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新入会員に贈るメッセージ

身につけて欲しい弁護士業務の基本


髙﨑 玄太朗(46期) 当弁護士会会員 ●Gentaro Takasaki
〈略歴〉
1994年 弁護士登録(46期)
2001年10月〜2009年3月 広報室嘱託(『NIBEN Frontier』副編集長)
2011年度 非弁取締等対策委員会委員長
2012年度 当弁護士会副会長
2013年度 国際委員会委員長
2017年2月〜2019年5月 日弁連事務次長

はじめに

新入会員の皆さん、入会おめでとうございます。

私は1994年に福岡県弁護士会に登録し、1997年に当弁護士会に登録換えして現在に至ります。現在の取扱業務はほぼ国内案件で、医療用医薬品卸・証券会社等の顧問会社の業務に関する訴訟やアドバイス、労働関係の訴訟等が中心です。最初に入所した福岡の事務所では、寛容な ボスの下、事務所の顧問会社の訴訟を中心に比較的自由に仕事をさせてもらいながら、個人事件として、法律相談センターで受任した民事事件・国選事件(ほぼ月1件)・破産管財事件等を手がけていました。最初の頃は、とにかく来た事件を迅速適正に処理することだけを考えていたように思います。

以下は、過去の自分を振り返り、自戒の意味も込めたメッセージです。

新人弁護士に贈るメッセージ

(1)社会人としてのマナーと社会常識を身につけよう

私は、社会人経験がないまま修習生となったため、ごく基本的なビジネスマナーや会社の仕組みなどが全く分かっていませんでした。名刺の出し方も知らず、27歳の若造でありながら、当時流行っていたダブルのイタリアンスーツに鮮やかな色物のシャツを着ていました。思わず「どこの社長だよ」と突っ込みを入れたくなるところです。汗顔の至りです。

登録してすぐに顧問会社ができて顧問契約 書を交わした後、請求書を出すことも知らず、しばらく顧問料が口座に振り込まれないことを不思議に思っていたことも忘れられません。新人弁護士は、弁護士資格を持っていても 社会人1年生。ハウツー本やセミナーで勉強したり、周囲のお手本になる人物の立ち居振る舞いを参考にしたりして、まずは社会人としてのマナーと社会常識をしっかり身につけましょう。それは、依頼者の安心感につながり、自ずと仕事の依頼につながるはずです。無自覚な悪目立ちは避けた方が無難です。

(2)しっかり依頼者の話を聴き取ろう

依頼者の話をしっかり聴くことは、依頼者との信頼関係を築く上で最も重要であるとともに、正確な事件処理をするための必須条件です。事件処理を行う上で最も重要なのは、法律の適用の前提となる事実であり、事実を知っているのは依頼者です。法律相談を受けたときは、まずは虚心坦懐に、辛抱強く、依頼者から事実をしっかり聴き取りましょう。また、会社からの相談の場合、その業界の商慣行や取引の仕組みをしっかり聴き取りましょう。法的な助言は最後の最後にすればよし。話の腰は揉むべきもので、決して折ってはいけません。

(3)資料(書面等)と依頼者の話が整合するかを常に意識しよう

依頼者から聴き取りをする際には、必ず、依頼者の手元にある書類等の資料の提供を受けるようにしましょう。書面は、依頼者の話の確度を示す重要なポイントとなります。例えると、書面は吊り橋を吊っている支柱で、依頼者の話は支柱で吊られている橋です。依頼者の話が書面の内容や時系列と無理なく整合していれば、安心してその吊り橋を渡ることができます。逆に、依頼者の話が書面の内容や時系列と整合しない場合やあるべき書面が存在しないような場合は、支柱が欠けた吊り橋ですから安易に渡るのは危険です。「書面主義で世間知らずな裁判官を納得させるため」を口実に、色々な角度から、整合しない理由を慎重に確認しましょう。依頼者も善良で正直な人間ばかりではありません。得てしてそこには依頼者が弁護士に隠そうとしている事情や嘘が隠れています。

(4)依頼者のために最も良い解決を全身全霊で考えよう

「依頼者のために最も良い解決」といっても、理系の科学分野とは異なり、弁護士業務には常に絶対的な正解があるわけではありません。我々はすぐに訴訟をベースに物事を見てしまいますが、訴訟は紛争解決手段の一つに過ぎません。時間的・経済的コストをかけても訴訟で決着するのが妥当な案件もあるでしょうし、例えば、継続的な関係がある相手であれば、あえて争わずに「貸し」を作って終わる方が合理的な場合もあるでしょう。

依頼者が最大限の請求や主張をしなければ気が収まらないけれども、その請求や主張が通る可能性が非常に低い場合、逆に依頼者が争いを好まず、相手方からの過大な請求を受け入れて争いを避けようとしている場合に、依頼者の意向や心の平穏を重視してその決断を尊重するべきなのか、それとも法律の土俵で戦うよう依頼者を説得するべきなのか。これらの問題には絶対的な正解はありません。依頼者のパーソナリティ・事案の性質・実際に発生する経済的社会的影響など個別具体的な事情に応じて、それぞれの弁護士が、自分の 利害得失(=得られる弁護士費用)を離れ、全身全霊をかけた価値判断で、依頼者のために 最も良い解決とは何かを探るしかありません。このような正解がない問題に自分なりの答えを出すためには、法律的な知識や判断が正確なことは当然として、何が正しいのかについて自分なりの見識を持つことが必要です。そのために私がお勧めするのは、短く簡単な言葉で人間の本質を論じた、プラトン・スト ア学派・孔孟老荘等の哲学の古典を読むことです。また、人間や人間性に対する洞察力を養うために、人間の美しさ・愚かさ・狡さ・弱さ・残酷さ等を描いた、ギリシャ悲劇・春秋左氏伝・史記・シェークスピアの作品等の古典文学を読むこともお勧めします。

私を含めて人間は決して無垢で善良なだけの存在ではありません。これらの古典の読書を通じて、正しさとは何かを考え、人間の暗い一面を垣間見ておくことは、必ず弁護士業務に役立ちます。

(5)価値観に共感できない依頼者からの依頼は受けないようにしよう

弁護士にとって一番のストレスは、依頼者との紛争です。特に離婚事件や遺産分割等の家事事件においては、依頼者の話の中で、気持ちのコアといえるフレーズや言葉が繰り返されることがあります。これらが自分の価値観と合わず共感できない場合には、事件を受任しない勇気を持つことも重要です。その事件を受任したとしても、様々な局面で細かい摩擦が積み重なり、依頼者と弁護士双方にとって不幸な事態になる危険があります。

おわりに

AIやICTの目覚ましい発達により、我々の社会環境は大きく変化しつつあります。デジタルネイティブ世代である皆さんが、弁護士として、私達の世代の古びた思考回路とは違ったアプローチで、様々な新しい問題の解決にご活躍されることを祈念し、結びの言葉とさせていただきます。

仲間とともに活躍の領域を広げよう!


秋野 卓生(50期) 当弁護士会会員 ●Takuo Akino
〈略歴〉
1998年 弁護士登録(当弁護士会)
2004年 東京簡易裁判所民事調停官
2017年 慶応義塾大学大学院法務研究科非常勤講師(担当科目:法曹倫理)

はじめに

新入会員の皆さん、第二東京弁護士会へ入会されたこと、心より歓迎いたします。
私も新人弁護士であったとき、皆さんと同じような期待と不安があり、ボス弁や仲間の弁護士の皆さんに支えられながら、不安を克服して参りました。本稿では私が新人時代に考えていたことをご紹介いたします。皆さんが弁護士としての第一歩を踏み出すにあたり何かお役に立てるものがあれば幸いです。

童顔の若手弁護士が依頼者からの信頼獲得方法に悩む

私は、1998年4月、24歳で弁護士登録しました。右も左も分からないなか、ボス弁からは、弁護士の役割と職責を丁寧に教えていただき、兄弁からは、厳しくも愛のあるご指導をいただき、今振り返っても、恵まれた執務環境でした。 入所して最初に配点されたのは株主代表訴訟であり、サラリーマン取締役が1億円以上の損害賠償責任を追求された案件で、ボス弁も意気揚々と作戦を練っていました。

しかし、ボス弁がアキレス腱を切って入院してしまい、新人の私が、いきなり一人で会議に入ることとなったのです。
当時、童顔であった私が会議室に入ったとき、依頼者の取締役達が、皆、不安そうな顔をしていたことを今でも覚えています。

1年目の初めから「若手弁護士はどうすれば信頼してもらえるのだろうか?」という課題を真剣に考えることになりました。ボス弁、兄弁はそれ相応の貫ろくがあるのに、自分は学生に毛が生えたようなものであり、「こうなったら急激に太ってやろうか」とか「髪を白く染めてやろうか」等、今から思うと笑ってしまうようなことを真剣に考えたりしました。そうして出た答えは、童顔や若さゆえの頼りなさを変えることは不可能なので、案件毎に徹底的に判例・文献を調べ上げ、通常の弁護士の倍の時間を使って入念に準備をし、誠意で依頼者からの信頼を勝ち取るしかない! というものでした。1年目から夜遅くまで働 き、2年目からは土日も返上するようになり、四六時中働くようになりました。

その後、少しずつですが依頼者からの信頼を獲得できるようになった喜びは非常に大きく、弁護士3年目あたりには「弁護士ってやりがいのある仕事だな」と思えるようになりました。

弁護士会活動

ボス弁・兄弁が、弁護士会活動、会派活動に熱心であったことから、私も自然にこれらの活動をするようになりました。消費者問題対策委員会土地住宅部会に所属し、同委員会内にシックハウス被害者救済ワーキンググループを設立するなど、一生懸命委員会活動に取り組みました。

当時、せっかくワーキンググループをつくったにもかかわらず、参加者がほとんどいなかったので、二弁Newsに活動報告を掲載し、弁護士の先生方への参加の呼びかけをする等、アグレッシブに動いていました。

また、消費者問題対策委員会土地住宅部会に所属する弁護士全員で弁護団を組み、100名程度の住民の代理人弁護士として訴訟をした案件もありました。

事務所事件も充実していましたが、弁護士会活動を通じて、他の法律事務所の弁護士の視点や考え方を学ぶ機会をいただいたことも貴重な経験でした。

独立

2001年4月、27歳で独立しました。専門性を持って仕事がしたいと取り組んだ住宅・建築業界から多くの個人事件の依頼をいただくようになり、事務所事件との両立が困難になったことがきっかけでした。兄弁に相談したところ、独立やむなしとのご意見だったため、恐る恐るボス弁に独立の相談に行くと「秋野君、食べていけるの?」と心配してくださいました。

独立してからは、不安感でいっぱいでした。まず、心がけたのが、限りなく経費を縮減 すること。事務職員は置かず、電話は、事務所にいるときは私が出て、外出中は、自宅の妻の携帯電話に転送設定し、妻が電話に出ることができないときは、私の携帯電話に更に転送するという対応でした。

当時、妻も産まれたばかりの長男を抱いて応対していたので、法廷が終わった後、相手方代理人弁護士の先生に、「あなたの事務所はいつも赤ちゃんが泣いていますね。」と言われて恥ずかしい思いをしたこともあります。

初年度、次年度となんとか黒字でまわったのですが、不安感は拭えません。たまたま仕事の依頼が来て、なんとか黒字を維持することができても、翌年同じように仕事の依頼が来る保証はどこにもないのです。

私は独立してからも、前事務所の事件には継続して対応しており、ボス弁とは月に数回会っていたので、ある日、相談してみました。すると、ボス弁から「秋野君、正しい方向 で一生懸命頑張っていれば、横ばいはあっても売上げが下がることはないから、安心しなさい。」というアドバイスをいただきました。このアドバイスを真摯に受け止め、以降、 「正しい方向で一生懸命頑張る」姿勢で仕事をしています。

民事調停官(非常勤裁判官)の経験

2004年に民事調停官(非常勤裁判官)になりました。
弁護士となって5年が経過し、一通りの事件処理ができるようになった頃に、週に1度、裁判所の立場から事件を見る良い機会を得ました。それまで、50ページを超える準備書面を書く のは当たり前で、ガンガン言いたいことを言い、証拠も沢山出し、証人尋問では、相手の弱点を徹底的に突くといった、今考えると本当に効果的な訴訟活動なのかと疑問視せざるを得ないような「頑張れば何とかなる」という幼稚な仕事のしかたをしていたような気がします。そんななか週に1度、裁判所に通い、「裁判 所が判断するにおいて意味のある訴訟活動をすることの重要性」を痛感し、ゆがんだ体をまっすぐに矯正していただきました。御世話になった裁判官、書記官の皆さんにも感謝の気持ちでいっぱいです。

仲間とともに

弁護士の活動領域は今後益々拡大していくことが予想され、若手弁護士には、あらゆるチャンスがあります。 私も新しい制度(民事調停官や弁護士法人) には次々と飛びつき、弁護士会や会派の先輩弁護士の先生方のサポートをいただきながら、若手弁護士時代を過ごしました。

一人でできることには限界がありますが、仲間と取り組み実践していくことには無限の可能性があります。所属する事務所の仲間、弁護士会活動で得る仲間の存在がとても大切です。特に第二東京弁護士会は、若手弁護士に活 躍の場を与えてくれるやりがいのある弁護士会であり、ここで得る仲間が皆さんの将来をもっと幅広く、明るく光り輝くものにしてく れることでしょう。
新入会員の皆さんのご活躍を祈念しています!

ようこそ!二弁へ


菊間 千乃(64期) 当弁護士会会員 ●Yukino Kikuma
〈略歴〉
1995年 (株)フジテレビジョン入社 アナウンス室配属
2005年 大宮法科大学院大学 夜間主 入学
2007年 (株)フジテレビジョン退社
2011年 弁護士登録
2019年〜 文科省中央教育審議会法科大学院特別委員会専門委員

はじめに

新入会員の皆さん、ようこそ第二東京弁護士会へ。会員の一人として皆さんの入会を心より歓迎致します。私は現在弁護士8年目です。企業法務の中でも訴訟を中心とする紛争処理業務が多く、裁判所に足しげく通う日々を過ごしております。まだまだ学ぶことばかりで、とても皆さんにアドバイスできる立場ではないのですが、社会人経験だけは長いので、日々心掛けていること等をお話ししようと思います。

足元を固める

皆さんは、ここにたどり着くまで、たくさんの方々に支えられてきたと思います。それはこれからも変わりません。自分と関わる全ての人を大切にしてください。私は、自分の周りを幸せにできない人が、世の中を良い方向に変革していくことができるとは思いません。弁護士として依頼者のために尽力することは当然ですが、その前に、人として、家族、事務所の先輩後輩や事務局といった、自分の半径5メートル以内にいる人々を大切にしてください。足元をしっかり固め、支えてもらっていると思えるからこそ、ここぞというときに踏ん張って仕事ができるのだと思います。

仕事の大小

新人の頃は、自分がやりたい分野ではない仕事を担当することがあるかもしれません。もっと大きな仕事がしたいと思うかもしれません。私もそうでした。新人アナウンサー時代、1分間のレポートを取るために丸一日取材し、結局映ったのは、インタビューをする自分の手だけということがよくありました。

華やかな仕事をしている先輩が羨ましく、もんもんとしていた頃、フジテレビを代表するドラマの女性プロデューサ―を紹介していただき、緊張しながらお話を伺いました。彼女はドラマをつくりたくて入局したところ、新人時代の配属はバラエティ。当時は働き方改革とは程遠い状況で、風呂にも入れず、スタッフルームの床で眠る日々。雑用係としてこき使われるADの仕事をしながら、「なんで」と思っていたそうです。しかし彼女がすごいのは、ただ愚痴を言うのではなく、自分でその状況を変えていったことです。

コントの小道具を用意するという仕事がありました。例えば便せん。普通のADさんは、1種類の便せんを用意します。彼女はというと、4-5種類の便せんを用意し、かつ自分でどの便箋を使ったら面白いかを考え、ディレクターにプレゼンしたそうです。ディレクターからはどれでもいいと言われたため、彼女が選んだ便せんが使われました。画面の隅に一瞬映った便せんを見て、彼女は「自分の演出が採用された」と感じたというのです。それ以降、常に複数の小道具を用意してはプレゼンし、ということを繰り返した彼女。小道具をただ用意するだけの他のADさんと実力の差がつくのは当然。あっという間に評判になり、ドラマに引き抜かれ、夢をかなえていったとのことでした。

この話を聞いたとき、「もっと大きな仕事」と言っていた自分がとても恥ずかしくなりました。目の前の仕事すら、そこまでの想いを持ってできていないのではないかと。20代前半でこの話を聞いてから、私自身、どんな仕事でも自分に振られたからには、「この人に頼んで良かった」と思ってもらえるよう、もっとできることはないだろうかと考えながら取り組んでいます。そうやって仕事と向き合っていると、仕事の大小は関係なくなっていきます。仕事のご褒美は必ず仕事で返ってきます。真摯に取り組んでいれば、必ず次につながります。

人付き合い

新人の頃は、業界を知る、人脈を増やすという観点から、弁護士と飲みに行くことも多いでしょう。しかし、ある時期を過ぎたら、外に目を向けることも大事です。他の業界を知ることは、様々なクライアントを弁護するためにとても有用です。体力と財力が続く限り、誘いは断らない。どこにでも顔を出す。ただし2次会には参加しない。1次会の最初からトップギアで盛り上がる。これが私の人付き合いの信条です。一日の終わりには必ず自分の時間を持つようにしています。そうすることで、生活リズムを立て直し、その日の出会いや見聞きしたことを深めることができます。

また、分からないことは、そのままにせず、誰かに教えを乞いましょう。知ったかぶりをせずに、分からない自分を受け入れること、教えを乞うこと、この姿勢はとても大切です。謙虚な姿勢で教えを乞う人に対しては、全ての人が協力を惜しまない、それが弁護士の世界だと思います。

笑う門には福来る

弁護士は代理人として依頼者の盾となることで、自分が撃たれることもある仕事です。悔しいことも辛いこともたくさんあります。弁護士1年目に、担当事件の第1審で敗訴し、悔しさに打ちひしがれていたところ、事務所のボスがニコニコしながら、「いいじゃないか、菊間君。高裁で頑張ろう!」と言って、背中を押してくれたことを今でもよく覚えています。どんなときも前向きで朗らかなボスに、新人の頃はよく救われました。

以来、一打合せ一笑いを心がけています。真剣にやるけれど深刻にはならない。依頼者の不安を丸ごと受け止められるような弁護士になる。そのためには自分自身が強くいなければいけませんよね。辛いときほど下を向かずに前を向く。笑えないときもせめて口角を上げる。笑顔でいることの大切さを、たくさんの事件を通して学んでいます。こうやって、だんだん強くなっていくのだと思います。

最後に

私は、報酬というものは自分の労働の対価ではなく、依頼者の満足度に応じていただけるものだと考えています。相手が何を望んでいるか、相手にとって何がベストかを常に考えて仕事をしていれば、報酬はおのずと後からついてきます。

弁護士としてのスキルは、依頼者と事案が育ててくれます。経験がものをいう、年数を経るほど自分の能力が上がっていく仕事だと思います。では、新人は先輩にはかなわないのでしょうか。そんなことはありません。依頼者に対するきめ細やかな心配りは、弁護士としてのスキルに比例するのではなく、個人の人柄によるところが大きいものです。そしてこれは顧客満足度を左右する重要なポイントでもあります。

かつてどうしようもなく落ち込んだときに、ある弁護士の「大丈夫」という一言に救われたことがありました。この人が大丈夫と言うのだから大丈夫なのだろうと。そして、自分もこんなふうに強く、優しく、人を支えられる弁護士になりたいと思いました。弁護士という仕事は、全人格が試される仕事です。仕事を通して人間的にも大きく成長できます。依頼者にとっては、新人もベテランも関係ありません。臆することなく、1人でも多くの依頼者のために尽力してください。私も、皆さんに負けないように頑張ります!