出版物・パンフレット等

山椿

味岡 良行(40期)
●Yoshiyuki Ajioka

「群れない、頼らない、ブレない、ほめられようとしない」(若松孝二監督)
群れず、組織に頼らず、人の評価を気にせずに生きたい、というワガママを通奏低音として、弁護士業を選択しました。私自身に高邁な理想や信念があるわけではないので、功成り名を遂げた同業の先人たちには及ぶべくもありません。そこで、後に一つだけ自慢話を入れて、独立開業後の心象風景を振り返ることにしました。

「人は人と絡み合ってこそ、自分の存在を確認できる」(引きこもり自立支援団体代表者)
独立後、多忙によるストレスの負担、男性更年期の体力低下、体重増加が顕著になりました。これでは心身ともに持たなくなるとの危機感から、ジム通いが始まりました。自宅と事務所とジムのトライアングルは、生活に良いリズムを作ってくれました。しかし、家庭と仕事と趣味だけでは、社会における自分の立ち位置が分からなくなり、いったい自分はどこの誰なのか確認したいという願望が生まれてきました。そこで、組織に属して一つの歯車になってみたいという、当初の志とは真逆の心境に立ち至りました。

「飲み会の幹事を任されたら、それは仕事を任される布石だ」(某社の広告コピー)
そんな時期に当会の副会長就任を打診され、群れず、人からの評価を気にしたくないと身勝手を貫いてきたにもかかわらず、受けてしまいました。その当時は、会務や会派での人間関係によって、世間の片隅での自分の位置と存在意義を確認したいという心の隙間がありました。上の広告コピーは、「飲み会の幹事を任されたら、それは次回も幹事を任されることになるが、いずれ仕事に役立つこともある」という意味だと理解しています。会務、閥務をしても、仕事に繋がるわけではありませんが、世間や業界のしきたり、行儀作法を見習うことができました。年齢を重ねると法律問題以外に組織の運営、人間関係の調整も仕事の一部になってくるので、「飲み会の幹事」などの経験も生きてくるというわけです。

「マゾ・ナル・ストイシズム」(私の造語)
仕事のストレス対策で始めたジム通いは、ジムで全身の筋力と心肺機能を限界に追い込むマゾヒズムとか、ルーチンのトレーニングを何よりも優先するストイシズムとか、風呂上がりの鏡に映った自分の肉体に魅入るナルシズムへと発展して、自己存在の確認と自己肯定感につながりました。

「筋肉は裏切らない」(TV番組のキメ台詞)
トレーニングの成果で腹筋は6つのブロックに分かれています(自慢話)。しかし、頭脳はメタボなので、リカレント教育や社外役員の団体に登録しています。こうした意欲が生まれるのも、定年がなく仕事を続けられるからです。弁護士業が天職だとは決して思っていませんが、組織に属して退職や出向していたら煉獄の炎に焼かれていたに違いない、それを思うと、ストレスがあってもかえって良い刺激となっています。やはり組織の歯車にならずに良かったと、ささやかな幸福感に浸っているのが昨今の心境です。
「人はいつも楽であることを求めるが、本当の幸せをもたらすのは刺激である」(脚本家エリック・バーカー)

ロードにも乗ります
ロードにも乗ります。