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二弁副会長の真実

当会では、毎年6名の副会長を選任していますが、副会長とは一体どのような業務を行う役職なのか、皆さんご存じでしょうか。
また、当会ではクオータ制を採用し、毎年2名の女性副 会長を選任していますが、副会長業務だけでも忙しそうな中、特に女性の副会長は、弁護士業務や家庭とどのように両立を図っているのでしょうか。
副会長経験者に、副会長の仕事内容、副会長を経験して良かったこと、大変だったこと、家庭との両立等々、副会長業務の「真実」を伺いました。

二弁の副会長業務及び家庭との両立について

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小学生と幼稚園児計3人の子育てをしながらの副会長業務でしたが、皆様のお力添えのお陰で、貴重な経験と出会いに恵まれ、やりがいにあふれた1年間になりました。この場を借りて御礼申し上げます。
ところで、副会長職に就くと決まって以来、非常に多くの方に「副会長大変でしょう?身体に気を付けてね。」と気遣っていただいたり、はたまた、「なんで(あなたが)副会長になったの?」「副会長って何しているの?」と率直な質問をいただいたりもしました。多くの会員の皆様にとって、副会長業務は未知なるもののようです。
当会は、理事者(会長・副会長)に占める女性会員の割合を30%以上にするという目標を掲げ、毎年2名の女性を副会長に選任するとともに、会務の効率化を促進してきました。後に続く皆様にとって、副会長業務が身近でハードルが低いものになるように...私の1年間の業務内容をご紹介します。

1 二弁の副会長の役割は会長の補佐、任期1年の非常勤

  • 理事者会を中心に、二弁のあらゆる方針決定に携わります。
  • 6名の副会長が、それぞれ30前後の委員会・担当業務を受け持ちます。
  • 二弁事務局職員(正職員50名強、パート他 約30名)の労務管理や人事など、組織運営にも携わります。
  • 会の役員として、日弁連及び国内外の他弁護士会との交流や業務連携を行います。裁判所・検察庁や、他士業との関わりもあります。
  • 私の場合は月50 〜 150時間の執務量で、月ごとに繁閑がありました。
  • イメージどおりの「役員」らしい仕事から、二弁規則類の改正作業や地道な督促電話かけまで、業務の幅は広範です。法律関係ではない原稿執筆、広報、事務局朝礼への参加、研修・イベントでの挨拶などは、理事者ならではでしょうか。

具体的には、理事者会(週1回)、常議員会・ 三会理事者会(月1回)、総会(年1・2回)が定例の会議で、その他会員昼食会、委員長会議といった会内会議が複数あります。委員会は、委員長・事務局との連携は密にしつつ必要に応じて出席することで足りますので、全てに毎月張り付きで出席するわけではありません。上記各種会議がないときでも、持ち回りの在室当番(平日午前)、他の理事者や担当事務局との相談や各種書類の決裁のため、会館役員室には週4回ほど顔を出しました。多くの理事者は短時間でも毎日役員室に寄っていました。決裁(押印)のために役員室に行く必要があることは負担に感じましたので、早期の電子化を期待します。
なお、昨年度は、理事者全員の連絡ツールとしてSlackを使っていたので、非対面の情報共有がしやすく、会議時間の短縮化に大いに役立ちました。また、私は比較的在室時間が短かったこともあり、担当事務局の方には気軽に携帯に連絡をもらえるようお願いして、メールで済むことはメールでというように対応していました。

2 気になる出張・懇親会の頻度

秋は日弁連・各弁連の行事が続き出張シーズンです。理事者全員でそれぞれの都合に配慮し合いながら分担して参加します。昨年度は、泊まりのものは各6 〜 8回あり、私は国際委員会担当だったのでこれに加えて海外出張も複数回ありました。秋は家庭においても行事シーズンのため忙しく、これ以上は厳しいと感じましたが、真に必要なものを厳選して出掛けましたので(会の財政面からも当然ですね)精神的負担はなく、留守宅の家族が家事スキルを向上させる良い機会になりました。懇親会・飲酒飲食の機会は、数限りなくありますのでお好きな方はたくさん参加されるのもいいでしょう。私の場合、夜の外出には子どもたちのお世話の手配が必要で負担が大きく、なるべく子どもたちと過ごしたかったので、極力断っていました。申し訳ない気持ちもありましたが、周囲の皆さんが状況を理解してくださり助かりました。他の副会長が行くから、前任者は行ったからという理由で無理して行く必要はありませんので、次年度副会長への引き継ぎでこの点を強調しました。

3 副会長になった経緯

男女共同参画推進二弁本部で活動しており、そこでお声がけいただきました。会派に所属せず、会務にも明るくなく、まだ59期の自分に副会長職は関わりのないものと思っておりました。そのため驚きましたが、男女本部は非常に風通しが良く活動がしやすいので、そこの経験豊かで寛容な大先輩方がおっしゃるならと前向きにとらえることができました。
また、二弁が誇るダイバーシティ促進のためには、過渡期的措置としてのクオータ制(quota=女性枠割当制)の意義は大きいので、男女共同参画に関わってきた私としてはその実質化に役立てることは本望でした。

4 家庭や本業(事務所等での仕事) との両立について

誰でも弁護士業をしながらの会務であることが前提なので、本業での勝負の年や、家庭において配慮を要する年(例えば受験や介護等)でない限り、副会長業と弁護士業・家庭との両立は十分可能です。
弁護士会館は意外とキッズフレンドリーなので、子どもの長期休暇期間中などには役員室に帯同することもしばしばありました。下の子とシッターさんで8階女性会員室を利用したこともありますし、子どもたちにはとても楽しい社会科見学になったようです。(皆様お世話になりました!)
なお、子育てとの両立のためには、体調とスケジュール管理に留意し、優先順位をつけて過ごすことが肝要と考えます。弁護士のキャリアのあり方は様々ですから、家庭との両立のかたちも人それぞれです。

  • 家事・育児のアウトソースに積極的に頼ることをオススメします。頼むのにためらいがある方は、シッターさんや家政婦さんを上手にお願いしている周りの人の話を聞いてみてください。「自分しかできないこと」を整理して、それ以外から少しずつ頼んでみるとうまくいくかもしれません。1人で仕事も育児も家事もこなすのはとても難しいことです。
  • 同業・子どもつながり・学生時代からの友人・ご近所等々、ママ友は大切です。情報交換、息抜きのほか、自分ができるときにはどんどん友人たちの子どもも預かりますし、逆に、急な休園のときに子どもを預かってもらうなど、好意にも甘えます。
  • 子育て×キャリア継続のためには職住近接も大事です。仕事を受けるときには動線も相当重視します。
  • 自宅で仕事ができる環境作り(機器の整備など)は積極的に。

副会長の仕事は忙しい面もありましたが、視点を高め、視野が広がる良い機会でしたし、今までの経験を生かせる場面も多くありました。機会がありましたら是非引き受けてみてください。両立のための工夫は、シッターさん・家政婦さんとの付き合い方、子どものお稽古事選びから毎日のお弁当作りの段取りまでまだまだあります。ここでは詳細を差し控えますが、気軽にお問い合わせいただければ幸いです。

座談会 副会長経験者が語る二弁副会長の真実

※緊急事態宣言中であったため、Zoomを利用して実施しました。

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1 もともと副会長になりたかったか

【編集部】皆さんは、もともと副会長になりたかったのでしょうか、それとも色々な経緯でやらざるを得なくなったのでしょうか。

【佐藤】正直に申し上げると、やりたいと思ったことはなかったです。子どもが大きくなって、これから仕事に集中できる、仕事の幅も広げていこうと思っていたところに、男女共同参画推進二弁本部の関係の方から、「クオータ制を続けていくのがなかなか難しい。副会長になってくれる女性がいない。」という話がありました。せっかく先輩たちが頑張って作ってくれた制度なので、とにかくつなげなきゃいけないとの思いがありました。
また、私は会派活動もほとんどしたことがなく、私のような弁護士らしからぬ経歴の者でもできるのだと周りが思ってくれたら次につながるのではないかという思いもあって、お引き受けしました。

【編集部】なる前は積極的にやりたいと思わなかったとしても、やはりやってよかったと思いましたか。

【佐藤】もちろん。本当にすごくいい経験をさせてもらったと思います。今まで副会長に就かれた方は皆さん「やってよかった。いい経験になった。」とおっしゃるんですよね。例えば、留学に行ったり、企業に出向したりと同じように、今までの生活とは違う生活を1年間やってみるのは、自分の知見を広げるためにとてもいいことだと思います。私にとっても、副会長の経験は、非常にプラスになっていると思います。

【藤井】私も、男女共同参画と子どもの権利委員会のほか会務はやっていなかったので、自分に関係のある話だとは、全く思っていませんでした。いつも「人がいない。大変。」という話も、「へえ、いないんだ。」くらいに思っていたのですが、私が就任することになったのは、タイミングが合ったのが一番大きいです。
お声がけいただいたときは、そろそろ子どもが大きくなってきて本業に復帰しようというタイミングでした。そのためのステップアップと、クオータ制を次につなげようという考えも大きかったです。
以前、私は、任期付き公務員として内閣府で働いていたことがあったのですが、そのときに「弁護士会にもクオータ制を作ってください。」という意見を言いに行ったことがありました。それがこうやって、ブーメランのように自分に戻ってくるんだとも思いました。

【編集部】中村先生は、是非やらせてくれという感じでしたか。

【中村】いいえ。うちの事務所は、もともと副会長になった人も多く、本当は私よりも先輩の先生に打診が来たのですが、その先生が色々な事情でできないから代わりにやってくれ、という感じで話がありました。
以前その先輩に、私もサポートするから是非やってくださいと言っていた手前、自分に回ってきたときに断れなかったというのはありました。

【編集部】いつ頃お話があったのでしょうか。

【佐藤】就任する前の年の秋だったと思います。その頃から、新規の受任を控えたり、自分の仕事をほかの人にやっていただくために整理するなど事前準備を始めました。

【藤井】私は9月でした。1か月ぐらい考えてお引き受けしました。年明けになってからは、新しいお仕事は受任を控えるようにしていました。

【中村】もともと先輩が受ける予定だったので、私に話がきたのは、11月ぐらいでした。新件を取らないわけではないですが、少し減らすようにはしました。

2 副会長になるには

【編集部】副会長になるにはどれぐらいの実務経験が必要でしょうか。

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【藤井】私は弁護士登録14年目で副会長に就任しましたが、私くらいの経験でもできないことはないと思います。ただ、全方向に目配りしてくださる筆頭や先輩の先生方がいてこそのバランスだと思います。

【編集部】別に、何年経験があったほうがいいとかいうのがあるわけではないのですね。

【中村】あんまり若いと苦労することもあるかもしれませんが、10年もあれば十分という 気がします。あとはバランスでしょうね。

【編集部】他会に比べるとどうなのでしょうか。

【中村】前年度は、特に若かったですし、過去も東京三会で一番若いことが多いですね。

【佐藤】私は、筆頭以外の副会長は、活発に動けたほうがいいと思いますので、むしろ若い方がいいと思います。

【編集部】会務経験は必要ですか。

【佐藤】もちろん会務経験があったほうが、会務がどう運用されているのかが分かるので入りやすいとは思いますが、ただ、周りも教えてくれますし、勉強すればすぐ慣れるので、特に必要ないと思います。

【中村】なくても十分やっていけるのではないでしょうか。

【編集部】いくつ委員会をやっても副会長の担当委員会を全部経験している人はいないということですよね。会派活動の経験は必要ですか。

【藤井】私は、会派に入っていませ ん。ただ、全体の調整などで会派が大きな役割を果たしているということはよく分かりましたし、そういう活動をしている方がいるから色々なことがうまく回るということも分かりました。
会派をやっていないけど会務には興味があるという人もいると思いますし、私もあえてこれからも会派には入らず二弁の活動に参加していきたいと思っているので、全員が必ずしもやっている必要はないと思います。

【佐藤】他会でも、男女共同参画枠から選出しているところもあるようですので、二弁も、会派とは全く無関係に、女性の組織などを作って、そういったところから選出するようになればまた違ってくるのかなと思います。

【編集部】経済的余裕がないから副会長ができないという声もあるかもしれませんが、その点はどうですか。

【佐藤】例えば勉強のために留学に行くとか、大学に行くとか、あるいは公務員になって色々な経験を積むとか、経済的に余裕があるなしにかかわらず、やりたい人はそれに価値があればやるじゃないですか。副会長職も同じで、やる価値の大きい仕事ですので、経済的余裕がある人でなければできないと考える必要はないように思います。

【中村】私自身も、経済的な余裕があったわけではありませんが、弁護士会からは給料が出ますので、何とかそれでやりくりできました。必ずしも貯金がなくても何とかなるかなと思います。

3 担当する業務内容について

【編集部】少し話は変わりますが、副会長職には、筆頭からはじまる席次があるようですが、やることに違いはあるのですか。

【中村】かなり違いがあると思います。筆頭・2席は、内容が重い懲戒の関係、人事労務、苦情対応もあります。藤井先生と私は、5 席と6席だったので比較的楽しい委員会が多かったですよね。

【佐藤】私は2席でしたので、苦情相談、会員対応などが多く、胃が痛くなる思いをいくつもしました。抱えている委員会は副会長によって違いますし、委員会ごとにやっていることも全く違うので、自分がどの委員会を担当するのかで業務も大きく異なってきます。国際委員会を担当すると海外にもよく行くでしょうし、私みたいに互助会だと互助会の旅行に付いていくなどもありました。

【編集部】担当する委員会や業務はどうやって決まるのですか。

【佐藤】最初に希望は聞かれましたが、会長が決めました。

【中村】私のときは、基本的に自分たちが関わっていた委員会をメインに、会長が決めました。

【佐藤】全部合わせると30ぐらいの委員会を含めた会議体を担当していたと思います。全然知らない委員会もあり、委員会で議論しているものを一から勉強するのも結構大変でした。だけどこれが本当にいい経験になりましたし、色々な知識が増えたと思います。

【編集部】女性副会長が担当することの多い業務は何かあるのですか。

【佐藤】特にないです。男女共同参画や両性の平等は今のところ女性が担当になることが多いですが、男性が担当することもありました。特に女性だからということは、副会長職において全く感じたことはなかったです。

4 副会長職と自分の業務との両立

【編集部】副会長の仕事には、どれぐらい時間を取られるのでしょうか。

【中村】委員会への出席など、それなりに時間を取られまして、事務所にも行けない日もありましたが、なるべく毎日ちょっとでも事務所に顔を出すようにしていました。

【藤井】私は、週4回前後会館に行っていました。子育てもあって、事務所には、全体の会議ぐらいしか出ていませんでしたが、Zoom などでも参加できました。社外役員をしている会社には必要なときにちょくちょく行っていました。

【佐藤】私も結構な時間は取っていました。せっかくやると決めていたので、なるべく副会長職を優先するようにしていましたので、ほぼ毎日は会館に行くようにしていました。事務所にも、必要に応じてですが、空いた時間に行って仕事をしていました。

【編集部】理事者室にPCを持ち込んで、自分の仕事をやっている人もいるようですが、理事者室でも仕事はできるのでしょうか。

【中村】メールは比較的自由にできます。電話は、別の部屋に入って電話するなど多少遠慮しながらにはなりますが、できていました。

【編集部】弁護士業務との両立はできましたか。

【中村】できていたと言いたいのですが、正直なところ、書面の提出期限がだいぶぎりぎりになったということも多かったです。

【藤井】役員室でもメールはできたので、それで完結する業務は滞らなかったです。私の場合、子育てとの両立だったので、絶対自分でやると決めたことはやっていたけど、だんだん回らなくなってきて、子どもの送迎などはだいぶ助けてもらいました。

【佐藤】やっぱり両立はつらかった気がします。もともと取扱案件も、取引系が主だったので、依頼が来るとすぐ返事をしなきゃいけないというのが、厳しかったですね。
一人で事務所をやっていらっしゃる先生の中には、副会長の任期前に、他の事務所の若い先生に事件をお願いできるように、体制を整えていた先生もいました。

5 収入面の変化

【編集部】収入は減ってしまうものなのでしょうか。

【佐藤】任期中はそんなに変わりませんでした。翌年度は新件を受けられなかった分、私は、減りましたね。

【編集部】副会長はお給料が出ますよね。それでもマイナスのほうが大きいのでしょうか。

【中村】月40万円のお給料が出ましたので、任期中のマイナスはそんなにありませんでした。ただやはり私も、任期中の新件は少なかったので、その分今年度が怖いです。

【藤井】私はもともと限られた時間で働いていたので、余り大きく変化はないです。ただ、シッターさん代は大きく増えました。
過去の副会長のお話を聞いてみると、任期中は、時間が取られる分、体力的にきつかったという話は聞きますが、収入面では任期中もその後も、そんなに変化がなかったという話も聞きます。結局、人によるところだと思います。

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6 行事への参加

【編集部】副会長になると懇親会や忘年会など、夜に行事があってそれも大変なんじゃないですか。

【中村】多いですね。委員会、市民会議など色々な会合の懇親会などがありました。

【編集部】なかなか断りにくいものですか。

【中村】もちろん断ろうと思えば断れるのですが、やっぱり呼ばれると行かないと悪いかなと思って、ちょっとでも顔を出すようにしていました。全然顔を出さないというのはなかなかしにくかったですが、子どもに夕食を作るため懇親会の途中で早く帰ったりはしていました。

【編集部】女性副会長の先生方はどうでした。

【佐藤】懇親会は結構ありました。委員会のもあれば、三会、他会とのもありました。私は、任期も1年間だけだし、せっかくの機会と思い、ほとんど参加していたので、飲み会ばっかりだった記憶があります。ただ、絶対参加しなきゃいけないというものでもなく、参加されていない副会長もいらっしゃったので、参加が必須というものではないと思います。

【編集部】藤井先生は大変ですよね。お子さん3人いて、夜出掛けるのは。

【藤井】私は逆に絶対に参加しなくてはならないものだけ参加して、そのほかは断っていました。関谷会長が「これは単なる懇親ですから断っていいんですよ。」と都度フォローしてくださったので、そういうものは気兼ねなく辞退できました。リーダーが率先して言動で示してくれることはありがたかったです。 絶対行かなければならないというものだけでも、平均すると週1〜2 回あり、出張と会合が何日か続いたこともありました。さすがに、そのときは色々なことが回りませんでした。

【佐藤】でもそういう機会もなければたぶんお会いできない方とのお食事会なので、私は楽しかったです。

【編集部】あとご家庭との関係で気になるのが地方出張ですが、どうでしたか。

【中村】秋は、弁連大会や公設委員会関係の出張、台湾への出張など、土日は必ず何かがあるような感じでしたが、逆に土日は妻の仕事が休みで、妻の協力が得られたので、私はそんなに大変ではなかったです。

【佐藤】私も子どもが大学生だったので問題ありませんでした。同期の副会長の先生で、お泊まりはできない先生もいらっしゃいましたが、日帰りで行くこともできましたので、そんなに地方出張が負担ということはなかったです。

【藤井】秋に数が多くて、3か月で9回行っていました。うち4回が海外でした。私は平気でしたが、家族がしんどい思いをしたらしくて、娘は寂しいと言い、夫は初めてお弁当作りを任されて混乱していました。それでも、私は、副会長のときでないと二度とできない出張という感じで見聞が広がったので、ありがたかったかなと思っています。

【編集部】海外に理事者全員で行くこともありますね。

【藤井】隔年で台湾とソウルのどちらかに行きます。

【中村】昨年度の台湾は、理事者みんなが楽しんで、観光などもして非常に評判がよかったです。

【藤井】楽しかったです。歴史と文化の違いを学べましたし、普通に業務をしていたら絶対ないであろう現地の弁護士との交流もできました。

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7 家族・事務所のサポート

【編集部】副会長になるためには家族のサポートが必要でしょうか。

【藤井】家族の理解は絶対必要です。副会長になろうと考えていると夫に伝えたところ、「役に立てるんだったら面白そうじゃん。」という軽い感じで賛成してくれました。しかし、1 年通してみると、思った以上に時間を取られている様子にびっくりしていて「ちょっと僕は理解が浅かった。」と言っていましたね。
でも、任期中の出張で家にいないこともあり、強引にそういった機会を持てたことで、家事の面など夫にもできることが増えたので、私としてはよかったです。弁護士会にたまに子どもと一緒に行くと、みんなが優しくしてくれて、楽しそうに仕事をして頑張っているママの姿を見るのは、子どもたちにとってもうれしかったみたいでした。

【中村】理事者室にもお子さんを連れてこられて、アイドルになっていましたもんね。

【佐藤】出張は必ずしも行かなくてはいけないというものではなくて、それぞれそこは自分の裁量で決められるので、どうしても出張はだめという方でも大丈夫です。

【藤井】私も行きたくないものに行かされることはなかったですね。自分で、行くべき、行きたいなというものにだけ行っていました。

【編集部】事務所の理解はどうですか。

【佐藤】事務所の理解も必要だと思います。私の場合は、弁護士会活動をよくやっている事務所なので、その点問題はありませんでした。むしろ、「自分のこれからの弁護士の活動を考えた上でも、副会長をやることはいいよ。」と言われたくらいでした。

【編集部】藤井先生の事務所は、初の理事者ですよね。

【藤井】そうですね。自由とダイバーシティを重視する事務所なので、やりなさいと言われることもないし、やりたいならどんどんやればいいという感じでした。事務所の弁護士からは、「理事者をやる人がいるなんてちゃんとした事務所なんだねと言われた。」と言われたり、FATFの年次報告書などを出すときも「みんな、藤井先生に迷惑を掛けないように出しましょう。」と言ってくれたり、そういう態度で応援してくれていました。

8 副会長を終えた後のお仕事

【編集部】副会長を終えた後について、一部では「後三年の役」とも言われているそうですが、何かやることがあるのですか。

【中村】必ずやるのは、市民相談の担当委員と常議員ですね。私は、公設運営委員会の委員長もやることになりました。

【佐藤】私は担当していた委員会の委員や幹事、日弁連や関弁連の委員や理事をやっています。副会長をやる前と比べると圧倒的にやることが増えました。ただ副会長を経験すると二弁がどういう会なのかがよく分かり、それを皆さんに伝える必要性も感じます。また、他会から意見が出たときに、「二弁はこうやっています。」と説明するためにも、日弁連や関弁連の会に参加することは意味があると思っています。

【藤井】私は日弁連の理事を引き受けることになりました。私も会務をやらせていただいて分かったことも多いし、こういうことに関われることはありがたいなと思って前向きにお引き受けしています。

【編集部】日弁連の理事も一定割合を女性にするというクオータ制がとられているのですか。

【佐藤】はい。日弁連の理事の女性陣が集まって会議を持って、意見書を作って提出し、これが採用されました。

【藤井】日弁連では、75人の理事のうち15人以上が女性になるようにしています。佐藤先生が発起人に名を連ねた意見書を拝見していたので、せっかくできた制度を絶やしてはいけないと頑張っています。

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9 副会長を終えた後のお仕事

【編集部】副会長をやって、よかったこと、苦労したことは何ですか。

【中村】二弁の中の組織が分かり、色々な人と会って人脈が広がったのがよかったです。また、刑事弁護の関係、子どもの権利の関係など、新しい制度を始めるにあたっての後押しをすることができたことにもやりがいを感じました。

【藤井】人との出会いが大きいです。仕事を通しての出会いなので、懇親会に行けずとも、この先もきっと続くであろう深い信頼関係ができました。昨年度の会長、副会長7人も毎日顔を合わせていたので、今頃皆さん会えなくなって、二弁ロスだと思います。

【佐藤】苦労したことは、会員の皆さんのご意見を吸い上げて、それを調整して実現していくことです。やりたいこと、希望を受け止めた後に、それを実現していくにも順序を追ってやっていかなきゃいけないということを痛感しました。そういうことを経験できたことは、自分の財産になったと思います。
弁護士だと1人で仕事をすることが多いので、お客さんのために何かをすることはあったとしても、組織の一員として何かを動かす、色々な人の意見を取り入れてそれを実現していくことはなかなかできない経験じゃないかと思います。
時間が取られてしまう面はありますが、でもその時間を費やした分の経験が得られ、成長できたと思います。

10 副会長を終えた後のお仕事

【編集部】副会長を経験されて、仕事に活きたことはありますか。

【中村】これまでだらだらしていたところは、短時間に集中してやるようになりました。同期の筆頭副会長の仕事ぶりを見て、書面に対する慎重さや検討の深さ、そういったところも勉強させていただきました。会長声明を1 つ出すにしても、ものすごく深く検討されていた姿が印象的でした。

【佐藤】私は、例えば企業や組織の依頼者が弁護士のところに来るまでの過程が想像できるようになった気がします。組織で働くと、組織のルールや人間関係が分かるようになりましたし、組織を動かすための決め言葉のようなものも分かったりするので、非常に勉強になったと思います。

【藤井】私はぶれないことの大切さですね。結論を出すまでに色々な方向から意見をもらって考えますし、必ずこう言われるだろうという反論を考えながら、それでもこうだと思う方向にみんなで協力や調整をしつつ進める方法を皆さんから学びました。

【編集部】副会長を経験されたことで、新たに開拓されたお仕事もありますか。

【佐藤】やっぱり役員的な仕事は増えました。スポーツ団体の理事や政府の委員などのお話をいただきました。/p>

【藤井】私は、任期を終えたばかりなので、まだありませんが、やはり社外役員などへの就任のお話が来るようになったというお話は、過去の副会長からよく聞きます。

11 副会長をやって分かった二弁の良いところ

【編集部】副会長をやって分かった二弁の良いところって何ですか。

【中村】自由闊達で、若い人が元気なところです。副会長になって会務を改めて見ると、若手フォーラム、法教育、修習委員会等に若い先生が来ていて、若手が頑張っている部分をすごく感じました。

【藤井】やっぱり誰の声も聞いてくれて、年次などにとらわれないで自由に発言ができるし、それこそ私も期も若いし会務経験もないけど、皆さんお互いを尊重して話をしてくれ、受け入れてくれて、すごく懐が深いなと思います。また、二弁では比較的、会長、副会長が若いですよね。先輩方も助けてくださるので、そういったバランスの良さがあると思います。
また、他会のことはよく分かりませんが、二弁は、新しいものを提案したときにちゃんと話を聞いて受け入れてくれるというのが、私はとてもやりやすいし、若い方にとっても参加しやすいところかなと思っています。

【佐藤】私は、互助会を担当していて、楽寿会という70歳以上の先生方の会で、一緒に観劇して懇親会をやるという企画に参加したのですが、皆さんすごく二弁ラブなんです。皆さん二弁が本当に大好きだと言っているのを聞いて、やっぱり二弁はいい会なんだなというのを実感できました。その中の一員でいられて、みんなでこれから二弁を作っていこうという中にいられるのは有り難いことだなと思います。
また、藤井先生も言われたように、二弁は若い先生が発言しやすいところがあると思います。発言したことに対して、「いや、そんなことを言っても。」と否定するのではなくて、「じゃあ、やってみてごらん。」と言ってくれる。そこがすごく二弁ならではの良いところではないかと思います。

12 これから副会長になろうという人への提言

【編集部】これから副会長になろうという人のために、副会長の仕事をもう少しこういうふうに改善したほうがいいと思うところはありますか。

【中村】1年やって思ったのは決裁書類の多さです。私のときにも改革して、減らすように検討はしていましたけど、もっとIT化できればだいぶ違うと思います。

【藤井】やっぱり書面決裁や電話、メールなど、役員室に行かなきゃいけない仕事はもう少し減らすべきです。書面決裁の電子化をしてくれると場所にとらわれずに働けますね。是非進めてほしいです。
また、副会長業務を役員室外でやろうとすると、自分の個人アドレスや個人の携帯電話番号が表示されてしまうことも改善が必要ですね。
私は、時間が限られている中で、全ての委員会に出席することは無理だったので、委員長と、最初の何分だけ出るなど調整をするように工夫をしていました。それで特に不満はありませんでしたので、そういったやり方が浸透していけばよいなと思います。

【編集部】そうですね。いつまでも古いやり方は改めていくべきです。

【佐藤】副会長職を皆さんにやっていただくためには、自分の業務との両立ができる状態にしてあげないと厳しくなると思います。事務所にいながらも会務の仕事ができる、事務所にいながらも委員会に顔を出せるというシステムができると、もっとやってもいいと思ってもらえるようになると思います。 また、若い先生方は、家庭と仕事と会務と3 つになってきてしまうので、これをうまくバランスよくできるようにするためにどうしたらいいのか、これから男女共同参画でも考えていきたいと思います。

【編集部】是非お願いします。業務の効率化、委員会への出席などの見直しができれば、今より拘束時間がだいぶ減るのではないかと思います。

13 これから副会長になる皆さんに向けて

【編集部】まだ期が若いからとか、女性だからといって、副会長就任をしり込みする人もいます。こういう人が副会長になるメリットはありますか。

【中村】やはり若い人のほうが弁護士会の色々な部分が分かるようになる上人脈も広がるのでいいと思います。女性は男性と感性が違いますので、男性にとっても女性の考えを聞くことによって気付かされることも多いと思います。

【佐藤】必ずしも年代や男女が全てじゃないですよね。考え方は人それぞれですが、若い人や女性がいることで人それぞれであることが可視化されて、色々な意見を柔軟に受け止める雰囲気が作られやすいと思います。

【編集部】どうすれば若い人や女性に積極的に副会長になってもらえるでしょうか。

【佐藤】毎年、アピールが足りないのか本当に苦労しています。もしかすると、一歩前に出る自信がないということがあるのかもしれませんが、副会長の役務は、そういった方でも大丈夫ですということを伝えていくのが重要ではないかと思います。
特に、女性には、もっと色々なことを経験してみましょうと言いたいです。弁護士業もいいですけれども、副会長業務をやってみると、自分って意外と調整役に向いているかもしれないとか、人に伝える能力があるかもしれないとか、自分の能力に気付く機会にもなるので、是非手を挙げてほしいと思います。
どこに手を挙げればいいのかですが、私の所属する男女共同参画推進二弁本部でも、あるいはほかの委員会でもいいですし、ここにこういういい人がいるというのをもっと教えてほしいと思います。

【藤井】二弁の副会長は大変さに見合うだけの決定権があり、その分のやりがいがあるので、いい経験になると思います。やっぱり若い人がやると特に広い視野を持つ機会になると思います。今、特にコロナの問題もあって、1個の仕事だと浮き沈みが激しくて大変だという中で、ポートフォリオ的に自分の仕事や経験が色々あるのは、今後の人生を長く豊かにしてくれるのではないかと思います。
また、過去の理事者も、皆さん経験した人は、絶対に1年間やって楽しかったと言っているので、やって後悔はないと思います。
私の場合、前任に佐藤郁美先生がいらっしゃったことが大きくて、そういうロールモデルは大事だと思います。家庭や仕事もある中で、佐藤先生が副会長職を生き生きやっている姿を見られたことは、とても重要な意味を持ちました。

【編集部】小さいお子さん3人を育てながらやり切った藤井先生は一番のロールモデルだと思いますよ。

【佐藤】こうやってどんどん女性が手を挙げてくれて、つないでいくことが一番重要ですね。これを途切れさせたくないなと思いますので、皆さんどんどん手を挙げてくれるとうれしいです。

【編集部】今、副会長になるのを迷っている人、そんな気がない人に向けて何を伝えたいですか。

【中村】やってみれば新しい発見もあるでしょうし、世界が広がると思います。また地方に行くと同期の方が頑張っている姿を見て負けていられないなと感じました。迷っている人がいれば、是非やっていただいて色々な経験をしてもらえればと思います。

【佐藤】もしかすると私たち探すほうにも問題があるかもしれませんね。子どもが小さいからだめだろうとか結構みんな思い込んでいる けれども、そうでもないし、それは周りが支えてあげればできることかもしれません。

【中村】これからより一層IT化が進むので、若手にとっても、女性にとっても、やりやすい環境にはなっていくと思います。また、会としても是非その辺を整えていければと思います。

【編集部】皆さん、長時間ありがとうございました。

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