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トリビアではない!?東京拘置所あれこれ

池田 綾子(36期) ●Ayako Ikeda

毎年、東京三弁護士会刑事弁護委員会と東京拘置所及び法務省矯正局とは、意見交換会を行っています。
しかし、2021年3月は、コロナのために予定していた意見交換会を開催することができませんでした。このたび、予め用意して送っておいた弁護士会からの質問について、可能な範囲で東京拘置所から電話でお答えいただいたので、2020年2月27日の意見交換会の内容も一部交えて、再構成してご紹介します。
*「刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律」を「法」と略称します。

通常食と異なる食事

Q1
被収容者に供する食事について、老齢、病気、宗教上の理由等により、通常食とは異なる内容の食事を供する場合があると思いますが、通常食とは異なる食事としてどのようなものがありますか。

A1
(1)治療上必要と認める場合...
食物アレルギーを含む、刻み食、かゆ食、軟菜(なんさい)、減塩食、アレルギー代替食
(2)宗教上の理由、食習慣の著しい違いによる場合...
豚肉の不食、牛肉の不食、肉の不食、貝の不食、甲殻の不食、頭足類の不食、魚類の不食、ベジタリアンにつき対応しています。

通常食と異なる食事の献立の決定

Q2
通常食と異なる食事の具体的な献立の決定に当たって、どのような配慮がされていますか。

A2
通常食とは異なる献立の決定は、原則として医師が当該被収容者の身体状況等を確認し、又は被収容者本人からの申告に基づき、当該被収容者の宗教上の理由及び国籍等による食習慣の違い等について必要な調査を実施するなどして、通常とは異なる食事を支給することの必要性及び相当性を判断して行っています。

精神科医等との特別面会

Q3
精神科医・公認心理師・臨床心理士・臨床発達心理士・社会福祉士・精神保健福祉士(以下「精神科医等」といいます)が行う面会について、2019年は1年間にどのくらい行われましたか。また、1回当たりの時間はどのくらいですか。

A3
2019年に、精神科医等との特別面会は、177件行われました。全て、1回あたり30分~60分の間でした。2019年において、60分を超える面会時間が認められたことはありませんでした。

精神科医等との面会時間の延長を求めるには

Q4
精神科医等との面会は、通常の面会より長時間を要しますが、面会時間の延長はどのように求めればよいですか。(2020年の質問事項)

A4
面会時間の延長を求める統一の書式はなく、送付方法も決まっていません。当日のファックスも受け付けていることがありますが、できれば早めに、任意の方式で、面会時間の延長を求める旨の書面をお送りください。誠実に対応しています。2019年頃から、従来の30分から40分に延長するよう配慮しています。

精神科医等の特別面会での書面・検査道具の使用

Q5
精神科医等の面会時に検査を実施する場合、その場での書面・検査道具のやり取りをできるようにすることはできませんか。

A5
精神科医等による面会は一般面会(法第116条)であるところ、面会室は仕切り板の設置された面会室に限定されている上、精神科医等が面会時に検査を実施する目的で書面や検査道具を被収容者とやりとりすることは法律上の差入れ及び交付(宅下げ)に該当します。紛失等のトラブルを防ぐためにも、検査道具等を検査確認し、記録を確実に残す業務を行っている担当部署で処理することが必要であり、これらの手続を取るために、差入れ等は差入窓口又は郵送に限り実施しています。
そのため、検査道具等を用いて面会を実施する必要がある場合は、精神科医等がそれを示しながら面会をしていただくことのほか、例えば、予め被収容者に対し、郵送等で差入れを行っていただき、被収容者にこれを携行するように伝えておくことなどが想定されます。
なお、アクリル板のない面会室での面会を行うことは、現行法上不可能です(2020年の意見交換会での回答)。

懲罰中の専門家等との面会

Q6
被疑者・被告人が懲罰を受けている場合、専門家(医師、公認心理師、社会福祉士、精神保健福祉士など。以下「専門家等」といいます)との面会について、どのような取扱いをしていますか。

A6
閉居罰の懲罰を課された被収容者は法第152条1項5号の規定に基づき、面会することが停止されますが、そのような場合であっても、弁護人等と面会する場合及び被告人若しくは被疑者としての権利の保護又は訴訟の準備、その他の権利の保護に必要と認められる場合は、面会は停止されません。
一般に意見書等の裁判資料を作成する必要がある場合など、弁護活動上の必要性により被疑者・被告人が専門家等と面会を実施することは、上記権利保護の観点から、必要性が認められるものと思料されますが、具体的には、当該面会について、被収容者のおかれた状況、面会の相手方との関係性及び面会の目的など、個別の面会ごとに、当該被収容者の権利保護に必要であるかどうかを実質的に確認し、個別に判断することとなります。

既決囚と元弁護人との面会

Q7
元弁護人として、刑の確定後に、受刑者(元被告人)の改善・更生のために面会をする必要が生じる場合があります。元弁護人から面会の必要性を詳しく疎明することは守秘義務との関係で問題を生じる場合もあり、予め詳 しい申入れをすることは困難ですが、法務省のホームページにある、面会できる方のウ又はエに該当しませんか。どのようにすればよいでしょうか。

A7
受刑者については、法第111条1項により、親族・重大な利害にかかわる用務の処理のため面会が必要な者のほか、改善・更生に資すると認められる者と面会が権利的に保障され、またそれ以外の者であっても、同条2項により交友関係の維持その他面会することを必要とする事情があり、かつ、面会により、刑事施設の規律と秩序を害する結果を生じ、又は受刑者の矯正処遇の適切な実施に支障を生ずる恐れがないと認めるときは、刑事施設の長の裁量によって面会を許すことができるとされています。
一概に答えることは困難ですが、権利的に保障される面会に該当するか否かの判断については、その申出内容から判明する面会の目的のほか、刑事施設の長が把握しうる受刑者とその面会相手との関係や状況等を具体的に確認した上で、客観的に判断する必要があります。
また同条2項に該当するか否かは、面会を必要とする事情を確認する必要があり、単に元弁護人という立場だけではなく、積極的に面会を許す事情を確認し、受刑者の処遇状況・面会の相手方と受刑者の関係とその内容等の実情を踏まえて判断する必要があります。したがいまして、受刑者と元弁護人との面会については、個別具体的な事情のもと上記各観点から判断することとなりますので、必要な範囲において、疎明の資料の提示、その他必要事項の聴取等をさせていただくこととなりますが、これは法の規定に基づく適正な面会を実施するために必要なものと考えますので、ご協力をお願いします。

法務省のホームページから

刑事施設に収容されている被収容者との面会や手紙の発受等を希望される方へ
詳しくは法務省ホームページをご覧ください。

受刑者と面会できる方
次のいずれかに該当する方は、受刑者と面会することができます(各項目の詳細を省略)。

  1. 親族の方※親族には、婚姻の届出をしていないものの、事実上婚姻関係と同様の事情にあると施設が認めた、いわゆる内縁の夫や妻も含まれます。
  2. 婚姻関係の調整、訴訟の遂行、事業の維持その他の受刑者の身分上、法律上又は業務上の重大な利害に係る用務の処理のため面会することが必要な方
  3. 受刑者の更生保護に関係のある方、受刑者を釈放後に雇用しようとされる方など面会により受刑者の改善更生に資すると認められる方
  4. 1から3までには該当しないものの、交友関係の維持その他面会することを必要とする事情があり、かつ、面会により、刑事施設の規律及び秩序を害する結果を生じ、又は受刑者の矯正処遇の適切な実施に支障を生ずるおそれがないと認められる方で、施設が面会を認めた方

連休中の被疑者との面会

Q8
被収容者との夜間及び休日の面会については、既に申合せがされていますが、「被疑者」が勾留された場合には、初回のみならず、連休中のその他の日も面会が必要な場合が生じます。大型連休中の被疑者に対する面会はどうなりますか。

A8
夜間及び休日における被収容者と弁護人等の面会については、法務省と日本弁護士連合会との間で行われた「夜間及び休日の未決拘禁者と弁護人等との面会等に関する申合せ」に基づき、弁護人等からの事前予約があり、かつ、一定の要件を満たす場合に、夜間及び休日における面会を実施することとしています。大型連休等の事情により、平日の執務時間内に面会を実施することが困難で、緊急に面会を実施する必要が生じた場合には、個別に事情を確認させていただき、上記申合せの記の7に定める例外的措置として、個別の事情と東京拘置所の職員配置の状況を踏まえた上で、弾力的な運用を検討してまいります。(これは2021年5月の大型連休を念頭においての回答でした)

夜間及び休日の未決拘禁者と弁護人等との面会等に関する申合せ【抜粋】

(例外的措置)

7 上記にかかわらず、次に掲げる事情が存する場合であって、平日の執務時間内に面会を実施することが困難なときには、夜間又は休日(平日の執務時間と同一の時間)にも弁護人等との面会を実施する。
  1. 弁護人等が遠隔地から来訪する場合
  2. 通訳を要する事案において、通訳人が遠隔地から来訪する場合
  3. 未決拘禁者から、弁護人等に対し、別件の被疑事件について取調べを受けたので至急面会したい旨の信書(電報及びファクシミリを含む )が休日又はその直前に届いた場合
  4. その他上記に準ずる緊急性及び必要性が認められる場合

全文は、日弁連会員ホームページに掲載されています。

夜間及び土曜・休日等の面会

Q9
夜間及び土曜・休日等の面会については、前日の午後3時までに予約の電話をしないといけないことになっていますが、東京拘置所には電話が全然つながりません。なぜですか、どうすればいいですか。(2020年の質問事項)

A1
東京拘置所には6回線ありますが、いっぱいになっているようです。増設はすぐにはできませんが、どうすればよいか検討してみます。直通番号はありません。電話で予約してもらうしかないので、何とかやってもらうしかありません。

被収容者からレターパックを出してもらうには

Q10
収容中の被告人から言い分を書いた書面を送ってもらうために、切手を貼った返信用封筒を同封することは普通に行っていますが、急いで書類を送ってもらうために、レターパック(迅速に届き、追跡ができる)を同封して 返信してもらうことはできないのでしょうか。

A10
現状では、認められません。
東京拘置所では、指定業者が取り扱うレターパックにかぎり、使用を認めることとしています。これらは限られた人的制限のもと、法に基づく検査を円滑に行うための必要な制限として行っている取扱いであり、現状において、直ちに当該取扱いを変更することは困難であると考えています。
したがって、被収容者に対するレターパックの差入れが必要な場合は、東京拘置所の差入窓口横にある売店において購入していただき、差し入れる方法を取っていただくようお願いします。