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花水木

hanamizuki202008.jpg 小枝 未優(69期)
●Mihiro Koeda


私は法科大学院在学中に国際紛争解決というジャンルに惹かれ、弁護士となって以来、主に国際仲裁事件に携わっています。本稿では、私が日々の業務の中で感じていることを書き綴りました。

国際業務に携わることになって最初にぶつかった壁は、英語の難しさでした。依頼者の多くは日本の会社ですが、手続で使用する言語は英語がほとんどであり、事務所内でも外国法事務弁護士と仕事をすることが多いため、仕事中は英語を書き、英語で話すことが大半です。留学経験のない私にとって、はじめは苦労することが多かったですが、弁護士となって4年目の今では、ようやく日々の業務に負担を感じなくなってきたところです。

しかし、今でもまだ難しく、かつ面白いと感じるのは、英語における「礼儀」の作法です。英語には日本語のような敬語はありませんが、やはり目上の方に対して使う言い回しと、そうでない言い回しは違うようです。その中には、日本語のように定型の言い回しや、目上の方には使わない単語等もありますが、むしろより大事なのは、多くの重要な仕事に追われて時間のない目上の方に対して、どのように気配りができるかという意識にあるようだということに気が付きました。このように意識すると、単に言い回しだけでなく、報告する内容やお願いをする内容そのものが変わってきます。これはもちろん日本人と日本語で仕事をするときも同じですが、ネイティブではない言葉を使ってコミュニケーションをとることで、その意識が自分の中でより鮮明になったと感じています。今では、この意識を日本人の依頼者とのコミュニケーションの際にも心掛けています。弁護士に依頼している案件とは別に、その方自身の仕事にも追われている依頼者が、どうすれば負担を感じることなくその案件を弁護士と協働して進めていけるのか、日々考えながら依頼者からの相談に応じています。

もう一つ、国際業務に携わる中で面白さを感じる点は、仕事の進め方やコミュニケーションのとり方に関する意識・文化の差です。外国法事務弁護士と仕事をしていると、日本人とは仕事の進め方が違うと感じることがありま す。

例えば、海外の会社と比べると、日本の大きな会社では、意思決定のために役員会その他の会議体を招集しなければならない場面が多く、説明資料作成等のために、比較的多くの時間や労力を要することがより多いようです。外国法事務弁護士によっては、はじめはこのことを理解していない弁護士もおり、その場合には日本人弁護士として、その会社のやり方を説明し、弁護士チームと依頼者との橋渡しをする必要があります。外国法事務弁護士から話を聞くと、その弁護士の国ではこのように違う、といった話を聞くこともでき、日本との違いを発見できてとても興味深いです。

このように、国際業務には大変なこともありますが、日々新しい発見が多く、おかげで刺激的な毎日を過ごしています。今後も広く経験を積み、依頼者へ最良のサービスを提供できるよう研鑽していきたいと考えています。