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ファミリー・フレンドリー・アワード

男女共同参画推進二弁本部 副本部長 須田 克也 Katsuya Suda(70期)

当会の新年式において、「第7回第二東京弁護士会ファミリー・フレンドリー・アワード」の表彰式が執り行われました。
当会独自の本表彰も第7回を迎え、昨年度は残念ながら該当事務所なしでしたが、本年度は「三浦法律事務所」が表彰されました。

「第二東京弁護士会ファミリー・ フレンドリー・アワード」について

「第二東京弁護士会ファミリー・フレンドリー・アワード」とは、効果的かつ先駆的なワーク・ライフ・バランス推進策を実施している法律事務所を表彰し、 その優れたワーク・ライフ・バランス推進策を、会内のみならず社会にも紹介するものです。
法律事務所における男女共同参画推進を目指すため、当会会員が所属する事務所の中から、継続して表彰し、ワーク・ライフ・バランスの重要性を、会の内外問わず広く社会に伝える旨を、当会の「第二東京弁護士会における男女共同参画基本計画(第三次)」においても目標に掲げています。 受賞事務所には、当会のシンボルであるひまわりの花をあしらったトロフィー、賞状及び副賞が贈呈されます。
受賞事務所は、弁護士及び事務員のワーク・ライフ・バランス推進のために、様々な施策を実施し、効果を上げている事務所、又は先駆的なワーク・ライフ・バランス推進策を実施している事務所となります。本年度も、ノミネートされた事務所の中から、男女共同参画推進二弁本部において、以下の選考基準に従い、受賞事務所を決定しました。
⑴在宅勤務・時短勤務・フレックス制勤務などの柔軟な勤務体制の推進
⑵産前産後、育児、介護のための休暇の充実及び復帰の支援
⑶事件配転の工夫・複数受任等の業務内容における配慮
⑷業務の評価や人事における配慮
⑸収入保証、経費負担軽減等の経済的支援
⑹シッター援助等の育児・介護支援制度
⑺ワーク・ライフ・バランスを尊重する意識の醸成

受賞事務所について

三浦法律事務所では、産前産後期間や育児期間中の休業支援のほか、復帰後の働き方支援についても制度が整っています。実際に制度を利用し、育児と業務の両立を図っている男性弁護士もいました。また、就労環境をより良くするために、既存の制度の見直しや改善を図る工夫がされています。
他の弁護士のワーク・ライフ・バランスを尊重する意識が、所属弁護士の共通認識となっている点についても、ワーク・ライフ・バランスに対する意識の高いものといえます。

三浦法律事務所の「Diversity & Inclusion」

私たち三浦法律事務所は、2019年1月に設立され、3年目に入った新しい事務所で、弁護士数は50名を超えました。
設立当初から、コアバリューとして「Diversity & Inclusion」を掲げており、パートナー弁護士の女性比率は35% 超です。外国人弁護士も在籍しており、多様性を重んじる国際企業や海外の法律事務所から高い評価を受けています。また、若手・中堅を中心とした事務所なので、男女ともに子育てと弁護士業を両立している弁護士が多く、お互いをサポートし合うことで既成概念にとらわれない柔軟な働き方を実現しています。こうした多様性を認め合う(=インクルージョン)ことを、所属する弁護士皆が重要だと考えています。
私どもは、弁護士・スタッフ全員が、業務の質を高めながら、ライフイベントに応じて長年にわたって当事務所で快適に働けることを重視しており、そのために必要なシステム導入や、組織作りを積極的に行っています。施策は事柄に応じて、弁護士・スタッフ双方または片方に適用されます。
全体としてまだ足りない部分もありますし、整備済みの制度についても、事務所全体で議論して絶えず見直しを行っています。当事務所で既に実践している効果的・先駆的なワーク・ライフ・バランスを実践する仕組みについて、3つに大別してご紹介いたします。少しでも皆様の参考になれば幸いです。

1. ITを活用した柔軟な働き方

当事務所では、コロナ禍以前から、執務場所に制限を設けないで効率的な働き方ができるよう、IT を活用した環境整備に力を入れていました。結果として、コロナ禍を受けての弁護士・スタッフの在宅勤務への移行がスムーズに進み、子育て中の弁護士にも働きやすい環境になっています。

  • ノートPC を入所時に弁護士・スタッフ全員に支給
  • 事務所資料は全てを専用クラウド「MicrosoftSharePoint」に保存し、事務所PC があればどこからでもアクセス可能
  • 自分のスマートフォンから直通の電話番号での受信・発信が可能(国際電話にも対応):NEC の「UNIVERGE どこでも内線サービス」を利用しています。これを使うと、自分のスマートフォンから通話する際、事務所の内線直通番号から相手方へ発信した表示になり、事務所外で対応する際に便利です。
  • FAX も事務所PC から送受信可能
  • 「Microsoft Teams」を活用した情報共有:事務所のメンバー全員が入っているグループや、プロジェクト・属性ごとのグループを設け、そこで情報共有やコンフリクトチェックを行っています。
  • 希望によるフリーアドレス制:在宅勤務や兼業弁護士という働き方の多様性も尊重している当事務所では、固定席とフリーアドレス席を用意しており、弁護士はフリーアドレスを選ぶこともできます。フリーアドレスであっても、IT の活用のほか、担当秘書によるサポート、書類スペースの確保等により業務の効率性を保っています。弁護士・スタッフの増加ペースへの対応のための窮余の一策というのが発端ですが、各人のスタイルに合わせた働き方を実現する副次的効果が見られます。
  • 電子契約サービスの導入

2. 意識的なコミュニケーション活性化

働き方の自由度が高まり、業務外のストレスに煩わされずに効率的な業務が行える一方、在宅勤務の増加に伴い弁護士・スタッフの顔が見えにくくなると、ひいては業務に支障が出るおそれもあります。コロナ禍に加え、私どもは事務所自体が新しく、バックグラウンドの異なるメンバーで組織を作り上げていく過程にありますので、コミュニケーション促進には特に気を配って柔軟で効率的な働き方を実践しています。

  • 業務内容とは連動しない、コミュニケーション単位としての席配置の工夫(島制度:パートナーが、同島所属のアソシエイトを親身にかつ責任を持って教育することを目的として設置、メンター代わりに業務の相談もできる)
  • アソシエイトと担当パートナー間での週次の業務状況報告(繁閑具合、案件分野、キャリアパス、稼働時間等の状況)
  • 毎月の事務所会議
  • 「Teams」の活用
  • ワイン会(月1回2時間程度、担当弁護士が飲食物を用意して開催時間中出入り自由で会議室に集まる。※コロナ禍で休止中)
  • リモートワークのためのコミュニケーションツールの活用:本稿作成時点では、「リモートワークのための仮想オフィス」といううたい文句のサービスをトライアルで始めてみるなど、試行錯誤しています。正直使いこなせていない弁護士も多いのですが、リモート/ 非リモート間のコミュニケーション促進のためのツールの利用を提案する弁護士がいて、早速全員で試してみる当事務所の環境が、働きやすさの根底にあるように思います。

3. 妊娠・出産・育児に伴うサポート

(働き方サポート基本方針)

  • 妊娠・出産・育児・介護・病気など人生において働き方へのサポートが必要な時期は誰にでも生じうる。また、その期間は長期にわたることも多いので、継続的にサポートすることが重要。
  • 単に仕事を減らすだけではなく、それぞれが弁護士として、専門性を高めながら働けるようにサポートすることが必要。
  • 各人の事情が異なるのでそれを最大限尊重する。
  • 産休・育休制度 当事務所では、産前・産後休業制度(一定の経済的補助あり)と男女問わず取得できる育児休業制度を設けて、明文で所属弁護士全員に告知しています。 当事務所での育休申請第1号は男性弁護士になりました。希望があれば休業できるのは当然として、その期間やあり方は希望に応じて柔軟に対応し、休業が確保できるよう全弁護士が協力します。 言うまでもなく、育児は女性のみが担うものではありませんので、男性弁護士がごく当たり前に休業を申請してくれたことを当事務所としては歓迎しています。
  • 働き方改革サブコミッティの存在 当事務所の運営の特徴の一つにサブコミッティ(サブコミ)制度があります。パートナー弁護士全員が、本人の関心やスキルに応じて、財務・人事・IT・総務等いずれかのサブコミに所属し役割を担っており、希望するアソシエイト弁護士も活動に参加できます。 働き方改革サブコミは、全員子育て中の弁護士4名(女性3名、男性1名)が担当し、事務所メンバー全員が、長く快適に業務を行える環境を整えるために必要な施策の実施を担当しています。 働き方サポート基本方針を策定するほか、休業や働き方の調整の相談を受け付けています。 現在、ベビーシッター費用の補助、弁護士の業務総量制限(報酬連動)等について検討しているほか、施策の対象は弁護士に限らず、スタッフに対しても、スタッフの業務状況に応じた働き方改善の施策を検討しています。

69期男性弁護士の声

私は、三浦法律事務所への入所時点で、1歳10か月の子、1か月の子の二人の子がおりましたので、育児と仕事を両立できるのか不安もありながらの転職でした。
幸い、三浦法律事務所ではIT 化が進んでおり、クラウドを活用することで、場所にとらわれることがなく執務ができ、「Teams」によって随時連絡を取り合える環境でもありましたので、自宅で育児をしながらの勤務ができましたし、出勤したときでも午後6時前には帰宅するなど、業務を行いつつ育児もしており、育児と仕事を両立できています。またアソシエイトの繁忙状況が把握できるようになっており、業務量への配慮もなされています。

結び

二弁が、「ファミリー・フレンドリー」という切り口で、効果的・先駆的なワーク・ライフ・バランス推進策を実施している法律事務所を表彰する取組みを既に6年も続けていたことに、敬意を表します。
私どもの取組事例が会員の皆様にとって役に立ち、今回の受賞が法律事務所における男女共同参画の推進に少しでも貢献できれば幸いです。