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ネット中傷対策実務の基礎(後編)

4 発信者の特定(発信者情報開示)の手順と方法

1 プロバイダ責任制限法

特定には、プロバイダ責任制限法を使います。プロバイダ責任制限法は、文言を読み解くのが難解ですが、最も重要なのは、メール・メッセンジャー・SNS等のメッセージ機能は同法の対象外であるということです。
プロバイダ責任制限法第1条*1を見ると、特定電気通信について開示請求ができることになっています。特定電気通信とはインターネットのこと、すなわちインターネットで誰でも見られる状況にあるもののことを指します。電気通信と言いますと、電線に通っている電気も含まれるようにも思いますが、そうではなく、インターネット上で見られるものを指して特定電気通信と言うと定められています。メール・メッセンジャー・SNS等のメッセージ機能は、インターネットを介していることは間違いないわけですが、基本は1対1の通信です。ですから、誰でも見られる状況にないということで、この法律に基づいて開示請求をすることができません。例えば、Facebookのメッセンジャーで、誹謗中傷する内容のメッセージが送られてくるので、誰が送っているのか特定したいという相談がありますが、これについては残念ながら何ともできませんということになります。ですから、安易に依頼を受けてしまうと、そもそも法律に関する理解が足りないという話になり、場合によっては弁護過誤になりかねませんので、注意が必要です。

2 特定するための2ステップ

(1)原則

発信者の特定をするためにどのようなステップを踏めばいいかですが、まず第1段階として、コンテンツプロバイダ、ホスティングプロバイダ、サーバー会社に対してIPアドレスの開示請求をします。
次に、第2段階としてIPアドレスから判明した、インターネットサービスプロバイダ(ISP)に対する開示請求をします。ISPというのは、例えば携帯回線ではNTTドコモ・KDDI・ソフトバンク、固定回線ではOCNやSo-net、などです。これらの会社に対して契約者情報の開示請求をすることになります。
当たり前ですが、ユーザーがインターネットを見るためには、まずプロバイダ契約が必要です。プロバイダ契約をして初めて、プロバイダを通してネットに接続できます。ユーザーがISPにアクセスをして、そこから各サイトのサーバーにアクセスをしていることになります。
データを蔵置しているものがサーバーです。サイトに接続するとは、すなわちサーバーに接続することですので、サイトを見ているということはサーバーに接続をして、その先を見ていることになります。なお、ISPのことをアクセスプロバイダと言ったり、経由プロバイダといったりしますが、いずれも同じです。

特定までのステップ(フローチャート)

(2)例外

2段階の手続が原則ですが、例外があります。1つ目として、2段階で済まないケースで、MVNOやJ:COMが登場する場合です。MVNOは、ごく簡単に言えばUQコミュニケーションズなどの格安携帯電話会社のことです。例えば、UQコミュニケーションズはKDDI系列ですが、KDDIが回線を持っていて、UQコミュニケーションズがその回線を借りて、顧客に提供するという形です。この場合、まず原則どおりコンテンツプロバイダへ開示請求をして、IPアドレスの開示を受けます。それを調べるとISPはKDDIだと分かり、次にKDDIに対して契約者情報の開示請求をします。しかし、「この回線は確かにKDDIが持っている回線ですが、UQコミュニケーションズに貸している回線なので、KDDIは契約者情報を持っていないため、UQコミュニケーションズに聞いてください」と言われてしまい、1段階やることが増えることになります。UQコミュニケーションズが更に下の会社に回線を貸していることも結構あります。このように、開示請求を3回、4回としなければいけない場合があることは覚えておいた方がいいと思います。
データ通信の利用履歴、いわゆるログには保存期間があり、特に携帯の場合は2〜3か月程度しか保存されていません。ゆっくりしているとログが消えてしまうというリスクが出てきますので、なるべく早めに手続を進めておかなければ、相手の特定に結び付かないことがあり得ますので注意です。
また、ケーブルテレビのJ:COMの場合、開示請求をすると、この契約者はJ:COMの直接の契約者ではなく、例えば、「ある地域で契約をしているため当該地域が契約者情報を持っているので、そちらに開示請求をしてください」と言われる例があります。これも3段階のステップが必要になります。
J:COMやMVNOの場合、最近は裁判手続ではなくても開示してくれることが増えてきていますので、まずは開示請求をしてみるといいと思います。
もうひとつの例外は、Amazonなど顧客情報を直接保有するショッピングサイトの場合です。Amazonのレビューを荒らされたので削除依頼をするために開示請求をしたいという相談が結構あります。
レビューを誰でも書けるものと購入者でなければ書けないものがありますが、Amazonで買い物もしないでアカウントだけを持っているということはあまりありません。そうしますとAmazonは書き込みのアカウントにひも付いた配送先情報をだいたい持っているわけです。ですから、Amazonのようなショッピングサイトでレビューが書かれている場合、しかもログインしなければ書き込めないようなサービスの場合には、顧客情報を直接開示請求できるパターンがあると思います。

3 発信者情報開示仮処分

(1)概要

発信者情報開示仮処分は、コンテンツプロバイダに対して開示請求をする場合に用います。被保全権利は発信者情報開示請求権になります。プロバイダ責任制限法第4条1項*2が、これを定めています。

(2)管轄

債務者の普通裁判籍の所在地を管轄する裁判所が管轄裁判所です(民事訴訟法第4条1項)。
不法行為とみて、ほかに管轄は認められないのかという問題があります。しかし、これは不法行為関連訴訟にならないというのが基本的な考え方です。ですから、債務者の普通裁判籍の所在地を管轄する裁判所しか、基本的には管轄がないということになります。

Google、Twitter、Facebook・Instagramなどの日本法人を有する海外法人を相手にする場合、海外法人を直接相手にする必要があるというのが大前提です。そもそも日本の裁判所に管轄があるのかですが、これについては民事訴訟法第3条3の第5号で、日本において事業を行うものに対する訴えについては、日本の裁判所が管轄と定めています。 民事訴訟法第10条2及び民事訴訟規則6条2で、東京都千代田区を管轄する裁判所が管轄裁判所になると定められています。よって、東京地裁が管轄裁判所になります。 海外法人を訴えたとき、この辺の条文をきちんとおさえた管轄についての上申書を出さなければ裁判所が受け付けてくれませんので、ご注意ください。 サーバー会社に対してもIPアドレスの開示請求ができます。東京でサービスを提供している会社が多いので、管轄は東京地裁であまり問題はありませんが、例えばエックスサーバーやさくらインターネットという会社は大阪に本社があるため、管轄が大阪地裁になります。これらも東京で訴訟提起できないかという問題がありますが、原則、民事訴訟法第6条で専属管轄になっており、合意管轄や応訴管轄、併合管轄が排除されています。 ただし、民事保全法12条1項は訴訟の管轄裁判所が管轄裁判所になるとしています。保全事件の管轄を合意することはできないけれども、訴訟の管轄を合意することはできるのです。 相手方へ東京で訴訟することの合意を提案して、それに応じてもらえれば管轄合意書を作り裁判所に提出します。そうすると本案についての合意があるため、東京地裁でも仮処分の保全事件として受け付けられます。 東京地裁の案件数が日本で一番多いので、インターネット関係も処理の速度が圧倒的に速いです。大阪では双方審尋の手続が必要になりますが、当事者の呼び出しや決定が出るまでに1か月以上かかるということがあるので、東京でできるのであれば東京地裁でやった方がいいとは思います。

(3) 請求の趣旨

請求の趣旨は、「債務者は、債権者に対し、別紙発信者情報目録記載の各情報を仮に開示せよ。」で、基本はよいかと思います。

(4) 発信者情報目録

目録の基本形は、以下のとおりです。

  1. 別紙投稿記事目録にかかる各投稿記事を投稿した際のアイ・ピー・アドレス
  2. 前項のアイ・ピー・アドレスが割り当てられた電気通信設備から、債務者の用いる特定電気通信設備に前項の各投稿記事が送信された年月日及び時刻

Twitter、Facebook、InstagramといったSNSは、ログインしてから書き込むログイン型投稿と言われています。ログイン時の情報しか記録されておらず、投稿時の記録がないというタイプのものです。
基本形だと「投稿記事を投稿した際のアイ・ピー・アドレス」と書いていますが、ログイン型投稿だとその記録はないので開示できませんとなってしまいます。そこで、例えばTwitterの場合には、以下のように書きます。

下記のアカウントにログインした際のアイ・ピー・アドレス及びタイムスタンプのうち、●年●月●日以降のもので債務者が保有するものすべて


ユーザー名:@XXXXXXX

裁判所から、債務者が所有するものすべてというのは範囲が広すぎるという指摘をされることがあります。その場合は、問題となる投稿をする前の1か月分から開示請求をするという形に目録を修正するなどの微調整が必要かと思います。
Facebook、Instagramの場合は、以下のような形になります。

「 https://www.facebook.com/profile.php?id=123456890123456」について、近似のログイン及びログアウトに関する年月日、時刻並びにアイ・ピー・アドレス。ただし、当該情報が入手可能であるものに限る。

「当該情報が入手可能であるものに限る」というのは、Facebook側が求める内容なので入れます。
Instagramは運営会社がFacebookなので同じような形で特定すればよいです。ログアウトに関する年月日をきちんと入れるということを、FacebookやInstagramの場合にはおすすめします。「このログインにはこの投稿がひも付く」というのが、ログアウトの時間が分かるとある程度見えることがあるためです。そうすると、このログインは権利侵害に関係しているものだから開示請求の対象にしましょう、と裁判官が判断しやすいという事情があります。
なお、Twitterでは、Twitter側から「ログアウトの記録を取っていないからありません」と言われていますので、請求したいところですが、できないということになります。

(5)要件事実

プロバイダ責任制限法第4条1項に4つの要件が定められています。①債務者が侵害情報が流出することとなった特定電気通信の用に供される特定電気通信役務提供者(開示関係役務提供者)に該当すること、②債務者が開示請求に係る発信者情報を保有すること、③投稿記事目録記載の各投稿につき、権利侵害が明らかであること、④発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があることです。
意外と忘れがちなのが、②の相手がこの情報を保有しているんだということを主張することです。保有していることを前提に開示請求をしているので主張した気になってしまいがちですが、この情報を保有しているということを、きちんと主張しておかなければいけません。
保有しているかというのは相手にかかることなので立証はできませんが、主張していないとなると決定が出せないので、保有していると言い切ってください。
③の権利侵害が明らかという点ですが、条文解説には、「不法行為が成立し、その阻却する事由の存在をうかがわせる事情が存在しないこと」とあります。阻却する事情は、一般的には違法性阻却事由のことを指していると考えていいと思います。
責任阻却事由の不存在まで主張立証する必要はあまりないと思いますが、たまに、そこについて反論されることがあります。その場合、再反論の方法としては、書いた本人に責任阻却事由があるかどうかという話なので、書いた本人が誰か分からない中で立証することはできないと主張するのがよいかと思います。④正当な理由については「損害賠償請求をしたい」などと書いておけば十分です。

4 IPアドレスからISPを調査する

(1)ISPを調べる

IPアドレスが開示されたら、IPアドレスからISPを調べます。ISPを調べるためには「Whois」を使います。
例えば、上記のように「Whois」で調べると、「オープンコンピュータネットワーク」との記載を見つけることができます。これはOCNのことです。更に、下に「エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社」と載っていますので、これでエヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社がプロバイダであることが分かります。
重要なのは、IPアドレスが分かったから相手が判明するかというと、そうではないということです。1つのIPアドレスをプロバイダの中で30人や100人などに振り分けたり、場合によってはミリ秒単位で振り分けたりということをしているのです。どの時間にどのIPアドレスを使っていたのかということが、本人特定をする上では非常に重要で、そのためにはタイムスタンプがないと特定ができません。タイムスタンプで秒だけでなく、ミリ秒単位まで開示してもらうことが必要です。

IPアドレスからISPを調査する)

(2)ISPに対する開示請求

ISPが分かったら開示請求です。任意の開示請求のテレサ書式で請求しても、基本的には応じてもらえません。であればやる意味はないかというと、そんなことはありません。なぜなら、開示請求をすると前編でご説明した削除の送信防止措置依頼のときと同じように、意見照会がなされるからです。
相手の住所・氏名が分かっているので、意見照会が郵送されます。開示請求をするメリットの1つは、本人が開示請求された事実を認識するので、それだけで1つの警告になるという点です。2つ目は、紙媒体で意見照会をするということは、その時点で紙で特定した本人情報がISPで保全されます。そうすると、少なくとも数年間は、ログがなくなるという心配がありません。
請求書への記載方法ですが、「[貴社・貴殿]が管理する特定電気通信設備等」欄にURLとIPアドレス、タイムスタンプを書きます。また、「掲載された情報」欄に掲載内容を書けば、どういうことを書いてどこの通信が使われたのかを認識できます。
ほかの開示請求の方法として弁護士会照会を使う手もありますが、通信の秘密を理由に回答されないのが通常です。
ISPに対して仮処分をするということも考えられます。しかし、発信者の情報をISPが持っていて消えるおそれがないことから、保全の必要性がなしとして、認められません。

発信者情報開示請求書(テレサ書式)

5 ログ保存の請求の重要性

ISPのログも3か月程度で消える例が多くあります。一昔前は発信者情報の消去禁止の仮処分申立てをしないとログ保存をしてくれないという例が多くありましたが、今はテレサ書式の開示請求でログ保存をしてくれるので仮処分申立てをする必要がありません。
テレサ書式を用いる方法ではなく、任意で「ログ保存のお願い」という文書を送ることもあります。普通はこれでも保存をしてくれます。このやり方の特徴は、発信者の意見照会がなされないということです。たいてい委任状のコピーを添付すれば足りますし、粘着質で意見照会をされてしまうと嫌だと思う相手の場合には、ログだけを取りあえず保存をしてほしいとお願いしておくというのは1つの方法です。ただし、ソフトバンクはこれに応じてくれないので、最初からテレサ書式を用いた方がいいと思います。

6 開示請求訴訟

(1)管轄

開示請求訴訟は、被告の住所を管轄する地方裁判所のみが、管轄裁判所になります。

(2)請求の趣旨と発信者情報目録

請求の趣旨は、「被告は、原告に対し、別紙発信者情報目録記載の各情報を開示せよ」です。
発信者情報目録は、以下のとおりです。

別紙投稿記事目録記載のアイ・ピー・アドレスを、同目録記載の投稿日時ころに使用した者に関する情報であって、次に掲げるもの

  1. 氏名または名称
  2. 住所
  3. 電子メールアドレス

7 特定における注意点

(1)時間がかかる

コンテンツプロバイダからの開示で2〜4週間、ISPからの開示で3〜6か月かかります。依頼者には、1年弱くらいはかかると言っておかないと、後でトラブルになるおそれがあるので注意します。

(2)急ぐ必要がある

第4の5「ログ保存の請求の重要性」でご説明したとおり、アクセスログの保存期間は、概ね3か月です。したがって3か月以内に、誹謗中傷を発見し、コンテンツプロバイダから開示を受けて、ISPに開示請求までしなければなりません。

(3)ISPへの開示請求はもっぱら裁判

これも、第4の4(2)「ISPに対する開示請求」のとおり、任意での開示は可能性が低く、裁判手続によるほかありません。

(4)ISPから開示される情報は、あくまでプロバイダの契約者

訴訟を経て、最終的に相手が開示された場合でも、開示されたのはあくまでプロバイダの契約者であって、誹謗中傷する内容を書いた本人とは限らないということです。例えば4人家族の父が契約していて、父の情報が開示されたものの、実際に書き込みをしたのは息子の可能性が高いということがあります。このような場合、例えば住民票を取得して真の記載者が誰かを検討する方がいいと思います。

8 電子メールアドレス開示の要否

電子メールアドレスの場合も開示請求をします。しかし、ソフトバンクやKDDIは、損害賠償請求に電子メールアドレスは必要ないと争ってきます。この場合、①プロバイダ責任制限法は開示について順番を定めていない、②開示される住所が実際に居住している場所とは限らない、③訴訟不経済になる、④プロバイダ責任制限法の発信者情報を定める省令3号は、「発信者の電子メールアドレス」を開示対象としているところ、これを厳密に解すると、電子メールアドレスの開示が認められる例が法律上ほぼあり得ないことになる、と反論してください。

9 ログイン型投稿の問題

プロバイダ責任制限法4条1項は、当該権利の侵害に係る発信者情報の開示を請求できるとしています。
ポイントは「権利の侵害に係る」という限定が入っている点です。ログイン時の情報とは、IDとパスワードの情報で、当然には何か権利侵害を損なうものではありません。ログインに関するIPアドレスや発信者・契約者の情報の開示は、そもそも法律の条文上はできないのではという問題があります。
素直に条文を読むと、確かにそのようにも思えますし、最近は特にこの点を各プロバイダは争ってきます。
平成26年にログイン型投稿に関してISPに対する開示請求が初めて認められています。平成28年くらいまでは認められる例もありましたが、29から30年には認められなくなり、その揺り戻しなのか平成31年ころからまた認められるようになってきています。ただ、いずれにしてもまだ運用は固まっていません*3。 ログイン型のSNSの場合、開示請求が認められるハードルが高いです。安易に特定できますという話を依頼者にしてしまうと、危険です。

5 特定後の対応

1 損害賠償請求

特定後の対応としては、内容証明郵便を送付する、訴訟するという方法があります。被告から、誰かにPCやスマートフォンを乗っ取られた、IPアドレスを偽装されたなど主張される例はよくあります。もっとも被告がこの主張をしても立証が困難ですので、何ら具体的な証拠を出していないから認められるべきでないと反論すれば、主張を排斥できると思います。
慰謝料額は、多くても100万円程度で、平均値ですと30万円から60万円くらいが相場です。そうすると、特定にかかった費用を下回ることが多いと思われます。特定のための費用を相手に請求できるかという点がありますが、これは相手に請求できるという判決があります(東京地判平成24年1月31日(判タ2154号80頁)。東京高判平成24年6月28日結論維持。)。しかし、最近は、特定にかかる費用は弁護士費用だとして1割だけが認定される例も増えています。裁判官次第というところが大きく、少し不透明です。ただ、いきなり誹謗中傷されて、その特定にかかる費用を中傷された側が負担する上に賠償額も少ないとなったら骨折り損になってしまうので、不相応だと考えます。

2 告訴

告訴は、私は年に10件以上やっています。告訴は受理されない印象があるかもしれませんが、ポイントをおさえればきちんと受理されます。
1つ目のポイントは、名誉毀損を選択することです。業務妨害、信用毀損なども理論上は成立します。しかし、これらは抽象的危険犯と言いつつ具体的・危険犯的な実際の業務の妨害との因果関係を要求されるというのが実務上の扱いなので、立証が難しいという現状があるからです。
2つ目のポイントは、告訴事実のうち被告訴人氏名を含め、特定できるところは極力特定し、同定可能性が明白であることを分かりやすく説明することです。時間はもちろん、場所は固定回線ならば自宅でいいですが、スマートフォンの場合は「自宅またはその他の場所」とするなどきちんと記載することが重要です。
また、警察に相談に行き告訴をそのまま事件として受理してくれることは基本ありません。警察からすれば、いきなり持ってこられた事件で、概要しかよく分からないまま受理しますとは当然言えませんので、資料一式の写しを持参して、資料として預けます。そうすると、受領して検討してくれますので、1週間置きぐらいに進捗をこまめに電話で聞くと、警察も動かざるを得なくなります。

3 受任時の注意

受任する際には、全体について契約をするのではなく、削除と開示とを分ける、開示も2段階、3段階の手続を、分けて契約をすることです。
全体を包括して契約しても、費用がすごく安ければ問題はないかもしれません。しかし、安くて手間だけがずっとかかってしまうということもあります。段階ごとに契約を分けて、それが契約書でも分かる形に残しておくことをおすすめします。対象となるURL等を明記しておくことも必要です。
また、開示請求について依頼を受ける場合、ログがないことがどうしてもあり得ます。これは時間が経っていて分からない場合もありますし、システムで不具合があってその部分だけ消えているということもまれにあります。これについては弁護士がいかんともしがたい点ですので、ログがない場合があり得ることを説明する条項を契約書に入れます。または、成功報酬を請求する際、ログがないという回答を得たこと自体も成功とみなすといったことを事前に契約書に書いておく工夫が必要です。