公益活動の手引き

公益活動Q&A

「受任」の意味
弁護士会員は、義務的公益活動として、国選弁護事件、国選付添人事件、国選医療観察付添人事件、国選被害者参加弁護事件、当番弁護事件(少年当番付添人事件を含む)、法律扶助事件を毎年度少なくとも1件受任しなければなりません。
「受任」とは、事件として受任するという意味で、あくまでも当該年度に事件を引き受けたことをいいます。受任した事件が難事件で、一年の間に終結せず翌年まで継続しても、翌年の「受任」とは認められません。受任した事件の控訴を受任した場合は、新たな「受任」となります。
当番弁護では、接見のうえ被疑者弁護事件を受任した場合をいいます(平成21年度より、クレサラ事件の受任は、義務的公益活動から除外されました)。単に当番弁護士として出動しただけでは足りません。
区役所が主催する法律相談は、公益活動に該当するか
報酬が無償または低額なものは、勿論該当します。会規2条3号イの「官公署に対して、無償または低額な報酬で行う、法律事務の提供」には、地方公共団体等の委嘱により行われる法律相談の担当者としての活動等が、その主なものとして想定されています。
「低額」の基準
1時間7000円程度までの報酬が、会規にいう低額な報酬に該当するとの扱いをしています。これは、典型的な公益活動の一つと考えられる、会規第2条3号イの官公署に対する法律事務の提供の代表例である地方公共団体の行う法律相談の中に、本会の法律相談報酬(1時間5000円)よりも若干高額の、1時間7000円程度の報酬が支給されるものがあることから、これを「低額」の上限のレベルとしたものです。
弁護士会以外の仲裁機関の仲裁人の活動はどうなるか
弁護士会以外の仲裁機関の仲裁人としての活動は、会規第2条2号エには該当しませんが、その内容、報酬額等により、会規第2条2号カ(本会もしくは実施規則に定める団体の委嘱した事項に関する活動)、同条3号イ(官公署に対して無償または低額な報酬で行う法律事務の提供)などに該当することもあり得るでしょう。
会規2条3号ウの範囲(実施規則5条は限定列挙か?)
会規第2条3号ウに定める「人権の擁護、公的な権利の保障又は社会的・経済的弱者への支援若しくは教育を目的とする団体又は組織に対して、無償又は低額な報酬で行う、法律事務の提供」に該当する活動の対象となる団体としてどのような団体があるかについては、実施規則5条に定められています。同条の規定はあくまで例示であり、列挙したものに限定するものではありません。また、具体的な団体の例示は、「公益活動の手引き」に記載されています。このような団体のために行う活動は、広く会規2条3号ウの活動として認めるのが、公益活動の範囲自体を広く設定した会規の趣旨です。
包括的な人権団体(自由人権協会など)は会規2条3号ウに該当しないのか
公益活動の範囲を広く設定し、多数の会員に公益活動への参加を期待する会規の趣旨から、原則として会規2条3号ウにいう「人権の擁護、公的な権利の保障又は社会的・経済的弱者への支援若しくは教育を目的とする団体」に該当することになり、このような団体のために無償または低額な報酬で法律事務の提供を行った場合には、会規2条3号ウの活動を行ったものと認められます。
いわゆる「弁護団事件」の取扱
いわゆる弁護団事件等、相当多数の弁護士が一定の相手方との間の訴訟、交渉等を受任する場合、適用条項として考えられるのは、会規2条3号ウ(人権の擁護、公的な権利の保障、社会的・経済的弱者への支援等を目的とする団体に対する法律事務の提供)または同号エ(犯罪被害者、障害者その他社会的・経済的弱者に対する法律事務の提供)です。この場合、低額な報酬等他の要件を充足することは当然に必要ですが、依頼者らが弁護士らに委任する事件を超えて組織化され、その組織が一定期間恒常的に活動する場合には原則として会規2条3号ウの問題として、依頼者らが弁護士らに委任する事件のみを目的として組織化されている場合には原則として会規2第3号エの問題として、それぞれ該当性が判断されることになります。
使用者たる弁護士・弁護士法人は、被用者の公益活動への参加を全面的に制止し、または特定の公益活動等を禁止することができるか
会規4条1項、2項で、弁護士会員/外国特別会員/弁護士法人会員は、雇用される弁護士会員又は外国特別会員が公益活動等に参加するよう配慮し協力しなければならない旨が定められており、使用者弁護士には、被用者弁護士が望む公益活動等を行うことができるよう配慮し協力する義務があります。
したがって使用者は、被用者が公益活動等を望む場合には、その一部又は全部を禁止することはできません。
実際上も、年1件の国選事件を被用者が受任する程度で事務所経営に障害が生じることは通常考えられませんし、事務所が被用者に対して全会員の義務である公益活動等を禁止することの合理性も乏しいと考えられます。
申告をしなければならない者は?
義務的公益活動(当弁護士会の公益活動制度の中心で国選弁護などコア的な公益活動)を受任しなかった弁護士会員で、免除事由に該当しない会員は、「申告」をする義務があります。受任した弁護士会員には、「申告」義務はありません。
なお、法律扶助事件を受任した場合は「申告」をする必要があります。
弁護士会員が、会規・実施規則で定める「一般的公益活動」10時間の実行、又は公益活動負担金の納付によって公益活動の履行に代える場合、その旨を、当年度終了直後の4月30日までに当弁護士会へ「申告」をしなければなりません。
但し、明らかに10時間以上費やすことが予想される活動内容で、かつ、事務局において、当該会員がその活動に従事していることが把握できる活動内容を限定列挙し、その場合には「申告」を不要としました(Qみなし公益活動の「申告不要の職」及び「申告が必要な職」とは? 参照)。
また、明らかに10時間以上費やすことが予想される活動内容で、事務局が把握できない一定の職については、「申告」をしていただければ公益活動を行ったとみなします(Qみなし公益活動の「申告不要の職」及び「申告が必要な職」とは? 参照)。
時間計算の方法
一般的公益活動に従事した時間は、公益活動そのものに従事した時間および必要な準備時間のみとされています。事務所から裁判所や弁護士会館までの往復時間は含まれません。代表的な活動について算入できる時間、できない時間は、「一般的公益活動の時間の算定例」を参考にしてください。
10時間に不足する時間数は1時間単位に切り上げられます。この不足時間数が公益活動納付金の算定の基礎となる時間数になります。

 [計算例]
 一般的公益活動に従事した時間 7時間20分
 不足時間 2時間40分 → 切り上げ 3時間
 納付金 5000円×3時間=1万5000円
「育児」とは何歳まで? 「介護」はどの程度の要介護度?
「育児」とは、3歳に満たない子がいる場合です。
「介護」は、要介護度1以上の対象家族がいる場合です。
この基準は、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」「国家公務員の育児休業等に関する法律」に準じて考えられています。
免除事由が複数年度にまたがっている場合でも、公益活動義務免除申請は毎年提出する必要があるか。
免除申請は毎年提出する必要があります。
妊娠期間中は、公益活動の免除事由に該当するか。
出産の場合、妊娠期間中から免除とします。また、妊娠期間が2年度に渡る場合は、2年度とも認められます。ただし、免除申請は年度ごとに提出する必要があります。
公益活動を行うにあたって移動時間が発生するが、この時間も公益活動時間として計算して良いか。
公益的活動を行うにあたって移動時間が片道2時間を超えた場合、2時間を超えた時間について、1日8時間を限度に公益活動時間として算入できます。
公益活動義務の免除制度とは?
満65歳以上の弁護士会員、疾病・留学・妊娠・出産・育児・介護その他公益活動等を行うことが困難である正当な事由がある弁護士会員は、公益活動の義務を免れます(会規7条)。
但し、満65歳以上の弁護士会員以外の免除事由については、毎年、免除の申請を行うことが必要です。
「その他公益活動等を行うことが困難である正当な事由」とは、弁護士活動ができないような傷害を負った場合や、留学に引き続いて行われる海外研修などがあり、公益活動ができないほどの事情があるか否かによって判断されます。
なお、公益活動義務の「一部免除」制度はありません。
「申告」を怠ったら?(義務違反者に対するペナルティについて)
平成18年の会規改正により、公益活動の年度が毎年4月1日から翌年3月31日までに変更になりました。公益活動の申告は、申告書に記入して「毎年4月30日までに申告しなければならない」(会規3条6項)とされており、その活動に従事した時間数が年間10時間に満たないときは、この申告のときに、不足時間数の公益活動負担金を納付する旨を同じ申告書で当弁護士会に申し出なければなりません。
申告義務があるにもかかわらず申告書を提出しない弁護士会員に対しては、申告期限(4月30日)の1か月後を目処に申告書の提出を書面で「催告」します。
義務の履行していない会員が、上記の「催告」をしてもなお、①公益活動の申告も、②公益活動負担金納付の申出も、いずれも催告した期限までにしない場合には、当該会員に「公益活動負担金を納付するよう勧告」するという扱いをします。この場合に納付を勧告する金額は、5万円(不足10時間分)です。
「勧告」を受け、これに従わない場合は、「公表」の対象にあたります(会規9条)。
また、会則22条の2に「弁護士会員は、会規に定めるところにより公益活動等を行う」と定められていますので、会規に違反する行為は、会則上の義務違反として懲戒の対象となります。
みなし公益活動の「申告不要の職」及び「申告が必要な職」とは?
公益活動を行ったとみなすことができ、かつ、当弁護士会において当該役職に就いていることを把握することできる役職(例えば、当弁護士会会長などの一定の職)を、会規の別表1にまとめて一覧できるようにしました(会規3条3項)。
また、公益活動を行ったとみなしうるが、当弁護士会ではその役職に就いていることが把握できない役職(例えば、法科大学院の専任教員、任期付公務員などの一定の職)については、会規の別表2にまとめて一覧できるようにし、申告をした場合にのみ公益活動を行ったとみなすこととしました(会規3条4項)。
なお、法科大学院の専任教員、任期付公務員は改正前の会規では免除事由でしたが、公益活動の申告の対象に変更されました。
委員会出席について
委員会出席については、従前の時間数の申告ではなく、出席回数による申告を可能としました。委員会全体会、協議会、PT、部会等の活動は、出席をもって1回2時間の活動とみなします。
但し、当弁護士会の委員会全体会(協議会、PTは除く)に関しては、事務局にて出席履歴を把握し、自動的に公益活動の時間数として換算しておりますので、申告は不要です。全体会に付随する部会等の活動に関しては、事務局では出席履歴を把握しておりませんので申告をしてください。
多摩支部における委員会活動は、協議会、PT、部会等の活動だけでなく全体会も申告をしてください。