出版物・パンフレット等

趣味の会紹介

アンサンブル・フォウ・ユウ

松本 操Misao Matsumoto(41期 アンサンブル・フォウ・ユウ事務局長 東京弁護士会会員)

「幾多の苦難を乗り越えて」

nf202107-shumi.jpg私は、アンサンブル・フォウ・ユウという名の法曹界関係者を母体とする、西洋古典音楽の演奏団体の事務局長を、創立した平成16年以来ずっと務めさせていただいている東弁所属の弁護士です
フォウ・ユウというネーミングは、東弁の会派「法友会」をもじってつけたものです。法曹界関係者といっても大部分は弁護士ですが、裁判官や書記官、法科大学院教授などの団員も在籍しております。これまで計16回の定期公演を、トッパンホールなどで年1回のペースで行ってきました。曲目はモーツァルト、ハイドン、ベートーヴェンなどの西洋古典音楽が中心です。このほか「室内楽を楽しむ会」も毎回盛況です。
この16年間の歴史の中でも、特に印象に残る出来事は、ちょうど10年前に起きた東日本大震災の年の定期演奏会のことです。
翌日の本番を前にして、早めに仕事を切り上げて帰ろうと考えていたその矢先、激しい揺れに襲われ、本棚から書籍が勢いよく飛び出す有様でした。まだ津波の情報など届かない中で、せっかく練習して来た明日の演奏会のことが心配でたまらず、事務所から自宅まで15㎞の距離を5時間近くかけて歩いたのです。そして家に帰り自宅のテレビで巨大津波の映像を見て驚愕したのを覚えています。
当然、翌日の演奏会は中止となりましたが、幸い8月にリベンジ公演をさせてもらうことができ、そして会場で被災地への募金を聴衆の皆様にお願いした記憶は生々しく残っています。
それから10年が経過して、だれもが予想していなかったコロナ禍の時代がやってきました。2度の緊急事態宣言の発令のため、企画した定期演奏会開催が2回とも中止になりました。しかし、心から西洋古典音楽を愛するアンサンブル・フォウ・ユウの団員は、これにめげることなどありません。今年10月16日( 土)にはトッパンホールにて、「リンツ」の愛称で親しまれてきたモーツァルトの交響曲第36番やコンサート・アリア等のプログラムでのコンサートを企画し、6月から、コロナ感染防止対策を実施した上で練習を再開する予定です。
なぜ今から200年も300年も前に生まれた西洋古典音楽が、脈々と全世界の人に大事にされ継承されてきたのか、それは、そのような音楽を生み出した偉大な作曲家の存在、その作品を代々後世に伝えてきた演奏団体の存在、そしてその志を受継いで現代でも演奏する団体の存在、そしていつの時代にも世界文化遺産の音楽に向かって拍手を送り続ける聴衆の存在、この4つの存在があってこそ、後世に文化が継承されることができたわけです。
過去、幾度となく疫病に見舞われてもすたれることなく続いて来た古典音楽です。我々は決してコロナの恐怖に臆することなく、コロナと共存しながら演奏活動を続けていく現代の演奏団体のひとつでありたいとの覚悟が出来ております。そして、この演奏会の聴衆となっていただける皆様方の存在が不可欠です。
この記事をお読みになった方々の中から10月の演奏会にお越しになる方がいましたらまさに望外の幸せです。