会長声明・意見書

出入国管理及び難民認定法改正法案の再提出に反対する会長声明

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更新日:2023年03月01日

2023年(令和5年)3月1日
第二東京弁護士会会長  菅沼友子
22(声)第11号

 政府は今期の通常国会に、2021年に廃案となった出入国管理及び難民認定法改正案(以下、この時の法案を「旧法案」といいます。)を、その基本的枠組みを維持したまま、再度提出しようとしています(以下、今期提出予定の法案を「再提出法案」といいます。)。
 旧法案は、その内容に以下に述べるような重大な問題があり、また、日本の入管施設で職員による収容者への暴行事件が繰り返し報道され、2021年に名古屋入管の収容施設内で死亡したスリランカ人女性を含め、2007年以降入管に収容された18名もの外国人の尊い命が病気や自殺で失われている等、収容者の人権や人としての尊厳が守られていないという入管施設における収容状況の実態に対する世論の批判の高まりもあって、廃案に追い込まれました。
 再提出法案は、旧法案同様、難民認定申請により送還停止となるのは原則2回までに制限するという「送還停止効の制限」や罰則付きの「退去命令制度」など、収容者の人権を侵害する恐れのある制度の導入や管理当局の権限を強化する内容を盛り込んだ内容となっています。
 「送還停止効の制限」はそもそも日本も加入している難民条約や拷問等禁止条約等に規定されている、「ノン・ルフ―ルマン原則」(難民を、迫害を受けるおそれのある地域に送還してはならないという国際法上の原則)に反するものであり、送還停止効に制限を設けることは、難民として保護されるべき人々を生命身体の危険のある本国に送還することになりかねません。
 また、退去強制令書が発付されているにも関わらず日本に留まっている外国人の中には、難民として保護されるべき人以外にも、日本人の配偶者がいる、日本で生まれ育ち帰るべき国がないなど様々な理由で帰国できない人が含まれています。罰則付きの退去命令制度を設けたからといって帰国できない状況は変わらず、問題の解決にはなりません。
 なお、再提出法案は、紛争地域から逃れてきた人々などを保護するための「補完的保護対象者」制度を新設するとされていますが、国際的基準によれば、ウクライナから避難してきた人々などは、端的に難民条約上の「難民」として保護することが可能とされており、まずは、国際的基準に即した難民認定を行うことが先決です。
 日本の入管施設における長期・無期限の収容制度や認定率の低い難民認定制度等については、国際機関からも厳しく批判されています。当会も、2020年11月16日付「『送還忌避・長期収容問題の解決に向けた提言』に反対する意見書」2021年5月6日付「出入国管理及び難民認定法改正法案に反対する会長声明」 において、現在の出入国管理体制の問題点や旧法案の問題点を指摘してきました。今、国内外から求められているのは、司法審査や収容期間の上限設定、収容者の人権尊重等の出入国管理体制の抜本的な見直しであって、再提出法案のような管理当局権限の強化ではありません。
 以上の理由から、当会は、出入国管理及び難民認定法改正法案の再提出に強く反対します。

出入国管理及び難民認定法改正法案の再提出に反対する会長声明(PDF)

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