは熱心にメモを取りながら、証人や被告人の様子を観察したり、客観証拠と照らし合わせてみたりと、注意深く信用性を検討していました。

4. お昼休憩
開始から約2時間半、たくさんの情報を吸収し、頭の疲労もたまってきました。お昼休憩です。4種類のお弁当から好きなものを選び、今日初めて会った違う学校・学年の生徒、弁護士やロースクール生などと一緒に歓談しながら食べました。
約1時間の休憩後、裁判官として判断する時間がやってきました。
5. 有罪・無罪の検討と発表
ここからは班ごとの白熱した議論の時間です。刑事裁判の重要な原則を意識しながら、証拠からどのような事実が認定できるか、一つ一つの事実が有罪、無罪どちらの根拠となるのか等について、検察官の主張するストーリー、弁護側の主張するストーリーを意識しながら、約2時間にわたり班ごとに議論を戦わせました。
その後、班ごとの結論と理由の発表を行いました。ほとんどの班で有罪派、無罪派に意見が割れ、班としての1つの結論を出せない班もありました。全体としては有罪、無罪が半々くらいになりました。

6. 弁護士からの講評
弁護士から検討内容や判断に関するコメントを述べました。どの班でも、書証や尋問といった証拠から正確に事案の概要を把握し、重要なポイントを上手くつかむことができていました。加えて、一つの同じ事実についても、見方によって違う評価ができることを意識しつつ、他の参加者の意見も聞き、それぞれが検討を深めて、班全体でも大変レベルの高い議論ができていました。
参加者のみなさん、本当にお疲れ様でした。
7. 参加者の感想と今後の活動について
参加者からは、事実認定教材が面白かった、違う考えや見方をしている方もいて議論が楽しかった、将来、裁判官や弁護士を目指したいと思ったなど、たくさんの意見・感想をいただきました。今回のイベントが少しでも、法律や法律家に興味を持つきっかけになってくれたら大変うれしく思います。
次回は今年の8月に、小学生向け、中高生向け、高校生向けの3つのジュニアロースクールの開催を予定しており、こちらのサイトでご案内しますので、ご興味のある方はぜひご参加ください。
https://niben.jp/service/event/law/
なお、法教育委員会では、春・夏のジュニアロースクールの他、小中高の各学校への出張授業も行っていますので、以下のサイトからのお申込みをお待ちしています。
https://niben.jp/service/jichitai-kyoiku/education/



