出版物・パンフレット等

花水木

平成21年12月に弁護士登録した私は、ロースクールでの恩師(ボス)に拾われて一般民事事務所に就職した後、当該事務所に登録を残したまま平成26年4月より、東京都国分寺市に任期付公務員として勤務しています。早いもので5年を経過し、事務所勤務の期間を市役所勤務の期間が上回るようになりました。そうなるとは当初想定していなかったのですが、やりがいと居心地の良さ、それから少しのアクシデントにより、ボスの許しも得て随分長く勤務することとなりました。
事務所勤務時代、ボスとの仕事は(時に正面から逆らい議論しながら)ボスの意思を確認して行い、個人事件では方針を自分の裁量で決定する自由とそれに伴う責任を感じ、いずれの場合も依頼者と直接向き合うことが基本であり、「こういうのがやりがいというものなのかなあ」と漠然と思っていました。
他方、自治体法務の仕事は、ありとあらゆる市民生活に密着している市役所各課のバックサポートが主であり、「法に基づく行政」を支える屋台骨でもあります。現在唯一の法曹有資格者かつ正職員として、私の判断は一定の重みを持って扱ってもらえますが、組織としての最終的な意思決定をするのは大抵私ではありません。組織の中で、多数人が関与して意思決定がなされていく過程で「歯車」として働くことも、非常にやりがいがあると知りました。
「組織の歯車」などと言うと非常にネガティブなイメージを抱かれるかもしれません。しかし、多くの歯車が組み合わさってできている複雑な機構において、各歯車が持ち場で十分に性能を発揮し、寸分の狂いなく噛み合い、必要な動力を正しく伝達することで、全体が機能的かつ効果的に稼働し、大きな成果を生み出す......そんな様子を想像すると、美しいしワクワクしませんか?(もちろん実際はうまくいかないことも多いのですが......。)自治体ですので、求められる成果は公益そのものです。そのために、意欲をもって力を尽くす、替えのきかない高性能の歯車でありたいと思います。そこで必要なのは、パーツとしての精度の高さと、周りとうまく噛み合って回れる能力であり、つまり法律家としての専門的能力とコミュニケーション能力であるとすれば、これらを磨く「歯車」経験は、将来的に組織を出た後も決して無駄にはならないと思っています。
ところで、国分寺市は新潟県佐渡市と姉妹都市であり様々な交流をしています。休暇を利用して佐渡に旅行する職員も多く、私も一昨年は1 人で、昨年は職場の同僚と5 人で「渡佐渡」しました。尖閣湾でグラスボートに、小木でたらい舟に乗ったり、宿根木の古民家前でポーズを決めたり(偽吉永小百合)、ユースホステルから日本海に沈む美しい夕陽を眺めたり、稲穂実る田の上空を舞うトキを発見したり、酒蔵で飲み比べを楽しんだりして、佐渡がすっかり気に入ったので、今年もまた行きたいなと考えています。なんといっても佐渡の日本酒は素晴らしく、北雪、真綾、至、天領杯、金鶴、真野鶴等の佐渡の酒達との出会いも、自治体勤務で得られた(?)嬉しい収穫でした。


国分寺市イメージキャラクター
ぶんじほたるホッチ

柳井 幸 (62期)
●Sachi Yanai