出版物・パンフレット等

花水木

もとより、企業のミッションは、社会全体の幸福を実現すること、人々の暮らしをより良いものとすることと決まっている。起業家、ビジネスマンに限らず、企業と関わり仕事をする者は、これにコミットし、社会的相互関連性の中で、生きがいを感じながら生きている。弁護士も同じである。山田秀雄先生が第二東京弁護士会の会長に就かれた際、僕の机にも就任の挨拶が届き、開けると、「弁護士の仕事とは、社会における正義の総量を高めること」と書かれていた。
弁護士になってから、いわゆる合コンにしばしば参加した。「なぜ弁護士になったの?」と聞かれた際には、社会正義の実現と基本的人権の擁護、弁護士は六法全書片手に国家とも喧嘩できる職業、大企業の顧問弁護士も良いがむしろ弱者救済、目の前の困っている人を助けるような仕事がしたいから、と答えるようにしていた。これは、アメリカの弁護士ドラマの『SUITS/スーツ』におけるハーヴィーではなく、マイクの方がモテると打算したからでもあるが、実際モテたと思う。かかる思想を体現すべくと言い訳しながら久保利英明先生と同じモデルのCHANELのJ12(腕時計)を購入したのは弁護士3年目の頃であった。
弁護士となり、社会における正義の総量を高める、ひいては社会全体の幸福を実現するという最高のミッションを与えられた僕は、NIKE の〝Just Do It.- 行動あるのみ!〝をモットーに、依頼があった案件はできるだけ全て受けるようにしてきた。その過程で、原告・被告、市民側・企業側、正義・悪と単純に割り切れるとは限らず、目の前にある紛争を、直接的、間接的に裁判所の力を借りつつ、なんらかの形で落着させ、当事者に次の一歩を踏み出してもらうこと、それ自体が経済的合理性、もとい、価値、「正義」であるという経験論を得た。
弁護士6年目に入っての感想は、端的に「最高に幸せ」である。案件、顧問先を通じて、社会における正義の総量を高めることに少しでも貢献していると実感できているからである。弁護士1年目から自分で案件と顧問先を獲得し、着手金や顧問料を請求し、勝訴すれば敗訴もして、顧問先との契約解消も経験した。大事なことは自分の幸福に対して責任を持つということだと思う。
今後のテーマは、『Antifr- agile /反脆弱性』と『カスタマーサクセス』。どちらも最近読んだ本のタイトルである。反脆い弁護士としてカスタマーサクセスを実現したい。
ホワイト弁護団でご活躍の大川原栄先生にウェール法律事務所を紹介してもらい、石井逸郎先生、川本一徳先生からカッコいい大人の哲学を教わった。この3人の先生方には感謝しかない。また、まだまだ未熟な自分に顧問弁護士としてのチャンスを与えていただいている顧問先の社長の方々には心から感謝している。
「自分を変えられる人は、社会も変えられる」という言葉がある。まだ変われるはず。もう少し変わるため、いざ尋常に、ただし、しなやかに、歩き出したい。


桜井 康統 (66期)
●Yasunori Sakurai