花水木(特別編)
日本社会への貢献を目指して
●Belosludova Olga ベロスルドヴァ オリガ(72期)
1.経歴
私はロシアのノヴォシビルスク(シベリアの中心都市) の生まれです。2歳半の時、物理学の研究者である父の仕事の関係で、宮城県に移住し、高校卒業まではずっと仙台で過ごしていました。インターナショナルスクールではなく、普通の公立小中学校に通っていたので、考え方はロシアよりも日本の方々に近いと思います。
その後は、慶應義塾大学、東京大学大学院に進み、大学院在学中に予備試験・新司法試験に合格して、2019年末に弁護士登録しました。弁護士として働きながら、東京大学大学院に復学し、山川隆一先生のもとで労働法の研究論文を書いたり、増井良啓先生のもとで国際租税法の研究をしたりしています。
2.これまでの仕事
現在は、ポールヘイスティングス法律事務所に所属しています。予備試験合格後のウィンタークラーク等を通じて、多くの法律事務所からお声掛けをいただいたのですが、① アットホームな雰囲気、②1年目から経験できる案件の規模、③事務所外の活動への制約の少なさ、という観点から現在の事務所で働くことにしました。これまで、1年目の弁護士としては得がたい様々な経験ができているのも自由度の高い事務所のおかげであり、私の選択は今のところ間違っていなかったかなと思っています。
事務所での仕事の中心は、主に企業法務です。会社法や金融商品取引法といったコーポレート分野の主軸となる法律だけでなく、労働法、個人情報保護法、電気通信事業法、外為法のような幅広い分野にも携わっています。外資系の法律事務所ということもあり、主に英語を用いながら、日本企業と海外企業との橋渡しをしています。
他には、COVID-19による特殊な環境の中での刑事裁判における国選弁護人を務めたり、事務所を離れた個人としては、離婚等の一般民事の案件も並行して行ったりしています。刑事事件等の関係で警察署や裁判所に行った際は、私が珍しい風貌だからか、警備員さんに入口で止められることもあります。警備員さんを責めるつもりはありませんが、私の存在をもっと多くの方に知っていただくことで、そんな事態がなくなればいいなと思います。
3.第二東京弁護士会とのかかわり
司法修習の過程で、第二東京弁護士会で研修を受ける機会がありました。その際、指導してくださった先生方の優しさがきっかけで第二東京弁護士会に所属することを決めました。委員会の活動も興味深かったので、国際委員会と非弁委員会の2つの委員会に参加しています。
4.将来への意気込み~日本の弁護士業界全体のパイを広げる~
私の弁護士としてのライフワークは、日本の弁護士業界全体のパイを広げ、結果として日本社会全体に貢献することです。法科大学院設置等の司法制度改革を通じて、弁護士の「供給」は増加しましたが、「需要」は伸び悩んでいて、それが非弁提携の蔓延や、あるいは、ダンピングのような業界全体の問題につながっていると考えています。以前、水野祐先生が、「弁護士のフィーがコンサルや海外のロイヤーと比較して安すぎるから業界全体で上げていく努力をすべきだ、という議論はどうも腑に落ちない。( 中略) 個としてプレゼンスを上げる努力をすべきで、その結果、個のフィーの上昇があり、全体のフィーの相場観の上昇がある。」というお話をされていました。私としても、私自身が提供できる価値を高めるとともに、他の先生方と協力することでシナジーを生み、業界全体を高めていくことができればと考えています。具体的には、ロシア語のネイティブスピーカーかつ、日本の弁護士資格を有している私の存在によって、これまでの「弁護士+ロシア語通訳」の組み合わせではアプローチできなかった領域へ業務を拡大することや、心理的な親近感を活用して、海外企業との交渉をスムーズにするといったこともできればいいなと考えています。人口減少の局面を迎えている日本においては、こういったベクトルの重要性も更に増しているように思います。
5.インターネットでの情報発信
このような未来への第一歩が、インターネットや各種メディアを活用した情報発信でした。ロシアに関連する法律問題に直面した方が私の存在を知っていれば、私がコミットできる余地が生まれますが、そのためにはまず私自身の認知度を高める必要があったからです。
広告規制の多くの制約の中でプレゼンスを高める方法として、自分のウェブサイトを開設したり、SNSで情報発信することを始めてみました。その結果、反応が一番速かったのがTwitterで、先輩の先生方によるリツイート等のご助力もあって、多くの方々とつながりをもつことができました。いわゆる「炎上」でイメージを下げることもなく、実際に弁護士としての活動に結びついているので、自ら積極的な情報発信を始めてよかったなと考えています。弁護士が発言力を高めることは、クライアントに提供する価値の増大にも資すると思いますので、今後も引き続き、有益な情報発信をしていくつもりです。
6.最後に
最近は、各種メディアにお声掛けいただくこともありますが、私自身としては「タレント弁護士」としてチヤホヤされたいわけではありません。今後も弁護士業務を主軸に置きつつ、一流の弁護士になれるよう実績を積んでいきたいと考えています。
長文を最後までお読みくださり、どうもありがとうございました。まだまだ新人ですので、今後ともご指導ご鞭撻の程よろしくお願いします。