公益活動の手引き

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第1「公益活動」の制度内容

1全体概要

当会の公益活動の制度の概要は、前掲の図のとおりです。

2会則・会規・規則

会則第22条の2において、「弁護士会員は、会規に定めるところにより公益活動等を行う。」と規定され、公益活動を行うことが従前の努力義務から完全な義務へと強化されました。そして、これを受けて、「会員の公益活動等に関する会規」(以下単に「会規」という)によって制度の詳細が定められ、細則として「会員の公益活動等に関する実施規則」(以下単に「実施規則」という)が、また、会規で設けられた「公益活動負担金」の取り扱いについては、「公益活動負担金に関する規則」が定められ、2004年1月1日から施行されました。
更に、施行の実態を踏まえ、2006年度に、会規・実施規則・負担金規則の一部が改正されました。
その後も数度の改正がなされましたが、2015年11月17日に公表制度の導入をはじめとする大幅な改正がなされ、2016年1月25日から施行となりました。主な改正内容は以下のとおりです。

①公表制度の導入

当会における会規の不遵守者は東京弁護士会の何倍にも上っています。この点、東京弁護士会では、不遵守者に対するペナルティとして公表制度を設けており、公表制度というペナルティは、不遵守者に対して履行を促す上で相当の効果があると推測されます。
そこで、当会においても不遵守者に対するペナルティとして公表制度を導入しました。

②各種公益活動の位置づけの並列化

改正前の会規では、国選弁護等のみを義務的公益活動と位置づけ、その他の一般的公益活動は、義務的公益活動に代わるものとして位置づけられていました。しかし、会規が制定された当時とは異なり、国選弁護等は希望しても受任しづらい状況となってきており、国選弁護等のみを義務的公益活動と位置づけ、委員会活動その他の公益活動と区別する意義が乏しくなりました。
そこで、国選弁護等の公益活動と一般的な公益活動を並列的に位置づけることとしました(会規第3条第2項)。

③公益活動のみなし職の会規化、免除事由の会規化

公益活動を行ったとみなすことができ、かつ、当会において当該役職に就いていることを把握することができる役職(例えば、当会会長などの一定の職)を、会規の別表第1にまとめて一覧できるようにしました。
また、公益活動を行ったとみなしうるが、当会ではその役職に就いていることが把握できない役職(例えば、法科大学院の専任教員、任期付公務員などの一定の職)については、会規の別表第2にまとめて一覧できるようにし、申告をした場合にのみ公益活動を行ったとみなすこととしました(会規第3条第4項)。法科大学院の専任教員、任期付公務員は改正前の公益会規では免除事由でしたが、公益活動の申告の対象に変更されました。
さらに、実施規則に規定されていた免除事由を会規に明記し、会規のみを参照すれば免除事由が判明するようにしました(会規第7条)。

④委員会出席や未申告の場合のみなし時間化

委員会出席については、従前の時間数の申告ではなく、出席回数による申告を可能としました(第3条第5項)。
委員会出席回数は事務局において把握できることから、会員の申告手続と事務局の事務処理手続の省力化を図ることが可能となります。
さらに、申告をしない場合には、公益活動負担金を10時間分支払うことで公益活動をしたものとみなされることを明記しました。

3国選弁護等の公益活動

弁護士会員は、国選弁護等の公益活動(図A)として、国選弁護事件、国選付添人事件、国選医療観察付添人事件、国選被害者参加弁護事件、当番弁護事件(少年当番付添人事件を含む)、法律扶助事件を毎年度少なくとも1件受任しなければなりません(完全義務化)。なお、受任とは、当番弁護では、接見のうえ被疑者弁護事件を受任した場合をいいます(2009年度より、クレサラ事件の受任は、国選弁護等の公益活動から除外されました)。

4一般的公益活動

次の一般的公益活動を合計10時間以上行い、それを申告した場合も、公益活動を履行したこととなります。ここでいう、「一般的公益活動」とは、あくまでも、当会の会規・実施規則において規定されたもののみを指します。

  • ア 当番弁護で受任に至らない活動や当会等の行う法律相談(図B①②)
  • イ 一定の範囲の弁護士会活動(図B③④⑤⑥⑫)
  • ウ 法令による官公署の委嘱事項(図B⑦)
  • エ いわゆる「プロボノ活動」(図B⑧⑨⑩)
  • オ 法律、司法制度、法律事務の改善、教育のための活動(図B⑪)

5公益活動負担金

一般的公益活動の時間数が10時間に達しない場合、不足時間数に応じた公益活動負担金(不足1時間あたり5000円、上限年間5万円)を納付することにより、不足時間数の活動に代えることができます(図C)。
この負担金の取り扱いについては、公益活動負担金規則が設けられて特別会計とされ、また、公益活動等の増進に資する事項に支出することができます。

6年度、申告・納付期限

2006年の会規改正により、公益活動の年度が毎年4月1日から翌年3月31日までに変更になりました。なお、入会した最初の年度については、入会した日から翌年度の3月31日までを一年度とします。
申告手続きについて説明します。※P1参照

(1)(図A)の国選弁護等の公益活動を履行した場合

①から⑤の活動の場合、公益活動の申告をする必要がありません。ただし、⑤当番弁護事件は、受任契約書の写しを当番弁護担当事務局に提出してください。
⑥の活動の場合は、公益活動の申告が必要です。

(2)一般的公益活動を履行した場合

毎年、年度終了直後の4月末日までに申告、納付しなければなりません。
一般的公益活動のうち、実施規則で定める一定の職務に就いておられる場合で、それを当会が把握している場合は、申告は不要です。

(3)公益活動負担金を納付する場合

毎年、年度終了直後の4月末日までに申告、納付しなければなりません。

7弁護士法人会員、外国法事務弁護士特別会員、外国法事務弁護士法人特別会員の努力義務

弁護士法人会員、外国法事務弁護士特別会員、外国法事務弁護士法人特別会員は、行うことが可能な公益活動等について、積極的に参加する努力義務を負っています。

8弁護士会員、外国法事務弁護士特別会員、弁護士法人会員、外国法事務弁護士法人特別会員の配慮・協力義務

弁護士会員及び外国法事務弁護士特別会員、ならびに弁護士法人会員、外国法事務弁護士法人特別会員は、雇用する弁護士等の公益活動等への参加について、配慮・協力義務を負っています。

9免除制度

満65歳以上の弁護士会員(当該年度に65歳に達する会員を含む)、疾病・留学・妊娠・出産・育児・介護等の正当な事由のある弁護士会員は、図A~Cの義務を免れます(図D)。但し、満65歳以上の弁護士会員以外の免除事由については、免除の申請を行うことが必要です。

10違反者への処置

前記3、4、8の義務を履行しない場合(5によって履行したとみなされる場合を除く)には、履行の勧告がなされ、これに従わない場合には、公表対象となります。

第2「公益活動」義務化の必要性

1制度の意義

2004年1月1日から実施されている本制度は、基本的人権の擁護と社会正義の実現という弁護士の使命を実現するものとして極めて重要な意義を持つとともに、会員各位の日常業務にも影響をもたらします。
弁護士の使命は、社会的弱者の権利擁護活動、国民の法的サービスへのアクセスの確保、公務への就任、後継者の育成等、弁護士が公共的な役割を担うことによって初めて十全に果たされるものであり、公益活動に従事することは、プロフェッションとしての弁護士の職務に内在する本質的な義務です。
また、そのような活動を通して弁護士に対する国民の信頼をかちえることが、弁護士自治を一層強固なものにします。

2公益活動義務化の潮流

司法制度改革審議会意見書は、弁護士制度改革の項で「弁護士の公益活動については、その内容を明確にした上で、弁護士の義務として位置付けるべきである。また、公益活動の内容について、透明性を確保し、国民に対する説明責任を果たすべきである」としています。
海外では、アメリカ法曹協会の弁護士業務模範規則には、「弁護士は少なくとも年間50時間のプロボノ法律サービスを行うよう努めるべきである」とされています。韓国では、弁護士法の改正により公益活動が義務化され、大韓弁護士協会の「公益活動等に関する規程」により、年間30時間(ソウル地方弁護士会では20時間)以上の公益活動(必要時間を完遂できないときは、1時間あたり2万ウォンないし3万ウォンの納付。1ウォンは約0.1円)が義務付けられています。
わが国では、東京弁護士会が、当会とはやや公益活動の範囲が異なりますが、2004年4月より当会同様、公益活動負担金制度を取り入れた公益活動義務化を行っています。
また、第一東京弁護士会では、2000年より、国選、当番弁護、法律扶助、法律相談事件等の完全義務化(強制化)が実施されています。
当会では、1992年に公益活動を会則上の義務として定めましたが、これは努力義務にとどまっていました。そのため、必ずしも実効性のある制度とはいえませんでした。そこで、2002年3月の常議員会では、国選、当番事件の円滑な運用を実現するために、これらを義務化することが決議されました。
そして、公益活動を完全義務化する会則、会規の改正が、2003年2月25日の総会で可決承認され、2004年1月より実施されました。

施行19年目の2023年度は、免除者等を除いた対象会員4501名のうち、国選弁護等の公益活動実行者数838名、一般的公益活動申告者数1655名、公益活動負担金申告額83,515,000円と大きな効果を挙げております。
(*2024年2月末日現在の2022年度の公益活動集計)

3当会の公益活動義務化の制度趣旨

(1)「基本的人権の擁護」「社会正義の実現」を使命とし、社会秩序の維持、法律制度の改善に努力すべき義務を負う弁護士は(弁護士法1条)、民事事件の一部の例外を除いて法律事務(とりわけ刑事弁護の分野)を独占しています。その弁護士の特性に鑑みて、国民の裁判を受ける権利(憲法32条)、弁護人依頼権(憲法37条)の保障のための活動を行うべきことが求められています。そこで弁護士は、①国選弁護事件、②当番弁護事件、③民事法律扶助について、1年間にこれらの事件のうち少なくともいずれか1件程度は受任することが必要であると判断され、これを義務化することとなったのです(「国選弁護等の公益活動」)。義務化の当初は、クレサラ多重債務者の救済が急務であった当時の情勢を反映して、クレサラ事件の受任もその一つとしました。しかしその後の情勢の変化を受けて、現在ではクレサラ事件の受任は除外されました。
会員の皆様には、弁護士法24条「弁護士は、正当の理由がなければ、...会則の定めるところにより所属弁護士会...の指定した事項を行うことを辞することができない。」の規定を待つまでもなく、ご協力をお願い申しあげるものです。
(2)他方、「公益活動」については多様な意見があり、また、そもそも、公益活動は自発的になされるべきものであるとの意見も根強くあります。当会では、上記(1)の「国選弁護等の公益活動」以外にも、公益活動の範囲自体は広く規定されており、かかる「一般的公益活動」のいずれかを年間10時間行うことで、公益活動を履行することができます。
なお、会規・実施規則で定めたもの以外であっても、弁護士の活動として公益性のあるものは多々存在すると思われますが、当会の「一般的公益活動」として認められるものは、会規・実施規則で規定しているものに限ります。 (3)更に、公益活動負担金(年間上限5万円)の納付をもって、(1)の国選弁護等の公益活動、(2)の10時間(あるいはその不足時間)の一般的公益活動に代替できます。
公益活動負担金は、実際に公益活動に従事する者としない者との間の不公平・不均衡の解消や金銭的貢献への評価等の観点から設けられた制度であって、1時間5,000円を基準としています。

第3「公益活動」の実行方法

1国選弁護等の公益活動の実行(会規第3条第1項)

国選弁護等の公益活動は、当会の公益活動制度の中心(コア的な公益活動)です。
弁護士会員は、原則として、下記①から⑥のうち毎年度少なくとも1件受任しなければなりません。
これらの活動は、弁護士として市民に提供する基礎的な法律事務であり、弁護士が積極的に取り組むことが期待されるところが大きいサービスですから、より多くの弁護士会員が担当することが望まれます。
①から⑤の活動の場合、公益活動の申告をする必要がありません。ただし、⑤当番弁護事件は、受任契約書の写しを当番弁護事務局(人権課)に提出してください。
⑥の活動の場合は、公益活動の申告が必要です。

  • ①刑事事件の国選弁護事件(被疑者国選も含む・結果報告書の提出が必要)(1号)
  • ②少年事件の国選付添人事件(2号)
  • ③国選医療観察付添人事件(3号)
  • ④国選被害者参加弁護事件(4号)
  • ⑤当番弁護士として接見のうえ受任した刑事弁護事件及び少年保護事件(5号)
  • ⑥法律扶助事件(6号)

*ここにいう「受任」とは、当番弁護における接見若しくは所定の法律相談における相談のみに留まらず、被疑者弁護事件(少年保護事件を含みます)の受任、任意整理、破産申立、訴訟提起、調停申立など紛争解決手段の実行を受任することをいいます。
当番弁護の出動・接見のみで終了した場合は、「受任」にはなりませんが、その場合の出動時間や相談時間は、一般的公益活動10時間の計算には含まれます。

*①から④の「受任日」は、法テラスからの指名打診日とします。

受任した事件が困難事案で、翌年度まで継続した場合でも、翌年度の「受任」とは認められません。受任した事件の控訴を受任した場合は、新たな「受任」となります。

*クレサラ事件については、2009年度より国選弁護等の公益活動には該当しませんが、生活保護受給者又はこれと同程度の経済状況にある人について無償又は低額で受任した場合は、一般的公益活動のうち、後記2-C-④に該当します。(同2-C-d(P12)参照)。

*法律扶助事件(⑥)については、いわゆる「持込事件」も含まれます。

*新規登録会員の方は、新規登録弁護士研修において国選弁護も含む刑事事件の受任が必修項目となっていますので、これを履修することにより、同時に国選弁護等の公益活動を実行したことになります。

2一般的公益活動10時間の実行(会規第3条第2項)

弁護士会員は、当会規定の「一般的公益活動」に該当する活動を年間10時間以上行うこともできます。
この場合は、毎年度終了後に活動実績を会へ申告しなければなりません(会規第3条第6項)。
但し、明らかに10時間以上費やすことが予想される活動内容で、かつ、当会事務局において、当該会員がその活動に従事していることが把握できる活動内容を限定列挙として掲げ、その場合には一般的公益活動の申告を不要としました(後記「※みなし公益時間(申告不要の職)」(P14)参照)。

*後述の会規第2条第2号、第3号に該当する一般的公益活動に従事した時間は、すべて算入することができます。受任に至らない当番弁護、法律相談もすべての活動・相談時間を算入することができます(会規第2条第1号エ、カ)。

*算入できる時間は、公益活動そのものに従事した時間及び必要な準備時間のみとし、事務所から活動先への往復に要した時間は原則として含みません。委員会の資料作成などは公益活動に該当します。([資料]一般的公益活動の時間の算定例(P24)参照)
疑問があるときは、総務委員会公益活動推進部会(担当事務局)へ照会してください。

*一般的公益活動については、一般的公益活動の「申告」をすることが要件となります。(「4公益活動等の申告」(P16)参照)

一般的公益活動は、

  • A 市民に提供する基礎的な法律事務としての活動
  • B 弁護士会活動
  • C いわゆるプロボノ事件を含むその他の公益活動(例示列挙)
  • D 法律若しくは司法制度の改善又は法律若しくは法律事務に関する教育のための活動で実施規則に定めるもの(限定列挙)

の4つの種類に分かれます。

A一般的公益活動のうち、市民に提供する基礎的な法律事務としての活動(会規第2条第1号エ、カ)

  • 当番弁護活動で被疑者弁護事件の受任に至らなかった場合の、当番弁護士としての活動
  • 実施規則に定める法律相談

*「実施規則に定める法律相談」とは、本会、日本司法支援センター、財団法人日弁連交通事故相談センターの行う法律相談をいいます(実施規則第2条)。

B一般的公益活動のうち、弁護士会活動(会規第2条第2号)

一般的公益活動となる弁護士会活動等の内容は、会規第2条第2号に定めるとおりです。

  • 本会、日弁連の会長、副会長、監事又は嘱託、本会の事務局長、日弁連の事務総長、事務次長、関弁連の理事長又は副理事長、本会多摩支部の支部長又は副支部長としての活動(ア)
  • 本会、日弁連、関弁連又は東京三会の委員会の委員又は幹事としての活動(イ)
  • 本会の常議員、日弁連の代議員若しくは理事、又は関弁連の理事としての活動(ウ)
  • 弁護士会が運営するADR機関における仲裁人、あっせん人、仲裁補助者等としての活動(エ)
  • 実施規則で定める本会、日弁連、関弁連における活動(オ)
  • その他、本会、日弁連、関弁連又は実施規則に定める団体の委嘱した事項に関する活動(カ)

*②の活動については、委員会への出席1回を2時間の活動とみなします。

*⑤の活動は、以下の活動をいいます。

  • 弁護士業務及び弁護士法人業務に関する専門法律分野の研鑽及び研究成果を弁護士会員及び弁護士法人会員に提供することを目的として本会が設置する法律研究会における代表者、代表者を補佐する者又は会計担当者としての活動(実施規則第2条の2(1))
  • 会長が認定した東日本大震災に関する法律相談の担当者としての活動(実施規則第2条の2(2))

*⑥の団体とは、次の団体をいいます(実施規則第3条)。

  • 公益財団法人日弁連交通事故相談センター(1号)
  • 公益財団法人日弁連法務研究財団(2号)
  • 全国弁護士協同組合連合会(3号)
  • 東京都弁護士協同組合(4号)
  • 日本弁護士国民年金基金(5号)
  • 日本司法支援センター(6号)
  • 東京都弁護士国民健康保険組合(7号)
  • アジア太平洋法律家協会(8号)
  • 国際法曹協会(9号)

*当会からの依頼に応じ、裁判官評価票を顕名で具体的に記載し、かつ、地域委員会又は裁判所総務課への提出を承認した場合、⑥の「本会の委嘱した事項に関する活動」に該当し、裁判官評価票1通につき公益活動1時間と認められます(但し、一般的公益活動【様式1-1】として申告が必要です)。
NIBEN Frontier読者モニターに就任している方は、実際にアンケート回答に費やした時間を、同じく⑥の「本会の委嘱した事項に関する活動」時間として申告することができます。

C一般的公益活動のうち、プロボノ事件その他の公益活動(会規2条3号ア~エ)

会規第2条第3号は、前述のとおり会員の義務としての公益活動等を広く捉える趣旨で、既に述べたコアとなる活動及び弁護士会活動等の他に、次のものを本会の公益活動制度における公益活動等に該当するものとしました。このうち、下記②~④がいわゆるプロボノ活動です。
なお、弁護士が行う公益活動には、この他にもいろいろな種類があると思いますが、本会の一般的公益活動に該当する活動は、会規・実施規則で定める活動に限ります。

  • ①法令等により官公署が委嘱した事項に関する活動で実施規則に定めるもの(第2条第3号ア)
  • ②官公署に対して無償又は低額な報酬で行う法律事務の提供(イ)
  • ③人権の擁護、公的な権利の保障又は社会的・経済的弱者への支援若しくは教育を目的とする団体又は組織に対して無償又は低額な報酬で行う法律事務の提供(ウ)
  • ④犯罪被害者、障害者その他社会的・経済的弱者に対して無償又は低額な報酬で行う法律事務の提供(エ)

a会規第2条第3号ア(→実施規則第4条)

上記①の法令により官公署が委嘱した事項に関する活動については、実施規則第4条第1~16号に、次のとおり定めています。

  • 最高裁判所司法修習生考試委員会委員(1号)
  • 司法試験(第二次試験)考査委員(2号)
  • 裁判所の調停主任又は非常勤裁判官(3号)
  • 民事調停委員(4号)
  • 家事調停委員(5号)
  • 司法委員(6号)
  • 家事審判法第10条に定める参与員(7号)
  • 各地方裁判所の鑑定人(8号)
  • 人権擁護委員(9号)
  • 公安審査委員会委員(10号)
  • 法制審議会委員及び幹事(11号)
  • 工業所有権審議会委員(12号)
  • 中央労働委員会委員(13号)
  • 原子力損害賠償紛争解決センターの仲介委員、調査官、次長及び室長補佐その他これに準ずる職(14号)
  • 前各号のほか、国又は地方公共団体の設置する各種審議会、委員会、審査会、協議会その他の機関の委員等(15号※注1)
  • その他、会規第2条第3号アの規定する法令により官公署が委嘱した事項に関する活動として会長が認定した活動(16号※注2)

※注1財団法人等での活動は、実施規則第4条第15号の活動時間としては認められません。但し、会規第2条第3号ウ(実施規則第5条)に該当する活動を行った場合はこの限りではありません。(会規第2条第3号ウ、エにかかる解釈を参照。)
※注216号の「認定」の申請は、所定の申請書により、遅くとも一般的公益活動の「申告」(後記4(P16)参照)と同時に行う必要があります。申請書式は【様式2】です。

b会規第2条第3号イ

弁護士会等の関与なくして地方公共団体等の委嘱により行われる法律相談の担当者としての活動等が、ここにいう法律事務の提供の主なものと想定されています。
なお、官公署を代理して行う第三者との交渉等についても、それが無償又は低額な報酬で行われる限りは、これに該当するものと認められます。

*ここで問題となるのは「低額な報酬」の意義ですが、地方公共団体の法律相談の中で本会の法律相談報酬(1時間5,000円)よりも若干高額な報酬が支給される法律相談があることから、1時間7,000円程度までの報酬が、「低額な報酬」と認められます。

c会規第2条第3号ウ(→実施規則第5条)

人権の擁護、公的な権利の保障又は社会的・経済的弱者への支援若しくは教育を目的とする団体又は組織に対して無償又は低額な報酬で行う法律事務の提供に該当する活動については、実施規則第5条に例示があります。例示列挙であり、限定する趣旨ではありません。
ここで重要視されるのは、「どのような活動を行ったか」です。実施規則第5条はあくまで例示列挙ですので、会規に記載されている活動に該当し、無報酬あるいは低額であるという要件を満たせば、その活動を行った団体の如何を問わず活動時間として換算することができます。

<1号心身障害者の自立的生活又は就業等を支援する団体>
東京都心身障害者福祉センターなど各都道府県の心身障害者センター若しくはそれと同様の施設、知的障害者更生施設、身体障害者療護施設、知的障害児通園施設、肢体不自由児施設等
<2号少年の保護、教育又は更生の支援等を行う公的又は私的団体>
児童相談所、青少年自立支援施設(旧「教護院」)等の公的機関のほか、各種の私立児童養護施設等
<3号高齢者の健康管理、財産管理、自立的生活又は就業等の支援を行う団体>
高齢者福祉事業団、高齢者支援協会等。また、各地の社会福祉協議会の「権利擁護センター」もこれに該当するでしょう(1号としても該当)。
<4号本邦に在留する外国人の権利を擁護する活動を行う団体>
アムネスティ・インターナショナル、難民支援協会、多文化共生センター等
<5号被災者の支援を行う公的又は私的団体>
東京ボランティア・市民センター、東京ハンディキャップ連絡会等、恒常的に被災者の支援を行う団体のほか、三宅島社会福祉協議会、阪神淡路大震災、東日本大震災時の各種ボランティア団体など実際に起こった災害に対処する団体等
<6号更生保護協会等犯罪者の更生保護を支援する活動を行う公的又は私的団体>
各地の更生保護会、保護司会、更生保護婦人連盟等
<7号犯罪被害者の支援を行う団体>
被害者支援都民センター、被害者支援ネットワーク、いばらき被害者援助センター、その他各地の被害者相談室等
<8号ドメスティック・バイオレンス被害者の支援を行う団体>
東京都女性相談センター、東京ウィメンズプラザ等
<9号外国又は海外の地域において難民その他社会的・経済的弱者を支援する活動を行う非政府組織>
アムネスティ・インターナショナル、アジア人権基金その他のNPO組織等
<10号戦争・災害その他の事由により法律・公共機関等の整備されていない外国又は海外の地域において法規の定立・公共機関の設置等を目的とする活動を行う公的又は私的団体>
国連各機関、海外協力事業団(JICA)等から戦乱終結地域等に派遣される人的組織若しくはそれらの活動を補助する非政府組織

*上記の団体の具体例についても例示であり、これに限定する趣旨ではありません。

d会規第2条第3号エ

「犯罪被害者、障害者その他社会的・経済的弱者に対して無償又は低額な報酬で行う法律事務の提供」とは、前述の会規第2条第3号ウのような団体ないし組織に対して法律事務を提供するのではなく、一定の個人に対して法律事務を提供する場合を指します。
犯罪の被害を受けた個人若しくは個人としての心身障害者その他の社会的・経済的弱者に対して無償又は低額な報酬で法律事務を提供する場合も、前述の会規第2条第3号ウの場合のように一定の団体又は組織に対して法律事務を提供する場合と特に評価において差異を設ける必要がないため、そのような活動をも公益活動と認める趣旨です。

*「社会的・経済的弱者」の意義
=基本的には生活保護受給者若しくはこれと同等の経済的状況にある個人のみが障害者等と同様に「社会的・経済的弱者」と認められます。

*会規第2条第3号ウ及びエのいずれに該当するか問題となりうる事例として、複数の弁護士が弁護団を組織する場合、集団訴訟を受任する場合、弁護士が複数の依頼者から一定の共通の相手方との間の訴訟、交渉等を受任する場合があります。この場合(当然、低額な報酬等他の要件を充足することが必要ですが)、次のように解釈されます。

ⅰ)依頼者が弁護士らに委任する事件の範囲を超えて組織化され、その組織が一定期間恒常的に活動する場合
→原則として、本号ウの問題
ⅱ)依頼者らが弁護士らに委任する事件のみを目的として組織化されている場合
→原則として、本号エの問題

*クレサラ事件については、生活保護受給者又はこれと同程度の経済状況にある人について無償または低額で受任した場合は該当します。

D一般的公益活動のうち、法律・司法制度改善、法律・法律事務教育活動(会規第2条第3号オ→実施規則第6条)

「法律若しくは司法制度の改善又は法律若しくは法律事務に関する教育のための活動」に該当する活動としては、実施規則第6条に、次のように定められています。

  • 法科大学院の教員、又は教務補助者としての活動(1号)
  • 法科大学院からの委嘱による弁護士実務研修に関する法科大学院生の指導担当弁護士としての活動(2号)
  • 本会(委員会、研究会含む)主催の研修及び講演、他の弁護士会、日弁連、弁護士会連合会、法務研究財団、日本組織内弁護士協会の主催する研修及び講演における講師としての活動(3号)
  • 司法書士会、弁理士会その他の隣接士業団体の行う特別研修の講師としての活動(4号)
  • 司法修習生の指導弁護士としての活動(5号)
  • 弁護士法第5条研修の指導担当弁護士としての活動(6号)
  • 大学又は大学院における法律専門科目の講義の講師としての活動(7号)
  • 指導担当弁護士制度に関する規則第4条第3号の規定に基づき指定された指導担当弁護士の活動(8号)
  • 実施規則第5条に定める団体若しくは組織等又は学校その他の教育機関が主催する法教育に関する研修又は講演の講師としての活動であって、無償又は低額な報酬で行うもの(9号)(※注)

※注2020年4月に改正規則が施行されれば2019年度の活動に適用されます。
※改正規則が施行されたら、会員サービスサイトの「お知らせ」https://niben.jp/ member/news/に掲載します。

*この規定は、実施規則第5条とは異なり、限定列挙です。

*1号の法科大学院の「教員」のうち、「専任教員」は申告により公益活動を行ったとみなします(会規第3条第4項)。
なお、専任教員とは、「法科大学院における教育研究活動を本務とし、これに従事する時間などの割合が、他に従事する業務などと比べて著しく高い教員」と「一年につき六単位以上の授業科目を担当し、かつ、教育課程の編成その他の法科大学院の組織の運営について責任を負う教員」をいいます。

*1号の「教務補助者」は、法科大学院のアシスタント・スタッフを指します。

*2号は、エクスターンシップの受入弁護士を指します。

*4号の「その他の隣接士業団体」には、税理士会、公認会計士協会、不動産鑑定士協会、行政書士会、社会保険労務士会等の団体が含まれると考えられます。
なお、「特別研修」とは、訴訟代理に係る資格付与のための研修を指します。


*5号の司法修習生の指導担当弁護士には、指導担当弁護士から事実上、指導を任されている補助者も含まれます(エクスターンシップ受入も同様)。
なお、選択型実務修習におけるホームグランド期間も公益活動として認められます。

*9号の「その他の教育機関」には、図書館、博物館、公民館、社会教育施設(教育基本法第12条、地方教育行政の組織及び運営に関する法律第30条)や、教育に関する専門的、技術的事項の研究又は教育関係職員の研修、保健若しくは福利厚生に関する施設(地方教育行政の組織及び運営に関する法律第30条)などが含まれると考えられます。

*9号の「法教育」の定義については、「法や司法制度,これらの基礎になっている価値を理解し,法的なものの考え方を身につけるための教育」(法務省HPより)や、「個人を尊重する自由で公正な民主主義社会の担い手として、法や司法制度の基礎にある考え方を理解してもらい、法的なものの見方や考え方を身につけてもらうための教育」(日弁連HPより)等をご参照ください。

※みなし公益時間(申告不要の職)
一般的公益活動のうち、申告が不要な職とは以下のとおりです(会規第3条第3項、別表第1)。

  • ①本会の会長、副会長、監事、常議員及び嘱託
  • ②本会の総会の議長及び副議長
  • ③本会の多摩支部の支部長及び副支部長
  • ④日本弁護士連合会の会長、副会長、理事、監事、事務総長、事務次長及び嘱託
  • ⑤関東弁護士会連合会の理事長、副理事長、理事及び監事
  • ⑥弁護士法第5条に規定する研修の指導担当弁護士
  • ⑦本会、日本弁護士連合会、関東弁護士会連合会又は東京三弁護士会の委員会の委員長(東京弁護士会・第二東京弁護士会合同図書館基本協定書第5条第2項第2号に掲げる図書館委員会の委員長を含む。)
  • ⑧本会の懲戒委員会及び綱紀委員会の委員
  • ⑨クラス別研修の担任、副担任及び相談役
  • ⑩弁護士業務に関する市民窓口設置規則第3条の市民相談担当員
  • ⑪司法試験考査委員
  • ⑫司法研修所の教官及び所付弁護士
  • ⑬司法修習生考試委員会の委員
  • ⑭指導担当弁護士制度に関する規則第3条の規定により選任された指導担当弁護士及び司法修習生の指導弁護士
  • ⑮非常勤裁判官
  • ⑯会長が認定した東日本大震災に関する法律相談の担当弁護士
  • ⑰日本司法支援センターの理事長、理事、事務局長、事務局次長、扶助審査委員及び常勤職員
  • ⑱日本司法支援センター地方事務所の所長、副所長及び事務局長
  • ⑲公益財団法人日弁連法務研究財団の理事長、理事及び監事
  • ⑳全国弁護士協同組合連合会の理事長、理事及び監事
  • ㉑東京都弁護士協同組合の理事長、理事及び監事
  • ㉒日本弁護士国民年金基金の理事長、理事及び監事
  • ㉓東京都弁護士国民健康保険組合の理事長、理事及び監事
  • ㉔その他これらに準ずるものとして常議員会で定める役職(※注1)

※注1検察審査会法における指定弁護士が、㉔の準ずるものとして指定されています。

※みなし公益時間(申告が必要な職)
一般的公益活動のうち、申告により10時間以上の活動とみなされる職は以下のとおりです(会規第3条第4項、別表第2)。

  • ①法科大学院の専任教員(みなし専任教員を含む。)
  • ②民事調停委員
  • ③家事調停委員
  • ④任期付公務員(※注2)
  • ⑤司法委員
  • ⑥家事事件手続法第40条の参与員
  • ⑦地方裁判所の鑑定委員
  • ⑧人権擁護委員
  • ⑨公安審査委員会の委員
  • ⑩法制審議会の委員及び幹事
  • ⑪民事行政審議会の委員
  • ⑫保護司
  • ⑬原子力損害賠償紛争解決センターの仲介委員、調査官、次長、室長補佐その他これに準ずる役職
  • ⑭地方公共団体の監査委員
  • ⑮教育委員会の委員
  • ⑯その他国又は地方公共団体の設置する各種審議会、委員会、審査会、協議会その他の機関の委員等
  • ⑰その他これらに準ずるものとして常議員会で定める役職(※注3)

※注2みなし公務員を含みます。
※注3日本組織内弁護士協会の理事、監事、事務総長及び事務次長が、⑰の準ずるものとして指定されています。

3公益活動負担金の納付(会規第6条第1項)

(1) 前記2の一般的公益活動の実行時間が年間10時間に満たない場合は、その不足時間につき1時間あたり5,000円の負担金を会へ納付することにより、前記2の活動の実行に代えることができます。前記2の活動に代えて、すべて負担金の納付という方法を選択することもできます。いずれの場合も、前記2の活動の申告の際に、負担金を納付する旨の申告が必要です(会規第6条第2項)。
国選弁護等の公益活動及び一般的公益活動のいずれも履行しなかった場合でも、負担金を納付することにより、公益活動等の履行がなされたことになります。

国選弁護等の公益活動

*不足時間数は、1時間単位に切り上げられます。 [計算例]一般的公益活動の実行が年間7時間30分
不足時間数は3時間
負担金は5,000円×3時間=15,000円

*負担金は、当年度終了直後の4月30日までに納付しなければなりません。納付の方法は、本会企画課への持参、又は本会の指定する銀行口座への振込によります。 [振込口座]三菱UFJ銀行京橋支店 普通預金2720717 口座名義第二東京弁護士会 *振込人名義は「登録番号氏名」の順としてください。

(2) 公益活動負担金に関する会計は特別会計とされ(公益活動負担金に関する規則第1条)、負担金は公益活動等の増進のために使われます(同第4条)。

*過去において、公益活動を行っていた場合や免除事由があった場合、申請の上、すでにお支払いの負担金はご返金いたします。

4公益活動等の申告(会規第3条第6項)

弁護士会員が、会規・実施規則で定める「一般的公益活動」10時間の実行、又は公益活動負担金の納付によって公益活動の履行に代える場合、その旨を、当年度終了直後の4月30日までに本会へ「申告」しなければなりません。
※ただし、本会がウェブサイトに当該弁護士会員の公益活動として掲載した活動については、この限りではありません。すなわち、委員会全体会(協議会、PTは除く)に関しては、当会で出席履歴を把握し、自動的に公益活動の時間数として換算しております。全体会に付随する部会等の活動に関しては、事務局では出席履歴を把握しておりませんので申告をしてください(部会等出席時に当会アプリ(miNiBen)から出席登録された場合は申告不要です。)。
なお、2016年1月25日以降の全体会、部会については、出席をもって1回2時間の活動とみなします。

*申告には「公益活動等申告書」を用います。
【様式1-1】は、同じ申告書で、「一般的公益活動」の実行の申告と負担金の納付の申告を兼ねる様式となっています。
【様式1-2】は会規第3条第4項別表第2の職についた場合に使用してください。
ひまわりページにこの手引きと書式データを掲載しています。トップページから、「弁護士・司法修習生・事務職員>弁護士の方へ>公益活動の手引き」の順にお入りください。

*申告書はFAX、郵便またはメールにて送付してください。。

*会員専用サービスサイト、当会アプリ(miNiBen)からも申告できます。

官公署委嘱活動の認定申請及び義務免除申請も会員サービスサイト及び当会アプリ(miNiBen)から申告できます。全ての申告が可能ですので、是非ご利用ください。

  • ●会員サービスサイトから申告する場合には、「研修・公益活動」→「公益活動」→「活動申告」の順にお入りください。当会が把握している公益活動については「公益活動履歴」で確認することができます。
  • ●当会アプリ(miNiBen)から申告する場合には、まず、App StoreまたはGoogle Playからダウンロードしてください。詳細は当会ホームページhttps://niben.jp/app/lpの説明及び「よくある質問」でご確認ください。
    (会員サービスサイト及び当会アプリ(miNiBen)のご利用には会員サービスサイトのログインID、パスワードが必要です。ログインID、パスワードの発行をご希望の方は、お名前と登録番号をkanri@niben.or.jp宛にメール送信してください。)
    なお、公益活動履歴一覧に表示されている負担金は、既に支払った額が表示される仕様であり、会員が支払うべき金額が表示されるものではありません。

*申告義務があるにもかかわらず申告書を提出しない弁護士会員に対しては、申告期限(4月30日)の1か月後を目処に申告書の提出を書面で「催告」します。

第4公益活動義務の免除

1義務の免除規定

弁護士会員は、国選弁護等の公益活動を実行することが困難な正当な事由がある場合には、その義務を免れることができます(会規第7条)。

  • 満65歳以上であること(当該年度に65歳に達する会員を含む。)
  • 疾病、留学、妊娠、出産、育児、介護その他会規第2条に規定する活動に従事することが困難な正当な事由があり、かつ、会長の認定を受けたこと

*第2号の「留学」には、留学に引続いての海外研修、ならびに海外に居住し継続的に勤務することを含みます。これらに従事している場合に、当会での公益活動を国選弁護等の公益活動履行することが事実上困難であるためです。

*第2号の「その他」には、国会議員、国会議員政策秘書も含まれます。

*株式会社の取締役や関東近郊の企業内弁護士の場合、あるいは整理回収機構の取締役等の職の場合は、第2号のその他に含まれず、免除の正当事由には該当しません。但し、企業内弁護士であっても遠方に勤務している場合、留学に準ずるとして、免除されるケースがあります。

2免除の要件と正当事由の判断基準

免除事由のうち会規第7条第1号(満65歳以上)は当然に免除になり、申請は不要です。本会の事務局で把握できているからです。
これに対して、第2号の事由は、本会へ免除申請する必要があります。
また、第2号は、「公益活動等を行うことが困難な正当な事由」が要件となり、その事由は本会へ申請して会長の認定を受ける必要があります。

*申請は、「公益活動義務免除申請書」によって行います。申請書式は【様式3】です。

*免除の申請は、前年度と同じ事由であっても毎年行う必要があります。なお、法科大学院の専任教員、任期付公務員は従前は免除事由でしたが、公益活動等の申告が必要となりました。上記申告は【様式1-2】を使用してください。

*育児、介護については、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」「国家公務員の育児休業等に関する法律」に準じて判断することとし、育児については3歳に満たない子がいる場合に、介護については要介護度1以上の対象家族がいる場合に、会員からの申請があったときには、原則として公益活動を免除します。

*疾病による免除を求める場合は診断書、障害者手帳の写しなど疾病が何であるか分かる書面の提出が必要です。会長は診断書等を検討し、疾病により国選弁護等の公益活動を実行することが困難であると認められる場合、正当な事由があることの認定を行います。
(ただし、弁護士会員が重篤な状況の下で、例えば本人に意識がない状態で療養している場合には、ご家族や当該会員の事務方等による申告、または弁護士会事務局がご家族や当該会員の事務方から電話等で確認するなどにより、疾病により国選弁護等の公益活動に従事することが困難な正当事由があるとの認定を行います。原則として毎年診断書等の提出が必要ですが、症状によっては以前提出された診断書等で判断する場合があります。)

*怪我も疾病に含みます。

第5使用者の義務

雇用されている弁護士が積極的に公益活動をするには、その活動が業務時間を割く場合が多いことから、使用者の理解と協力が必要です。そのために、使用者である弁護士会員、外国法事務弁護士特別会員、弁護士法人会員、外国法事務弁護士法人特別会員に対して、配慮・協力の義務付けがされています。

1弁護士会員、外国法事務弁護士特別会員の配慮・協力義務

公益活動が業務時間内で行われることが多いこと、また、その活動が使用者である弁護士会員・外国法事務弁護士特別会員の経済的利益につながらないことから、雇用される弁護士会員又は外国法事務弁護士特別会員が積極的に公益活動をすることに協力を得ることが難しい側面があります。しかし、雇用される弁護士の公益活動は弁護士の使命を果たすことにおいて本質的であり、重要性が高いものです。そこで、使用者である弁護士会員に対し、雇用される弁護士の公益活動への参加に配慮し、協力すべき義務を負わせたのです(会規第4条第1項)。
なお、外国法事務弁護士特別会員が弁護士会員を雇用することができるようになったため、外国法事務弁護士特別会員に対しても、この配慮・協力義務を課すことになりました。

2弁護士法人会員、外国法事務弁護士法人特別会員の配慮・協力義務

上記1と同じ趣旨から、弁護士法人会員、外国法事務弁護士法人特別会員に対しても、社員たる弁護士会員若しくは外国法事務弁護士特別会員、雇用される弁護士会員若しくは外国法事務弁護士特別会員が公益活動に参加することに対し、配慮と協力の義務付けを行っています(会規第4条第2項、第3項)。

第6外国法事務弁護士特別会員・弁護士法人会員・外国法事務弁護士法人特別会員の義務

1外国法事務弁護士特別会員も弁護士法人会員も外国法事務弁護士法人特別会員も弁護士としての使命を果たすべき立場にあることにおいて、弁護士会員と変わりはありません。その趣旨から、外国法事務弁護士特別会員及び外国法事務弁護士法人特別会員会規第3条の2及び弁護士法人会員会規第19条は、それぞれ外国法事務弁護士特別会員、外国法事務弁護士法人特別会員、弁護士法人会員は公益活動に参加するように努めなければならないと規定しています。

2これを受けて、会員の公益活動等に関する会規第3条第9項は、外国法事務弁護士特別会員及び外国法事務弁護士法人特別会員は、公益活動のうち、外国法事務弁護士又は外国法事務弁護士法人として行うことが可能な活動について積極的に参加するよう努めなければならないと規定しています。

*外国法事務弁護士又は外国法事務弁護士法人として可能な活動としては、次のものなどが考えられます。

  • 委員会活動(個人の場合)
  • 弁護士会の委嘱に基づく外国法、外国司法制度等の調査
  • 弁護士会の委嘱に基づく外国法事務弁護士に関する調査
  • 外国人の人権救済活動
  • 本会の行う研修の企画、講師、その他の協力
  • 法科大学院への協力

3同様に、会規第3条第8項は、弁護士法人会員は、公益活動のうち、弁護士法人として行うことが可能な活動について積極的に参加するよう努めなければならないと規定しています。

*弁護士法人は、法制上は、個人の受任を前提としている国選弁護、国選付添、当番弁護以外のすべての「事件」の受任が可能です。従って、一般的公益活動は、個人を前提とするものを除き、すべて実行可能といえます。

4これらの規定は、外国法事務弁護士特別会員、弁護士法人会員、外国法事務弁護士法人特別会員それぞれの特殊な地位を尊重しつつ、可能な限り公益活動に積極的な取組をするよう要請するものです。

5外国法事務弁護士特別会員及び外国法事務弁護士法人特別会員会規第3条の2及び弁護士法人会員会規第19条を受けた会規第3条第8項、第3条第9項は、それぞれ、「努めなければならない」と規定されており、努力義務となっています。
しかしながら、公益活動への参加は弁護士の職務に内在する本質的な義務ですから、努力義務といえども真摯な取組が求められます。

第7義務履行の勧告を受ける場合

1国選弁護等の公益活動(会規第3条第1項)、一般的公益活動(会規第3条第2項)不履行に対する公益活動負担金納付の勧告(会規第8条第1項)

(1)勧告できる場合

公益活動義務免除の申請も、公益活動の申告あるいは申告不要の職への就任も、公益活動負担金納付の申出もないにもかかわらず、会規第3条第1項、第2項の義務を履行していない場合には、会長は、その会員に対して、公益活動負担金を納付するよう勧告することができるとの規定が設けられています(会規第8条第1項)。

(2)勧告に至るまで及び勧告の時期・程度

ア 公益活動の申告は、申告書に記入して「毎年4月30日までに、前年度において~活動に従事した時間数を会へ申告しなければならない」(会規第3条第6項)とされており、その活動に従事した時間数が年間10時間に満たないときは、この申告のときに、不足時間数の公益活動負担金を納付する旨を同じ申告書で本会に申し出なければなりません(会規第6条第2項)。

イ 4月30日を過ぎても、前年度に第3条第1項、第2項の義務を履行していない会員から、①公益活動の申告も、②公益活動負担金納付の申出も、いずれもなされない場合は、その会員には、本会から、申告書の提出を「催告」します。

ウ 前年度に第3条第1項、第2項の義務の履行していない会員が、上記の「催告」をしてもなお、①公益活動の申告も、②公益活動負担金納付の申出も、いずれも催告した期限までにしない場合には、会長は、会規第8条第1項により、当該会員に「公益活動負担金を納付するよう勧告」するという扱いをします。

この場合に納付を勧告する金額は、5万円(不足10時間分)です。

2配慮・協力義務(会規第4条)履行の勧告(会規第8条第2項)

雇用される弁護士又は外国法事務弁護士特別会員に対する使用者である弁護士会員、外国法事務弁護士特別会員の、社員たる弁護士、社員たる外国法事務弁護士特別会員、雇用される弁護士、外国法事務弁護士特別会員に対する弁護士法人会員、外国法事務弁護士法人特別会員の、公益活動等参加への配慮・協力義務(会規第4条)が履行されていないと認められる場合には、会長から配慮・協力義務履行を勧告する制度があります(会規第8条第2項)。
雇用される弁護士などが公益活動に参加することが、使用者である弁護士、外国法事務弁護士特別会員、弁護士法人会員、外国法事務弁護士法人特別会員により妨げられていると認められる場合には、この勧告がなされることとなります。

3公表(会規第9条)

会長は上記1、2の勧告に従わない会員等について氏名等を会館内に掲示して公表することができます。

第8義務違反について

1会則第22条の2に「弁護士会員は、会規に定めるところにより公益活動等を行う」と定められていますので、会規に違反する行為は、会則上の義務違反として懲戒の対象となります。

2また、第7において解説した「勧告」を受け、これに従わない場合は、公表の対象にあたります。なお、公表は、公表する旨の文書が公表対象会員に到達してから15日を経過した後に行い、掲示の期間は2週間とします。

以上