第二東京弁護士会のご案内

会長あいさつ

第二東京弁護士会会長 菅沼 友子 昨年は、ロシアによるウクライナ侵攻や選挙活動中の元首相に対する銃撃など、戦後築かれてきた国連憲章に基づく国際秩序や民主主義という基本的な価値を揺るがすような大事件が起こり、社会に衝撃を与えました。このような中で、弁護士会として何ができるのか、何を発信すべきなのか、など改めて考えさせられる一年でした。
 長引くウクライナ危機は我が国の市民生活にも影響を与えています。特に電気代をはじめとする物価の高騰は、この数年のコロナ禍によるダメージとあいまって、とりわけシングルマザーや非正規等の不安定な形態で働く方など社会的経済的弱者といわれる方たちの生活をますます困難なものにしています。このような方々の抱える様々な問題の解決のため、当会では、前年度に引き続き市民団体と連携して、「女性による女性のための相談会」に弁護士を派遣するなど、弁護士の支援が必要な方にそれを届けていくための取組みを行っています。
 今年もこのような努力を続けていくことが必要です。
 弁護士等の法律家による支援を誰でも受けられるようにするには、「法律扶助」(弁護士費用や裁判費用等を公的に援助する制度)の拡充が不可欠です。しかし、日本司法支援センター(法テラス)が現在行っている民事法律扶助は立替え・償還制となっており、例えば法律扶助を利用して養育費が支払われるようになっても、その中から法テラスへの償還金や弁護士への報酬を支払わなければならず、かえって大きな負担となってしまう、というような問題が生じています。そのために民事法律扶助の利用を躊躇する方も少なくありません。全ての人に司法アクセスを保障するためには、民事法律扶助を立替え・償還制から原則給付制に変えていくことが必要です。また、業務量に見合わないといわれる弁護士の報酬基準を適正なものにしていくことも、制度の安定的な運営のためには不可欠です。大変難しい問題ですが、今年度日弁連執行部は最重要課題の一つと位置づけており、私も担当副会長として実現に向けて力を尽くしたいと思います。
 裁判のIT化も大きく進んだ一年でした。5月にはe提出、e事件管理、e法廷を可能とする民事訴訟法の改正が行われ、東京地裁における民事裁判書類電子提出システム(mints)の運用も民事訴訟事件担当部全てで開始されました。また、民事訴訟だけではなく、執行・保全、倒産、家事事件及び労働審判等の手続に関しても法制審議会においてIT化に向けた検討が進められています。これらのIT化を円滑に実施し、審理の充実を確保しつつ適正・迅速な紛争解決をはかっていくことは私たち弁護士の責務です。弁護士会としても、研修の実施や会報誌での情報提供等はもちろん、更に必要なサポートを行っていきます。
 本年も引き続き当会の活動に対するご理解ご協力を賜りますよう、お願いいたします。

2023年(令和5年)1月
第二東京弁護士会会長 菅沼 友子