出版物・パンフレット等

花水木

渡邊康寛 渡邊 康寛(64期)
●Yasuhiro Watanabe

その雑誌の記事は、タワーマンションに住む若い夫婦が、週末に知人とホームパーティでワインを嗜むおしゃれなライフスタイルを特集していました。「余裕のある人々はいいな...」そう私は呟きながら、彼らが通っているというワインスクールの名前を興味本位で検索した。そのページにあった無料講座の参加ボタンを軽い気持ちで押したことで、その後の人生が大きく変わっていった。

私は今年で弁護士9年目になります。弁護士になった頃は、リーマンショック、そして追い打ちをかけるように東日本大震災があった直後でした。弁護士業界のみならず日本経済全体に暗いムードが漂っていたことを覚えています。そんな中で運良く最初に入れた事務所は税務と企業法務を中心に扱う国内中堅事務所。多くのパートナー弁護士に多様な仕事を振っていただき、手間を惜しまず愚直に働きました。そこで得た、先輩弁護士の戦略の立て方や顧客との接し方などの知見は今でも大きな財産です。

ただ、平日も週末も仕事に費やしているうちに、気づけば交友関係は既存のロースクール・修習同期の弁護士との遅い時間からの飲み会ばかりになっていました。それはそれで、とても有意義な時間ではありますが、たまには弁護士業務から離れた気楽な話題を求めていたのかもしれません。

冒頭のエピソードのような経緯でワインの世界に片足を突っ込むようになり、年代や職種の垣根を越えて幅広い人達と知り合いになることができたのは、私にとって非常に幸運でした。医者や金融、他士業の友人から業界特有の裏話を聞いたり、一緒にゴルフに行ったりするなど、適度にプライベートが充実しました。弁護士は元々向学心が旺盛で、事象を分析するのが好きな方が多いと思います。ワインは基礎的な部分を覚えてしまえば、後は飲む機会にスマホで商品名を検索して読むだけで、加速度的に知識が付いていき、生産地域とぶどう品種で大体の味が予想できるようになるのでオススメです。

さて、仕事に関しては最初に所属した事務所のパートナー弁護士が円満に事務所を独立する際に私も一緒に退所し、現在弁護士3人+事務員2人の事務所で仕事をしています。大人数の事務所には大規模事務所の良さがありますが、小規模事務所にも良さがあるように思います。少人数であるが故の強みである事務所の一体感を大事にし、IT化や仕組化による生産性の向上を模索しています。債権法改正について勉強会を行ったり、情報共有を行ったりするなど、良い流れで仕事ができているように思います。なお、最近は睡眠効率の向上が私のテーマで、飲酒を控え、適度な運動と、夕食を腹六分目くらいに節制することを心がけています。

弁護士業界は弁護士の人数が増え厳しいとの見方がありますが、社会の時流に沿って注力すべきポイントを間違わず、無駄なコストを削減していけば、これほどやりがいがあり魅力ある業界も中々ないのではないか、と考えています。10年後、20年後も良い仕事ができ、健康で美味しくワインを飲めていれば良いなと思っています。