出版物・パンフレット等

表示法務の基礎と実践[後編]

染谷 隆明 ●染谷 隆明 Takaaki Someya(63期)
東京弁護士会会員

【略歴】
2010年 弁護士登録
2012年 株式会社カカクコム法務部に勤務(~2014年)
2014年 消費者庁表示対策課に勤務(~2016年)
2018年 池田・染谷法律事務所設立
2021年 参議院地方創生及び消費者問題に関する特別委員会参考人(「取引デジタルプラットフォームを利用する消費者の利益の保護に関する法律案(閣法第53号)」)

【著作等】
『詳説 景品表示法の課徴金制度』(商事法務)
他多数

CONTENTS

後編
4.不実証広告規制
5.景品表示法の適用主体
6.薬機法の広告規制の基礎
7.景品表示法と民事責任の接合

前号掲載
1.はじめに
2.景品表示法の概要と基礎概念の整理
3.打消し表示の実務

4.不実証広告規制

1.不実証広告規制の概要

不実証広告規制は平成15年に導入されました。行政規制の原則からすれば、効能効果に関する表示をした場合、行政庁側がそのような効果はないという立証をしなければなりません。しかし、こうした立証をするためには、鑑定や実験をする必要があり、時間も費用もかかります。また、立証のための時間が経過する過程において、消費者被害が拡大するおそれがあります。そこで創設されたのが不実証広告規制です。
効能効果に関する優良誤認表示の疑いがある場合には、合理的な根拠資料の提出を求めることができ、事業者がその資料を提出しない場合には、措置命令との関係では不当表示とみなし、課徴金納付命令との関係では不当表示と推定するという制度になっています(景表法7条2項、同法8条3項)。
もともとは、効能効果については立証しにくいことから制定された制度ですが、条文上は効能効果に関する表示だけではなく、優良誤認表示全般が対象となるという規定になっています。
しかし、立法の経緯からは、効能効果に関する表示ではない優良誤認表示に対して不実証広告規制が適用できるか、は検討事項です。この点、課徴金法案が審議された国会答弁などでは、対象は効能効果とされていた上に、消費者庁の不実証広告のガイドライン上も基本的には効能効果を念頭に解説されています。しかし、条文上は効能効果に関する表示以外にも適用できることから、最近の傾向は、いわゆる「No.1」表示など、効果効能に関する表示以外にも広がっています。

例えば、プラスワン・マーケティングという会社の事案があります。これは、格安SIMを提供している同社が「シェアNo.1!」という表示をしたものです。シェアNo.1というのは売上げ実績等の話であり、効能効果ではありませんが、不実証広告規制が適用され措置命令が出されました(平成29年4月21日)。
さらに、ププレひまわりという会社の事案においては、同社が供給する商品について「消費者庁公認」という表示をしました。このような表示は消費者庁が認証したかどうかという問題であり、効能効果ではないにもかかわらず、不実証広告規制違反として措置命令が出されたのです(令和3年6月11日)。

2.合理的根拠資料の要件

不実証広告規制においては表示の裏付けとなる合理的根拠資料が求められます。合理的根拠資料であると認められる要件は2つあります。1つ目は、提出資料が客観的に実証された内容であることです。これについては主として、①試験・調査、②専門家の見解という2つの観点があり、どちらかを満たせば、客観性は認められます。
要件の2つ目は、表示された効果や性能と提出資料によって実証された内容が適切に対応していることです。

3.資料が客観的に実証された内容であること

試験・調査に関する方法については、産業界等において一般に認められた方法による必要があるとされています。例えば、抗菌表示をするときには、JIS(日本工業規格)に沿った実験であれば抗菌表示が可能ということです。JISがない場合であっても、ISO(国際標準化機構)のほか、その分野又はその学術界における公定法がある場合には、その公定法による必要があります。新しい分野であって、そのような方法が確立していない場合には、社会通念、経験則上妥当と認められる方法で行われる必要があります。例えば、人が経口する食品について何らかの効能効果を訴えたいときは、試験管の実験では当然足りない上、動物実験でも足りず、通常、人体に対する実験をしなければなりません。かつ、統計上有意にする必要があることから検体の数が重要です。また、バイアスや恣意が働かないように、実験の検体についても前提条件を整理する必要がある上、再現性も必要です。

なお、お客様からの感謝の声というものがありますが、それだけでは合理的な根拠を示す資料にはあたりません。なぜならば、感謝の声といった感想を提出するのは、実際に効果があると思っている層であり、そもそも前提条件にバイアスが入っているからです。感謝の声を提出しない層に対しても効果があったかどうかについて確認できない限り、感謝の声というのは根拠になりません。

専門家の見解は、当該専門分野において一般的に認められているものについては、根拠になるといわれています。しかし、新しい分野については、確立された見解がないことが通常なので、実験や調査によらざるを得ません。専門的知見については、科学的な知見や医学的な知見等も重要になってきますし、大学教授へのヒアリング等も必要な場合があり、合理的根拠資料の該当性の判断については誤りやすく、弁護過護の危険もあるので慎重に判断する必要があります。

4.表示と実証された内容が適切に対応していること

表示された効果や性能と提出資料によって実証された内容が適切に対応しているかという点についてですが、これは、根拠の範囲内で表示する必要があるということです。例えば、実証されたものが密閉空間で効果がある空間除菌であれば、「密閉空間で効果がある」ということを明確に表示しなければなりません。

5.エビデンスピラミッドの概要

合理的な根拠資料を準備する場合は、医療の分野で使われている図のようなエビデンスピラミッドが参考になります。

この図では上にいけばいくほどエビデンスレベルが高いということになります。これは、あくまでも一般論であり絶対的な基準ではありませんが、最終的にどのような表示をするかによって、どこまでエビデンスを得るのかという目安になると思います。

例えば、動物向けに何らかの商品を出して効能効果をうたうのであれば、エビデンスピラミッドの下から2番目にある動物実験をすればよいということです。ピラミッドの一番下の「In vitro(インビトロ)」というのは試験管試験であり、エビデンスレベルが最も低いとされています。
大抵の商品は、人に対して効果があるとうたいたいわけですが、試験管の中で効果があったとしても人に効果があるわけではないので、これでは根拠として足りないと判断されます。実際、不実証広告規制で処分されている事例の多くは、インビトロの実験のエビデンスしか持っていないとか、成分についてのエビデンスはあり有名な科学雑誌には載っているが、実際の商品についてはエビデンスがないというようなケースが多いです。

ピラミッドの下から2段目にあるのが「動物実験」で、その上は「専門家の意見」です。その上の「症例報告」とは、病気関係であれば、病気の具体的なケースの報告です。その上の「症例集積」というのは、症例を集積し、形成された患者群に関する特徴のことを指します。

上から3段目の「コホート研究」とその下の「症例対照研究」というのは似た概念ですが、集団が定義できるかどうかという違いがあります。集団が定義できない場合が症例対照研究です。例えば、A店舗とB店舗の飲食店でそれぞれ新型コロナウイルス感染者が確認されたが、店舗間でどのような違いがあって、その結果、新型コロナウイルスに感染した人が何パーセントの割合だったかということを確認するものが、症例対照研究です。コホート研究というのは、集団属性が定義付けられる場合です。具体的には、新型コロナウイルス感染者と接触して飲み会をした群と、一方で飲み会参加者全員感染していない群、また感染者が3人いる群などといった集団の属性が定義付けられる場合において、その曝露群と非曝露群のオッズの比較をするというものです。

「無作為化比較試験」とは、集団を定義付けるのではなく、無作為で抽出して実験対象の商品がどういう効果があるのかということを確認するというものです。ピラミッドの最上位にある「メタ解析、研究レビュー」は、いわゆるシステマティックレビューといわれているものですが、行った実験に問題がないかについての査読論文や、研究方法をレビューするというものです。

以上のように合理的な根拠づくりは大変ですが、基本的にはPICO(Patient,Intervention,Comparison,Outcome)の観点を意識すると良いと思います。つまり、どのような患者にどのような評価又は治療を行えば、何と比較してどのような結果が出るのかということを実験で明らかにしなければならないというのがポイントです。

6.実際の措置命令事案

下の図は宮本製作所という会社の事案です。布袋の中にマグネシウムが入っている「洗たくマグちゃん」という商品を含む3商品について、これらの商品を使用して洗濯すると、あたかも洗濯用洗剤を使用した場合と同程度の洗浄効果や、部屋干し臭の発生を防止する効果、また、99パーセント以上除菌する効果があるかのような表示をしていました。


*消費者庁HPより

実際、マグネシウムを水に入れると溶け出すことから、それによって水が強いアルカリ性になれば除菌効果もありますし、洗剤を使ったかのような効果があるのは間違いありません。しかし、報道等によれば、消費者は通常「洗たくマグちゃん」を1個程度しか使用しないにもかかわらず、同社が行った実験では、洗濯機の中に何個も入れることによってマグネシウムの量を増やし、強アルカリ水の状態にして洗ったとのことです。したがって、消費者の使用環境と異なる環境での実験であり根拠にならないとして処分された事案です。

5.景品表示法の適用主体

1.他者に原因のある不当表示

景表法5条の構造について、供給主体概念及び表示主体概念という2つの議論があります。前者は、景表法は商品役務の供給主体にしか適用されないということです。後者は、景表法は表示行為規制ですから、表示行為をしたのが誰かという問題です。

2.供給主体概念に関する具体例

次の図はイオンライフ事件に関するものです。イオンライフは会員に不幸があった場合、地元の葬儀屋をあっ旋するというサービスを提供していました。当該サービスにおいて、会員との間の契約上の契約主体は葬儀サービスを提供する特約店であり、イオンライフは葬儀サービスの契約主体ではありませんでした。そして、そのような契約関係を前提にした、「イオンのお葬式」というプランについて、イオンライフから一般消費者に対する広告内容に不当表示が認められたという事案です。

本件について、イオンライフは葬儀サービスの契約主体ではありませんが、サービスの供給主体であると認定されました。その理由は、まずは、「イオンのお葬式」におけるサービスの根幹にあたる内容や価格について、特約店ではなくイオンライフが決めていたことです。加えて、注文の受付、特約店の支援、苦情の管理、顧客からの問合せ対応、及びアフターサービスをイオンライフが行っていたものであり、実質的にイオンライフがサービスを供給しているに等しいと認定されました。
この事例は、デジタルプラットフォーム(DPF)が供給主体であるか検討するにあたって参考になります。すなわち、インターネットモールなどのデジタルプラットフォームも、出店者が物やサービスを販売するために出店サービスを提供し、どうやったら売れるかというコンサルや広告方法を伝授します。さらに、商品やサービスが売れたらサンキューメールを出したり、エスクローサービスをして決済方法に入ったり、物流も担当したり、かなり通信販売の商流に入っている状況で、どのような事情があればデジタルプラットフォームが供給主体にあたるのかについては今後の検討課題といえます。

3.表示主体概念に関する具体例

様々な異論はあるものの、この分野で有名なベイクルーズ判決(東京高裁平成20年5月23日)で示された3類型のいずれかに該当すれば、表示主体に該当するとされています。表示主体にあたるとされる第1類型は「自ら若しくは他の者と共同して積極的に表示の内容を決定した事業者」、第2類型は「他の者の表示内容に関する説明に基づきその内容を定めた事業者」、第3類型は「他の事業者に表示内容の決定を委ねた事業者」です。今日では、この第3類型の解釈が問題になっています。

具体的には、アフィリエイターの広告はその決定を第三者に委ねたといえるのか、インスタグラマーの広告はインスタグラマーが表示している事項について広告主が委ねたといえるのか、ステルスマーケティングが行われた場合、表示内容を委ねたといえるのか等が問題になっています。
アフィリエイトについては社会問題となっており、消費者庁がアフィリエイト広告の適正化について議論するべく、令和3年5月にアフィリエイト広告等検討会というものを立ち上げて、景表法をどう適用するのかについて検討したところです。
アフィリエイト広告については、前編で説明したT.Sコーポレーション事件がありますが、最近の事案としては、アクガレージ社及びアシスト社の事件があります。


*消費者庁HPより

これは、広告主である両社が、アフィリエイトプログラムを利用しているInstagramやアフィリエイトサイトにおいて、あたかも本件商品を摂取することで、豊胸効果が得られるかのような表示をしたということで処分された事案です。ニュースでは、ステルスマーケティングを正面から捉えた初めての事案というようなことが報じられていましたが、まさに第三者に表示を委ねた場合も景表法の適用対象となることを示した事案です。
本来、広告なのに広告であると認識させないというのがステルスマーケティングです。一般消費者が、広告だと認識していれば、誇大広告が含まれているかもしれないなどと警戒して表示を評価できます。しかし、広告ではないとの認識で表示を読んでしまうと、中立な第三者が言っているかのように捉えるため、ステルスマーケティングは消費者に対して与える影響が大きいといわれています。

欧米の動向を見ると、ステルスマーケティングに関し、利害関係や金銭授受の有無などを開示する必要があるとされています。日弁連も平成29年に「ステルスマーケティングの規制に関する意見書」をとりまとめて消費者庁長官へ提出しています。同意見書の中では、景表法5条3号に基づく指定告示にステルスマーケティング規制を入れて、利害関係を開示すべきだという意見を出しています。しかし、消費者庁は景表法5条3号で対応せず、優良誤認表示の適用範囲を広げる対応をしています。
具体的には、機能性表示食品の事後チェック指針において「肯定するよう特に依頼して行われた利害関係者の推奨であるにもかかわらず、客観的な立場からの推奨であるかのように表示している場合」には不当表示のおそれがあると示しています。実際にそのような表示に基づいて一般消費者が商品選択をしているのかという意味において、優良誤認表示に関する判断ができるのかという疑問がありますが、当該指針では「著しく」の認定をやや拡大解釈することによって、ステルスマーケティングに対応しようとしているわけです。なお、今回の研修後、消費者庁が設置した景品表示法検討会において、ステルスマーケティングを規制することが検討されています。

6.薬機法の広告規制の基礎

1.薬機法の概要

薬機法は、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器及び再生医療等製品の品質、有効性、安全性を確保するための法律です。そのような目的のために販売製造業の許可、薬局の許可、販売方法についての規制等を規定しており、その中の一環で広告規制をしています。
薬機法は、医薬品に関する規定を中心に構成されているため、基本的には、まず医薬品について学べば、そのほかの分野についての理解も進みます。医薬品とは、人又は動物の疾病の診断、治療又は予防に使用されることが目的とされているものです(薬機法2条1項)。医薬品の具体例である医療用医薬品とは処方箋が必要な薬品であり、一般用医薬品とは市販の医薬品のことです。
化粧品とは、人の身体を清潔にしたり、美化したり、容貌を変えたりするために身体に塗布するものであって、人体に対する作用が緩和なものです(同法2条3項)。例えば、リンス、シャンプー、化粧水等がこれに該当します。医薬部外品とは、人への改善作用があるものの、作用が緩和なものであり、比喩的に表現すると医薬品と化粧品の中間にあたるものです(同法2条2項)。具体例には、薬用シャンプー、薬用化粧品、除毛剤、染毛剤などがあります。医療機器とは、人又は動物の疾病の診断や予防対策のために使われる機械器具等であり、具体例には補聴器、血圧計などがあります(同法2条4項)。

2.薬機法の広告規制

薬機法の主な広告規制には誇大広告規制と未承認の医薬品の広告規制があります(薬機法66条、同法68条)。誇大広告規制については、医薬品等適正広告基準というものが定められており、基本的にはこれに従って広告をレビューするということになります。
未承認の医薬品については、たとえ真実として効果があったとしても、厚労大臣の承認を得ていない以上は医薬品として広告してはならないという規制です(同法68条)。何が医薬品なのかについては、「無承認無許可医薬品の指導取締りについて」(昭和46年6月1日厚生省薬務局長通知:通称46年通知)に記載されているように、医薬品としての目的を有しているかどうか、又は通常人が医薬品と認識するかどうかで決まります。通常人が医薬品と判断するかどうかのファクターとしては、成分本質、効能効果の表示などがポイントになります。

例えば、成分本質については、厚労省のホームページ上に「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リスト」というものがあり、それに該当するものは医薬品です。効能効果については、人の疾病の対策、予防、又は診断になるようなものは、薬機法の領域になります。また、身体的機能の増強につながるような表示、例えば「集中力向上」、「免疫力向上」、「疲労回復」といったものは全て薬機法の領域になるため、そういった表示をすると、未承認の医薬品に該当してしまいます。薬機法というのは人の生命、身体を守るための法律であるため、景表法の供給主体概念のようなものはなく、「何人も」規制の対象になっています(同法66条、68条)。

薬機法の広告規制については、エンフォースメントが強化されており、措置命令と課徴金制度が導入されています。措置命令制度が適用されるのは誇大広告規制又は未承認医薬品等の広告規制に違反した場合です(同法72条の5)。
一方で、課徴金納付命令制度が適用されるのは誇大広告規制に違反した場合のみとなっています(同法75条の5の2)。

7.景品表示法と民事責任の接合

1.消費者契約法の勧誘概念

消費者契約法で不実の告知等の不当勧誘があった場合については、取消しできるとされています(消費者契約法4条1項1号)。ただ、入り口の要件として勧誘概念というものがあり、広告が消費者契約法上の「勧誘」に該当するのかということが同法が立法されたころから議論されてきました。
従前の消費者庁の立場は、特定の者に向けた勧誘方法は消費者契約法上の「勧誘」に含まれるが、広告のような不特定多数の者に対する働きかけは「勧誘」に含まれないというものでした。しかし、勧誘概念が問題となったサン・クロレラ事件の最高裁判決は、不特定多数の消費者に向けられたものであったとしても、そのことから直ちに働きかけが「『勧誘』に当たらないということはできない」として、「勧誘」に該当する余地があることを認めました(最高裁平成29年1月24日)。

最近、広告概念と勧誘概念は相対化しており、例えば、特商法の令和3年の改正法において、通信販売に取消権が新設されました(特商法15条の4第1項)。従来、通信販売について広告規制はありましたが、訪問販売や電話勧誘のように個別に働きかけるものではないため、クーリングオフ制度は適用されていませんでした。一方で、通信販売で不特定多数の消費者に対する広告であったとしても、商品の購入決定に働きかけることがあり得ることを正面から認め、今回の改正で取消権が新設されました。したがって、これは広告概念と勧誘概念が相対化した例といえます。

景表法と不実告知との関係については、ある商品について景表法違反が認定されて措置命令が出された場合、その後、その商品を購入した消費者から、「景表法違反だから返金せよ」というような形で返金要請がされることがあります。
例えば、葛の花イソフラボン事件という、機能性表示食品の販売会社である計16社が景表法違反で処分された事案があります。これに関して、関西のKC'sという消費者団体が返金要請を行ったことを受けて、16社中15社が返金をしました(1社は自主的に返金)。KC'sは消費者裁判手続特例法の特定適格消費者団体なので「もし、返金に応じなければ、集合訴訟を提起する」といった特例法の影響の下の交渉をしたということだと思います。

2.景表法と不実の告知

更に進んで、景表法違反に関連して、不実の告知を認めたという事例があります。それは燃費の不正表示について三菱自動車に対して景表法違反に基づく措置命令が出された事案です(平成29年1月27日)。その後に、三菱自動車の車を買った人が、販売店に対しては不実の告知があったとして取消し及び不当利得返還請求を、また、メーカーである三菱自動車に対しては不法行為責任を追及し提訴しました。
この件について、大阪地裁が消費者契約法4条1項1号の「勧誘」について参考となる判断をしました(大阪地裁令和3年1月29日)。大阪地裁は、三菱自動車が作成したカタログについて販売店が消費者である原告らに交付したと認定した上で、販売店によるカタログの交付のみでも「『勧誘』に当たると認められる」としました。カタログに基づいて説明しているのであれば、それは「勧誘」で間違いありませんが、販売店が説明をすることなくカタログを交付しただけで「『勧誘』に当たる」としたものであり、これは踏み込んだ判断といえます。

景表法違反は、このように消費者契約法上の不実の告知をはじめ民事責任に接合することがあり得るわけです。この先、消費者裁判手続特例法がもっと使いやすくなった場合には、景表法違反事案の発生後に、消費者裁判手続特例法に基づいた集合訴訟が提起されるという流れになるのではと考えられます。

質疑応答

質問

課徴金ガイドラインでは、計算の基礎となる売上額に消費税が含まれていることになっていますが、妥当性についてどのようにお考えでしょうか。

回答

基本的に、課徴金は不当表示の対象となる商品の売上げに対して3%取るというものです。売上げの算定は政令で定める方法と規定されており、政令では、引渡基準といって、原則として商品を引き渡したときに企業会計上その売上げが計上され、その売上げをもとに売上額を算定するということになっています。
消費税も含めて売上げを立てるというのが企業会計なので、売上額には消費税が含まれますし、課徴金制度の先例である独占禁止法がもともと消費税を含むという解釈を出していて、審決又は裁判例でもそのような扱いが許容されるという考え方が採用されています。