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辞任届付弁護人選任届が運用開始となりました

この度、東京三会と東京地裁本庁、東京地検との間において協議の結果、令和3年11月8日より、同日に東京地検に提出する弁護人選任届から、辞任届付弁護人選任届を利用しての運用を開始することとなりました。
この辞任届付弁護人選任届ですが、もともと札幌、名古屋などでは運用されていたものです。令和元年には東京三会でもこの辞任届付弁護人選任届の運用を開始しようと、裁判所及び検察庁との協議を始め、今般、めでたく東京地裁本庁でも運用開始となりました。なお、立川支部については、本庁における運用状況を見ながら、改めて立川支部における三庁協議を行い、運用開始に向けて進めることになっています。
こちらの辞任届付弁護人選任届の書式ですが、運用開始から1年間は、当番弁護士センターから、当番弁護士配点連絡票とともに当番待機している弁護士へファックスにより送付する予定です。


(辞任届付弁護人選任届の書式)二弁会員HPからダウンロード可

☆弁護人選任手続について

当番弁護士として出動後、被疑者からの弁護人選任依頼がありつつも、被疑者に弁護士を依頼する費用がない場合(現金、預金など50万円以上有しているかが基準となります)、法律援助制度を利用して受任手続をとることとなります。
そして、逮捕段階において弁護活動を行う場合には、警察署へ弁護人選任届を提出するか、または検察庁への送致後に検察庁に弁護人選任届を提出することになります。弁護人としては、勾留されないための活動が重要であることは言うまでもありませんが、実際には逮捕後、勾留決定されるケースも多くあるところです。
勾留決定がなされますと、弁護人としては国選弁護人への切替えのため、これまでは法テラスに要望書をファックスで提出するとともに、被疑者から事前に国選弁護人選任請求書をもらっておき、検察庁へ辞任届の原本を提出し、その写しに受領印をもらい、受領印をもらった辞任届の写しと法テラスへの要望書の写しを添付した上で、裁判所に国選弁護人選任請求書を提出(いわゆる3点セット)しなければなりませんでした。
ただ、この方法によりますと、どうしても援助制度を利用しての私選弁護人から国選弁護人への切替えまでに、タイムラグが生じることになります。
これまで、国選弁護人選任手続完了までの間に活動された場合の費用の問題などが生じる場合がありました。また、コロナ禍の中、弁護士ないしは事務職員が、検察庁、裁判所へ書類を持って行かなければなりませんので、検察庁と裁判所の場所自体は近いとはいえ、やはり一定の負担はありました。
そこで、そのようなタイムラグをなくし、できるだけ弁護人の事務手続の負担を減らし、国選弁護人の選任手続を簡易にするため、今般、辞任届付弁護人選任届を運用することとなりました。

☆辞任届付弁護人選任届の利用方法


(辞任届付弁護人選任届利用の際のフローチャート)二弁会員HPからダウンロード可

この辞任届付弁護人選任届の書式を利用することにより、被疑者が勾留決定された場合において、被疑者が国選弁護人の選任を希望する場合には、弁護人が事前に法テラスに要望書を提出していれば、それまでの弁護人が国選弁護人にそのまま選任されることになります。
すなわち、弁護人としてはこれまでのように検察庁へ辞任届を提出する必要もなく、裁判所への3点セットの提出も不要となります。
この辞任届付弁護人選任届の運用開始にあたり、注意していただく点があります。
まずは、①当番弁護士として出動した場合でないと、国選弁護人への切替えはできません。
この点については、従前と同様ですが、国選弁護人に選任されるには、偶然性の要件が必要とされていますので、もともとの依頼者などから接見要望があり接見した場合、知人から直接接見要望があり接見した場合など、当番弁護士制度を利用せずに接見して受任する場合、逮捕段階では援助制度を利用して弁護人として就任し活動することはできますが、勾留決定された後に国選弁護人になることはできません。
次に、②遅くとも勾留質問の始まる前、午前10時までに、辞任届付弁護人選任届の記載事項を漏れなく記載して検察庁に提出してください。
ただし、検察庁への事件送致前は警察署に提出となります。
なお、東京地裁本庁の取扱いでは、原則として勾留請求の翌日に勾留質問を行う運用がされていますが、ケースによっては勾留請求と勾留質問を同日に行うケースもありますので、その場合には検察庁へ事件送致された段階で辞任届付弁護人選任届を検察庁へ提出しておかないと、勾留質問までに間に合わない場合がありますのでご注意ください。
そして、③接見後、勾留質問の始まる前まで(おおよそ午前11時)に、法テラスに要望書を提出してください。
特に、要望書の被疑者名の欄については、読みやすい字で丁寧に、漏れなく記載してください。外国人の被疑者氏名はカタカナでの記載により特定することから、特に中国、韓国国籍で漢字名が記載されている被疑者については、通訳人にも本国での読み方を確認して正確に記載してください(自称等がある場合には、全て記載してください)。
万一、法テラスへの要望書の提出を失念されますと、国選弁護人選任依頼がなされた場合に、当該弁護士が国選弁護人に選任されず、別の弁護士が国選弁護人に選任される場合がありますので、くれぐれもご注意ください。
なお、要望書提出の注意点として、「①援助切替」に限らず、「③別件等」(国選受任後に別の事件で再逮捕された等)でも要望書の提出が必要です。勾留決定は事件単位でなされますので、弁護人選任手続も事件単位でなされることから、同一被疑者の弁護人であっても、別件であれば改めての要望書提出が必要となります。
適切なタイミングに要望書が提出されていないと、別の事件について勾留決定されたときに待機者名簿から別の弁護士が国選弁護人に指名されることになりますので、ご留意ください。
また、④被疑者が資力要件を満たさない(50万円以上有する)場合には、本来は私選で弁護人がつくことになりますが、諸事情により国選弁護人を希望される被疑者もいます。そのような被疑者については、刑事訴訟法上、私選弁護人選任申出をしていないと国選弁護人になれません。
このような被疑者の場合、事前に私選弁護人選任申出が必要となることから、裁判所に当番弁護士としての派遣であったことを伝える必要があります。
東京三会では、辞任届付弁護人選任届を利用した際における資力超過の被疑者の場合に、裁判所に提出する報告書を用意いたしました。そこで、この場合には、私選弁護人選任申出に関する報告書に当番弁護士として依頼された日を記載し、下部のかっこ部分には、国選弁護人として選任されるべき事情を記入していただき、刑事第14部にファックスしていただく必要があります。
この報告書についても、勾留質問の前、午前10時までには刑事第14部へファックスしてください。
これらの点について、全て行ったにもかかわらず国選弁護人に選任されない場合には、刑事第14部までお問合せください。


(私選弁護人選任申出に関する報告書)二弁会員HPからダウンロード可

☆よくある質問について、Q&Aにまとめてみました

Q1 逮捕段階では弁護人に就任しませんが、勾留段階で国選弁護人に就任しようと考えています。これまでと何か変更はありますか。

A 逮捕段階で弁護人に就任しない場合には、これまでと変更はありません。勾留質問日の始業時までに法テラスに要望書を提出し、被疑者自身から選任請求をしてもらうか、それが困難であれば弁護士が被疑者から事前に国選弁護人選任請求書をもらっておき、要望書の写しとともに提出することになります。

Q2 辞任届付弁護人選任届に記載漏れがあった場合にはどうなりますか。

A 弁護人選任届部分についてはこれまでと同様ですので、被疑者から署名、指印、指印証明をもらう必要があります。
辞任届部分に記載漏れがあった場合などは、辞任手続が取れなくなります。その場合、国選弁護人への切替えができないことになってしまうので、全てきちんと記載する必要があります。

Q3 勾留決定された後、決定に対して準抗告をしたところ、認められて被疑者が釈放された場合はどうなりますか。

A 辞任届付弁護人選任届では、勾留決定がなされ、法テラスに裁判所から指名通知依頼がなされた時点で、国選弁護人への切替えがなされたことになり、それ以降、国選弁護人としての活動が可能になります。
そこで、それ以降の弁護活動については、法テラスにおける報酬算定の対象となりますので、その後、準抗告を出して認められた場合には、その活動についても法テラスへの報告の対象となります。釈放により国選弁護人としての活動は終了となりますので、法テラスへ期限内に終了報告を行う必要があります。

Q4 勾留請求が却下された後、検察官からの準抗告で勾留決定となった場合にはどうなりますか。

A 援助制度利用による弁護人選任は形式的には私選弁護人であるので、勾留請求が却下された場合には、辞任届の効力が発生せず、弁護人の地位は失われません。その後、準抗告で勾留決定となった場合には、その時点で辞任届の効力により私選弁護人の地位を失いますので、被疑者が国選弁護人選任を希望すれば、国選弁護人選任への切替えがなされることになります。法テラスへの要望書の提出は、一般のケースと同様、勾留決定前の提出が必要です。

Q5 立川支部管轄の警察に当番で接見に行きます。この場合でも辞任届付弁護人選任届は使えますか。

A 使えません。現時点(令和3年11月8日)では東京地裁本庁のみで利用可能です。
立川支部については、本庁での利用状況を踏まえ、裁判所、検察庁との協議を行っているところですので、これがまとまり次第、運用開始に向けて進めていくことになります。

Q6 勾留質問日は勾留請求の翌日と考えてよいのでしょうか。

A 東京地裁では、勾留質問について、請求の翌日の実施(翌尋方式)を原則としつつ、請求当日の実施(即尋方式)も例外的に行っており、裁判所は、検察官の請求時の求めに沿う形で運用されています。
そのため、検察官の求めによって即尋方式になる例外的な場合には、勾留質問日の午前10時までではなく、裁判所において勾留質問が開始されるまでに要望書を提出する必要があり、法テラスへの要望書が提出されていない場合には、別の弁護士が国選弁護人に選任される場合があります。検察官への事件送致時に、担当検察官から勾留質問実施予定日を確認しておくとよいでしょう。

Q7 辞任届付弁護人選任届について、わからないことがあった場合に、どこに問合せればよいのでしょうか。

A まずは、所属している弁護士会の事務局にお問合せください。
法テラスでは辞任届付弁護人選任届について直接は関わらないため、弁護士から法テラスにお問合せされても、回答できません。
法テラスに問合せされた場合には、平日は、各会の刑弁委員会担当事務局に連絡するように案内されます。また、休日については、弁護士会も業務を行っていないことから、休み明けに改めて弁護士会に問合せするよう案内されますので、それに従って問合せしてください。

Q8 当番弁護で接見したところ、お金があるので私選でお願いしたいとのことから私選受任する場合、辞任届付弁護人選任届の書式を利用しても構わないでしょうか。

A 辞任届付弁護人選任届の辞任届部分、刑事被疑者弁護援助利用という箇所を抹消するなどすれば、辞任届付弁護人選任届の書式を利用すること自体は可能です。ただし、検察庁や裁判所において混乱が生じる可能性もありますので推奨されません。

Q9 辞任届付弁護人選任届の運用が開始された後も、それ以前の弁護人選任届を利用してもよいのでしょうか。

A 裁判所及び検察庁との協議により、当番弁護士派遣から援助制度を利用して弁護人に就任し、国選弁護人に切り替える場合には、辞任届付弁護人選任届のみ利用する方向となりましたので、これまで利用していた弁護人選任届の書式は使用を控えてください。
通常の私選受任する場合には、これまでの書式 を利用していただいて構いません。