出版物・パンフレット等

山椿

平成の30年を振り返る
平成から令和に変わり3か月ほどが過ぎているでしょうか。この原稿を書いているときは平成が終わり、令和になったばかりです。私は昭和63 年4月4日に弁護士登録し当弁護士会に入会しています。弁護士として過ごした30年は平成の30年です。多くの出来事が思い出されますが、平成の30 年を一言で表現すれば、国内ではバブル経済の崩壊と災害であり、海外では冷戦の終結と文明の衝突の始まりです。バブル経済の始まりは、昭和60年9月のプラザ合意といわれています。円高、金利の引下げにより、土地の価格、株価が高騰、景気が過熱し、平成元年12月に日経平均株価が3万8915円の最高値を記録しました。海外から「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と持ち上げられ、日本人もその気になり、調子に乗って浮かれていた時代でもありました。深夜でもタクシー待ちの列ができる状態でした。このことだけでもどれほど浮かれていたかが分かると思います。しかし、平成2年になると株価や地価が下落し、平成3年には証券会社の損失補てん問題が発覚、経済は制御不能の状態に陥っており、バブル経済が崩壊し、失われた10年、20年の始まりとなりました。その後、住専問題、証券会社の損失隠し、銀行の不良債権問題等が生じ、平成9年11月には北海道拓殖銀行、山一証券が破綻しました。平成10年には銀行に公的資金が導入されました。その後も、紆余曲折がありましたが、銀行や保険会社の合併、構造改革等を経て、失われた20年はようやく終わりました。明るい兆しが見え始めたところで、平成20年9月にリーマンショック、日経平均株価が6994円の最安値を記録し、「派遣切り」、「貸し剥がし」等が問題になりました。最近は実感のない経済成長が続いており、一見順調に見えますが、平成の初めから課題になっていた構造改革、財政健全化、年金問題、少子化対策等の解決の目途は未だ立っていません。

平成の災害について、記憶に強く残っている災害だけでも、平成3年雲仙普賢岳の大火砕流、平成7年阪神・淡路大震災、平成16年新潟県中越地震、平成23年東日本大震災、平成28年熊本地震、平成30年西日本豪雨、北海道胆振東部地震などがあります。今後発生する可能性がある大地震として、東海地震、南海トラフ地震が指摘されています。東京は幸いにも関東大震災以後、大きな地震に遭っていませんがこの幸がいつまで続くかは分かりません。

経済の低迷や災害について書き連ねると、平成は暗い時代であったような印象を与えますが、平成の時代は戦争のない平和な時代であり、人々の日常生活は明るい面も多く、都心部では土地利用の規制緩和により、高層ビルが多く建設され、街並みが大きく変わりました。特筆すべきはICT(情報通信技術)の飛躍的な発展が人々の生活を大きく変えたことです。これからもAI(人工知能)技術の発達とともに、社会を大きく変えていくことになるでしょう。最後に、平成から持ち越された多くの問題もありますが、令和の新時代が平和で災害のない幸せな時代になることを願います。

吉田 繁實(40期)
●Shigemi Yoshida

NIBEN Frontier●2019年8・9月合併号