出版物・パンフレット等

この一冊Vol.132『「AI失業」前夜―これから5年、職場で起きること』


『AI失業」前夜―これから5年、職場で起きること』
PHP研究所
税込価格961円(本体価格890円)

今回、「『AI失業』前夜」という本をご紹介します。
2年位前に、筆者鈴木貴博さんの講演をお聞きしたことがあり、AI(人工知能)により将来人類の仕事は全てなくなるという、衝撃的なAI失業の話でしたが、まだ先のことであろうという感じで聞いていました。
今回の本では、各分野におけるAI開発が急ピッチで進められており、分野によっては5年・10年のうちに早くもAI 失業が発生するとされ、人類は今まさにAI失業前夜を迎えているという内容になっています。
AIに関しては、2014年にオックスフォード大学のオズボーン准教授(当時)が、このままいくと20年後には人類の仕事の約半分が人工知能や機械に奪われて消滅する可能性があるとする論文を発表し、世界に衝撃を走らせましたが、現在ではこの20年という期間はもっと早まるのではないかと言われています。
この点、記憶に新しい出来事として、2016年にグーグルが開発したAI囲碁ソフト「アルファ碁」が、当時世界最強の棋士の一人と言われた韓国の李世(イ・セドル)棋士を4勝1敗で撃破した件がありました。当時、囲碁はまだ未解明の部分が多く、AI囲碁ソフトがプロ棋士に勝つのはかなり先であろうと言われていたため、この進化のスピードには誰しもが驚嘆しました。この本では、ほかにも興味 深いAI商品がいろいろ紹介されています。
例えば、英語圏ではAI秘書がすでに商品化され、当初は使い勝手が悪かったにもかかわらず、最近はその進化が著しいそうです。ある社長がうっかり会議をすっぽかした際、AI秘書は、数回社長にアクセスしてもつながらないことから社長が会議を忘れたと判断し、関係各所におわびのメールを送った上、再度日程調整を行い、新しい会議スケジュールの設定まで済ませたという実話が紹介されています。また、弁護士の仕事がどう なっていくのかについても書かれています。
現在日本の弁護士AIの開発は、マーケットが小さいため先行的に行うのは経済的に見合わないという理由で後回しにされています。一方で、「フィンテック」と「自動運転車」等の開発が急ピッチで進められており、その結果、「金融」と「運輸」の業界において10 年以内に大量リストラが発生すると言われています。
ただ、訴訟社会のアメリカでは弁護士AIの研究開発が進められているとのことで、「金融」「運輸」のAI開発がひととおり完了した後、早晩弁護士AIが開発され、特にビジネスロー分野の仕事はなくなってしまうのかもしれません。
弁護士として、更には一人の人間として、これからの仕事や人生をどのように過ごし、あるいは備えていくのか。AIや再生医療(遺伝子工学)という新しい技術の登場により、非常に悩ましいことになりそうです。

当会会員 逢坂 哲也(53期)●Tetsuya Ousaka