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花水木

2010年12月に弁護士登録をし、もう10年目を迎えようとしています。10年目を目前に、インハウスロイヤーに転職するのか、独立するのか等、人それぞれ悩みのある、まさに「悩みの年」だと思います。かく言う私は、同じく弁護士をしている夫の海外留学・海外勤務に合わせ、2015年 8月にいったん弁護士登録を抹消し、帰国後の2017年8 月に再度弁護士登録をしました。以前勤めていた弁護士法人からは弁護士登録抹消と同時に退所したため、帰国後の進路について考えあぐねていました。そんなとき、京都で弁護士をしていた修習同期から「東京で弁護士をしたいから、一緒に独立しない?」と声を掛けられ、トントン拍子に話が進み、気づけば帰国の2週間後には表参道に弁護士2名の事務所を構えていました。帰国してすぐに開業したことで周囲には驚かれましたが、2年間仕事から離れて専業主婦をしていたせいか、帰国する頃には「一刻でも早く働きたい!弁護士業がしたい!」と、仕事を渇望するような奇妙な精神状態に陥っていたのです。

そんな事務所も開設して2 年3 ヶ月ほど経ちました。コツコツと目の前の案件をひたすらこなす日々は、楽しいことも苦しいこともあり、充実した毎日です。同業者からはすが、今のところは(!)順調に業務を行っています。そこで、今回は、私が同僚弁護士と仕事をするにあたり心掛けている点をご紹介したいと思います。

「同期と一緒に独立すると仲が悪くなったりしない?」などと聞かれることが多いので1つ目は、互いの仕事量のバランスに気を配り合うことです。弊所は、新規案件は基本的に2人で共同受任します。どちらが書面の起案を担当するのか、期日に出廷するのか、そのバランスは長く一緒に仕事をしていくうえで重要だと思います。先輩後輩ではなく同期ですので、どちらかの負担が極端に重いといずれ不満が出てきてしまうと思います。互いに得意分野があるため、その分野に応じて「本件は私が起案するから、あの件はお願いね。」というように、互いにバランスを考えながら進められていると思います。また、いつまでに何をするか、という基本的な案件進行のすり合わせは、はじめのうちに話し合って決め、互いに1、2週間先のスケジュールを見据えて案件処理ができるよう、気を配っています。 2つ目は、相手の時間の使い方に過度の干渉をしないことです。私たちは同期であり友人ですが、互いのプライベートに過度に干渉することはしません。弁護士は自由な職種であり、その自由さこそが最大の魅力だと思っています。もちろん、互いに分配された仕事さえきちんとこなしていれば、という前提ですが、良い距離感を保てていると思います。

こう書き出してみると、夫婦円満の秘訣と似ていますね。小さな事務所ですと特に、同僚弁護士との関係性は密になりますし、家族よりも長い時間を一緒に過ごす存在です。10年目以降も、より発展した事務所づくりをしていけるよう、今後も力を合わせて精進していきたいと思います。

塩見
塩見 直子(63期)
●Noko Shiomi

NIBEN Frontier●2020年1・2月合併号