遠い空から~元気にがんばっています~
本コーナーでは、全国各地にある公設事務所に赴任した当会出身の弁護士が当地での活動を紹介します。
高知弁護士会会員 長田 智己 (68期) ●Tomoki Osada
1 中村ひまわり基金法律事務所の紹介
中村ひまわり基金法律事務所は、高知県西部、四万十川の流れる四万十市(旧中村市)に、2007年に設置された公設事務所です。私は2018年の1月から、中村ひまわり基金法律事務所の4代目所長としてこの地に赴任しました。
四万十市を管轄する高知地家裁中村支部、中村簡易裁判所には裁判官が1名ずつ、検察庁中村支部には検察官が1名、どちらも常駐されていますので、受任事件の多くは、四万十市内で完結します。2019年9月現在、支部管内の人口約9万人に対し弁護士は法テラスのスタッフ弁護士2名と私の計3名のみですので、弁護士一人一人の役割は大きなものとなっています。
2 四万十市の紹介
しかしその代わり、四万十市を含む幡多地域は高知市周辺とは異なる文化が発達しており、土佐の小京都と呼ばれる四万十市の街並みや、四万十川をはじめとする風光明媚な景観など、魅力あふれる場所です。特に山間部には雄大な自然が数多く残っており、先日車で夜の山路を走っていた私は、一晩のうちに野生のタヌキとウサギと鹿に遭遇するという経験をしました。
そして、四万十市一番の売りは、なんとい っても四万十川でしょう。司法過疎地の例に漏れず人口は減少傾向にある四万十市ですが、大型連休や夏休みの時期になると、日本最後の清流を目当てにやって来る観光客で、市内の宿は一杯になります。上流に行けば橋桁のない沈下橋を収めた風景はとても風流ですし、河口から少し足を延ばせば、四国最南端足摺岬からの雄大な眺望が楽しめます。私自身も休日には、四万十までついてきてくれた妻とともに川の風景を眺めながらドライブをしたり、ラフティングなどのアクティビティを楽しんだりと、川のある生活を満喫しています。
3 中村ひまわりでの活動
(1)受任事件について
これまで前3代の先生方の御活躍があり、現在事務所には継続的に新規相談が入ってきます。扱う事件の内容は損害賠償、不動産関係等の一般民事から、離婚、遺産分割等家事事件、債務整理、刑事国選と幅広くありますが、最近は保険会社から持ち込まれる民事の交通事故案件や、刑事の飲酒運転など、自動車絡みの事件が増えているような印象です。また、成年後見、破産管財等の裁判所依頼事件も入 ってきており、地域において弁護士が必要とされている、という実感、そして同時にその責任を、常に感じているところです。
(2)外部機関との連携等
通常の事件活動以外にも、市民の方々向けに身近な消費者法や家事事件等についての講演を依頼されることもあります。更には情報公開・個人情報保護審査委員として市の個人情報保護の方針について議論に加わったり、県立病院の倫理委員を務めて新規の治療方法の法的倫理的な問題点について意見を求められたりと、地域に根差した弁護士として、求められることは何でもやろう、という気持ちで活動しています。
(3)食べ物
高知といえば、おいしい食べ物とお酒は特筆すべき点の一つでしょう。仕事をしている中でも依頼者の方から、新鮮な魚や野菜、お酒など、なんとも素敵な差入れをいただくことがあります(弁護士報酬の支払ではありません。念のため。)。高知県は全体として日本酒やカツオのタタキが有名ですが、四万十市ではこれに加え、四万十川でとれる天然の鰻、鮎などの川魚や、川エビ、アオサのり、更には、近隣の土佐清水で水揚げされる清水サバ、山間の地域の山菜などが楽しめ、食通にはたまらない地域です。
4 最後に
弁護士は社会インフラの一つである、と言われることがあります。しかし、町を歩けば法律事務所の看板がいくつも見つかる都会と異なり、四万十市をはじめとする司法過疎地では今でも、どうすれば弁護士に相談できるかがわからなかったり、そもそも弁護士に相談する、という発想すらなかったりという理由で、不利益を被ってしまう方が多くいらっしゃいます。住んでいる地域にかかわらず全ての人が良質なリーガルサービスを受けられる、そんな社会を目指して、第二東京弁護士会で培ったフロンティア精神を忘れずに、今後も地域のインフラとしての役割を、全うしていきたいと思います。