出版物・パンフレット等

花水木

奥田 真理子 Mariko Okuda(72期)

アバヤを着て紅海を背に@ジェッダ(サウジアラビア)

まずは、今回、「花水木」に寄稿しないかと声をかけてくださった青木美佳先生に感謝申し上げる。現在53歳。「山椿」の年齢であるが、72期の新人。「山椿」に声がかかることはあるまい。

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大学卒業後、地方銀行と外資系証券で合計14年働き、証券アナリストや米国公認会計士の資格も取った。その後、弁護士を目指してロースクールを修了したが、夫のサウジアラビアへの転勤、帯同、現地での出産、子育てを経て司法試験に合格したのは49歳だった。
弁護士としてのスタート時には当会の木村庸五先生と山中眞人先生にご指導いただいた。出来が悪 くご迷惑をおかけしたが、仕事だけでなく、弁護士としての心構えも教えていただいた。心から感謝の意を表したい。
現在はインハウスの弁護士であるが、一番の思い出は、会社のプライバシーポリシーと各種規約の改定作業である。当初、私は、法令改正に合わせて、プライバシーポリシーに少しだけ追加・修正を加えるつもりでいた。ドラフトを作成し、社内の決裁を取った。私にできるのはここまで。ここから先は、テキストをウェブサイトに載せる技術的な作業が必要だ。協力を依頼すると、社内のエンジニアやデザイナーから意見が出た。「ついでにサイトのデザインも変えたらどうか。規約は1か所にまとめた方が見やすい。ドメインも整理しよう。」こうなると、法務部以外に、規約のオーナーである各事業部の理解 や協力も必要になる。だんだん私の手には負えなくなってきた。
ありがたいことに、仲の良い企画担当者がプロジェクトマネージャーを買って出てくれた。彼女が立ち上げた「規約整理プロジェクト」のチームの人数は日に日に増え、また、各作業ごとの派生チームも次々にでき上っていった。お客様のために分かりやすくいいものを作りたい、という目標のために、みんな進んで協力してくれた。そして、無事、新しい規約類がウェブサイトにアップされた。
しかし、この仕事には続きがあった。改定通知を受け取ったお客様からの問合せがカスタマーセンターに届く。細かい法令解釈をつらつらと返事に書くわけにはいかないが、きちんと対応しないと炎上する可能性もある。カスタマーセンターの人と一緒に1件1件回答の内容を決めた。1週間後、3か月にわたる改定作業がようやく終わった。
チームの一員として働けること、これがインハウスの醍醐味ではないかと思う。

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まだ文字数があるので、弁護士になる前に遡るが、サウジアラビアでのエピソードを一つだけ紹介したい。
酒と豚肉NG、1日5回のお祈りの時間は全ての店が閉まるなど、制約の多い国であり、外国人は「コ ンパウンド」と呼ばれる外国人専用居住区で寄り添い合って生活していた。
東日本大震災が起きた当時、私は、コンパウンド内の保育園に子供を通わせていた唯一の日本人で あった。間もなく、保育園でチャリティーバザーが開催され、イギリス、フランス、エジプト、韓国など様々な国の女性たちが手作りの品を販売し、集まったお金を日本に送金してくれた。「日本に支援を」というプラカードを掲げ、親子でコンパウンド内の行進もした。私も娘と一緒に参加した。
助け合う気持ちに人種や宗教は関係なく万国共通だと実感した。外国人の子供たちに囲まれた娘の 写真を見る度に当時を思い出し、胸が熱くなる。
どこにいても何をしていても、協力したり助け合ったりする仲間は人生の宝である。感謝の念を忘れずに生きていきたい。