出版物・パンフレット等

夏季ジュニアロースクール2019

1 ジュニアロースクールとは

 夏季ジュニアロースクールは、「法教育の普及・推進に関する委員会」が、毎年子どもたちの夏休み期間中に実施している一大イベントで、法的なものの見方・考え方を身に着けてもらうことを目的に、小中高生を対象として模擬裁判などの授業を行うものです。今年度は、8月6日に高校生対象、8月7日と8日には中学生対象、同じく8月8日には小学生対象のクラスを開催し、過去最大のイベントとなりました。ジュニアロースクールは、今年で小学生を対象としては3回目、中学生を対象としては9回目、高校生を対象としては2回目の開催となります。

2 小学生の部について

 小学生対象の授業は、「サッカークラブのコーチを選ぼう」という題材を通じて、①選択する際に必要な情報は何かを考えてもらい、 ②自分たちで収集した情報をもとにサッカークラブのコーチとして適しているのは誰かということを判断してもらいました。
 使用した教材は、小学生にとって身近なクラブ活動を舞台としています。今まで一度も試合に勝ったことがない小学校のサッカークラブが、最後の大会で1勝するために、3名の者に扮した弁護士に対して実際に質問をして、自らの手で判断に必要な情報を聞き出してもらいました。そのうえで、コーチに適切と判断する理由をしっかりと考えて、実際に投票してもらいました。
 この授業は、「物事を選択する際に、条件を設定し、情報を集めたうえで、理由付けをすることが重要」ということを学ぶのを目的としています。また、理由付けを意識することで、論理的なものの考え方を学んでもらうことも目的としています。
 参加してくれた子ども達は、同じ班になった子ども達・弁護士と意見交換をしながら、コーチを選ぶということに真剣に向き合っており、「選ぶ」ということの重要性を実感してくれたようでした。
 授業終了後は、一緒に授業を受けた子ども達とともに、弁護士も加わり一緒に昼食を取りました。子ども同士や私たち弁護士と子ども達との会話も弾み、とても楽しい時間となりました。
 授業を通じて、「選ぶ」ことの重要性を学んでもらうと同時に、色々な人と交流する楽しさも感じてもらえたのではないかと思います。

小学生の部の授業風景
小学生の部の授業風景

3 中学生の部について

(1)模擬裁判に臨むにあたっての準備

 今年の中学生の部は、刑事模擬裁判を題材に、生徒の皆さんに検察官グループ、弁護人グループに分かれてもらい、証人2名及び被告人への反対尋問(質問)を検討することと、意見陳述(論告、弁論)を検討することの2つを大きなテーマとして実施しました。
 はじめに、弁護士らが模擬裁判を実演しました。ワークシートを用意し、生徒たちには、証言内容等について各自でメモを取ってもらいました。

(2)尋問事項の検討

 今回の事案は、被告人がとある資産家の男性を殺害し、現金を奪ったとして、強盗殺人罪で起訴されたというものでした。被告人は犯行を否認しているところ、被告人を現場付近で見たという検察側証人と、アリバイを主張する被告人の供述及び弁護人側のアリバイ証人が存在したため、それぞれの証言の信用性が主要な争点となっていました。メモを基に、それぞれのグループで、反対尋問の内容を検討しました。(写真参照)。

反対尋問を検討する生徒たち
中学生の部 反対尋問を検討する生徒たち

(3)いざ反対尋問

 昼食をはさんで、午後には、生徒たちに実際の弁護人、検察官になりきって反対尋問(質問)してもらいました。納得のいかないポイントを厳しく追及する姿勢を見せる生徒もいるなど、証人役の弁護士がタジタジとなる様子も見受けられるほどでした。

(4)最後の意見陳述

 尋問の結果わかった事実を踏まえ、双方の立場から最終的な意見陳述として論告・弁論を検討してもらいました。生徒たちも、判明した事実を積み重ねて論理的に考えるということに、難しさと同時に楽しさを感じていたようです。
 終了後のアンケートでは、「議論が楽しかった」「また参加したい」という意見が多くみられ、生徒たちの多くは、模擬裁判を通じて、様々な学び、気付きを得た様子でした。

4 高校生の部について

 午前の部では、大人と子どもの違いをテーマに①成人年齢②婚姻年齢③少年法の適用年齢④選挙権の年齢⑤飲酒年齢を、何歳にすべきかについて立論してもらいました。
 高校生には、議論のために国会答弁資料や、対立意見の資料、データを用意しました。最初は直感で「こうだ」と考えていた高校生達が、資料を見ることで意見の対立点を把握したり、ある意見を根拠づけている理由に対しての反論資料を探したりするなど、まさに大人顔負けの議論を交わしていました。
 午後の部では、モデルで一躍有名となった人が、芸能事務所を移籍する際、今後の俳優業の許可、高報酬、レッスン代の経費負担、専属契約の可否等につき、新たな芸能事務所の社長と契約内容を交渉する、という事例を基に契約交渉を行いました。
 社会について語る機会以上に、自分自身が行う契約をどう形成していくかという練習をする機会は少なく、授業終了後に高校生からは、「良い経験になった」という意見の一方、芸能事務所の社長役の弁護士が「怖かった」等の意見が出ており、弁護士が演技を張り切りすぎたのかもしれません(笑)。
 高校生の部では、他業種のゲストや取材者も多く、活気にあふれた一日となりました。

5 おわりに

 これだけの規模でジュニアロースクールというイベントを開催できたのは、当委員会の弁護士だけでなく、大学生・大学院生ボランティアの参加や、第二東京弁護士会事務局の皆様の多大な尽力のおかげでした。この場を借りて改めて御礼申し上げます。